野菜ぐったり… 酷な残暑、秋冬野菜に影響も

葉が変色したキャベツの苗(群馬県邑楽町で)

記録的な猛暑の影響が、産地に広がっている。秋冬野菜の産地では、定植に踏み出せない事態が表面化。高温に乾燥も重なり、苗を植えても成長が見通せないためだ。収穫が進む夏秋野菜では、着花不良による収量減といった被害が広がる。病害虫の多発を懸念する声もある。

秋冬野菜は定植遅れも

「本来ならハクサイの定植を始める時期だが、今年はなかなか踏み切れない」。群馬県邑楽町の農業法人・Vegetaの松島章倫代表は言う。ハクサイは15ヘクタールで栽培し、例年なら定植は8月下旬に始める。だが、今年は高温の上に雨が少なく、枯死しかねないと懸念。5ヘクタールのキャベツでは定植を始めたが、「高温が続けば枯れる可能性もある」と、天候をにらみながらの作業が続く。

管内のJA邑楽館林は、これから定植が本格化するキャベツやハクサイで「定植以降の作業がずれ、収穫が遅れる可能性もある」(園芸指導課)と指摘。対策として「定植後は地道に水をやり続けるしかない」と話す。

茨城県西部のJA茨城むつみ管内でも、キャベツ、レタスの定植が遅れ気味だ。一部農家は定植できずに苗が老化し、種をまき直して約1カ月遅れになるケースも。定植済みの農家も、散水などの対応に追われる。

同県東部のJAなめがたしおさい管内でも、ニンジンやダイコンは種まきができない状況が続く。県総合農業センターは「高温でネギのアザミウマ類など害虫の発生も一部でみられる」という。

夏秋産地では収量減懸念

異例の高温が続く北海道でも被害が出ている。中央部にあるJAびえいでは、トマトが着花不良で結実せず、収量や売り上げは1、2割落ちる見込みという。結実しても軟化や日焼けが多く、廃棄やC品の発生が増えている。「実が大きくならないうちに着色が進み、小玉の割合も高い」(同JA)。

札幌市と旭川市の中間にあるJAピンネでは、ブロッコリーが影響を受けている。JAは「腐ってしまったり収穫できても商品にならなかったりして収量はかなり減っている」(青果課)と話す。

東北でも影響が広がる。福島県JAふくしま未来では、露地のキュウリで曲がりや尻太りといった被害が出た。山形県JA鶴岡では、エダマメ(だだちゃ豆)で高温による枯れがあったり、生育前倒しで収穫しきれなかったりして、1日の集荷量が前年の半分の日も出ているという。

富山県では大豆の収量減が懸念される。高温で花が落ちた影響で、平年よりさやの数が少ないという。県は「例年だと高温対策として圃場に一時的に水を入れるが、今年は水不足でそれも難しい」とする。高温・乾燥下で発生拡大が懸念されるハダニ類の被害で葉が黄色くなる圃場もあり、子実の肥大に影響する可能性もある。

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