長崎県の離島留学制度 3日に改善策取りまとめ 3月に壱岐高生死亡、持続可能な制度へ

離島留学制度アンケートの主な回答

 今年3月、長崎県の離島留学制度を利用し県立壱岐高に在籍していた男子生徒=当時17歳=が行方不明となり死亡した。制度開始から20年が経過し、見直す時期にあるとして県教委は「これからの離島留学検討委員会」(委員長・本田道明県立大学長補佐)を設置。各離島の留学生に安心して生活し学んでもらえるよう協議してきた。留学生、保護者、里親、教職員から集めた意見を踏まえ、3日の最終会合で改善策を取りまとめる。
 亡くなった生徒は茨城県出身。中学2年時に同市の小中学生向け「いきっこ留学制度」で移住。里親宅に下宿し、県の制度で壱岐高に進学した。
 県教委は、留学生の命が失われた事実を重く受け止めるとともに、当初3校だった実施高校が5校に増え、さまざまな事情を抱えた生徒が入学する実態に着目。持続可能な制度にするため、有識者や対馬、壱岐、五島の3市教委などでつくる検討委を設置した。各市にも検討部会を置き、課題を検証してきた。
 県教委によると、2018年から3年間で5校に入学した留学生は269人。その23%の62人が「学校生活に適応できない」などの理由で転校または退学した。一方、21%の58人はもともと中学3年間で欠席が50日を超えていたが、うち25人が高校を卒業することができ、「制度に救われた子どもたちもいる」(検討委員)という。
 検討委では、入学希望者に比べ里親が少ない課題も浮上。里親をフォローする体制や、保護者と一緒に移住する形を求める意見も挙がった。
 アンケートは学校内外の満足度や要望などを尋ねた。留学生は「楽しくて学校に行けるようになった」「成長を感じる」といった評価の一方、寮や下宿先の食事など暮らしの改善、相談しやすい環境などの要望があった。保護者からは里親の支援や研修、里親からは関係者との情報共有を求める声が寄せられた。教職員は生徒対応や寮での生活指導に人手不足を感じていた。

◎離島留学制度
 2003年度に対馬、壱岐、五島の県立3高校で始まり、その後、五島南、奈留の県立2高校が加わった。県内外から留学生を募集。自然豊かな環境の中で国際文化や語学、歴史学、スポーツ、地域体験など特色あるコースで学ぶ。不登校などを経験した生徒の「生きる力」を育むコースもある。23年度までに累計1129人(うち679人が島外)が入学、今年3月までに同749人が卒業した。

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