ホンダ、初日プラクティスで最下位に並ぶ大苦戦。中上「シーズンを通して最も乗れていない」/第11戦カタルーニャGP

 MotoGP第11戦カタルーニャGPの初日を終え、予選Q1、Q2の振り分けを決める唯一の重要なセッション、プラクティスで、ホンダ全ライダーは最下位から数えて4番目までのポジションを占める散々な結果だった。苦しい戦いが続く2023年シーズンにあっても、カタルーニャGPはとりわけ厳しいグランプリとなっている。

 ホンダ勢は午前中のフリープラクティス1からまったく奮わなかった。ジョアン・ミル(レプソル・ホンダ・チーム)が22人中17番手。中上貴晶(LCRホンダ・イデミツ)が20番手。マルク・マルケス(レプソル・ホンダ・チーム)が21番手。そして、怪我の療養中であるアレックス・リンス(LCRホンダ・カストロール)の代役を務めるイケル・レクオーナは22番手。

 午後のプラクティスに至っては、マルケスが19番手、中上が20番手、レクオーナが21番手、ミルが22番手と、最下位ポジションを“独占”している。

 ホンダはイギリスGPから中上に、前戦オーストリアGPからファクトリーライダーふたりにも、新しい空力デバイスを投入しており、今大会も3人のライダーは新しいものを使用している。マルケスだけはフリープラクティス1でこれまで使用していた空力デバイスをも用意し、乗り換えを行っていたが、午後のプラクティスでは新しいほうに集中していた。

 新空力デバイスは、2023年のパッケージの大きな問題であるコーナーでの立ち上がりでのウィリーを抑えるためにダウンフォースを増やし、トルクをうまく使って加速につなげることを主なねらいとしている。ただ、カタルーニャGPでホンダ勢が軒並み苦戦にあえいだのは、特にロングコーナーでのリヤグリップ不足だったという。

「サーキットの路面グリップよりもレイアウトだね」と、マルケスは初日を終えてグリップについて語っている。

「(このサーキットの)レイアウトはほとんどがロングコーナーみたいなものだからだ。僕たちは、ロングコーナーでロスしている。ストップ&ゴーのように走ることができれば、素早くバイクを起こせれば、まあまあいけるんだ。問題は少しはマネージメントできる」

「でも、セクター2みたいなロングコーナーではたった3つのコーナーで、僕たちは0.6秒もロスしているんだ。そこはライダーにとって(走るのが)難しいわけではないんだ。でも、たった3つのコーナーで0.6秒もロスしているんだよ。ただ、そこで苦しむことは予想していたことで、そして実際、苦しんでいるというわけなんだ。僕のライディングスタイルにとってベストなサーキットではないということを差し引いてもね」

 中上も同様で、「午前中、最初にコースインして数周したときはすごくショックでした」と言う。

「3コーナーや最終の二つのコーナーのような高速コーナーで、グリップがあまりにも低かったんです。とにかく、グリップがないんですよ。オーストリアでは大きな問題はトラクションエリアでした。スロットルを開けるといつもスピンをしてしまう、というね。だから立ち上がりでタイムを稼げなかったんです」

「でもここでは、路面なのか暑さなのかわかりませんが、ブレーキング、コーナー中間、立ち上がり……どこでもグリップがないんです。僕はバイクの上にとどまっていただけ。すごく遅いラップタイムでさえも、キープするのが大変でした。順位が最下位のほうだとわかっていましたが、どうやってラップタイムをよくしたらいいのか、見当もつかないんです。ミディアムタイヤでも、ソフトタイヤでも、グリップがないんです」

「簡単に言うと、ここがシーズンを通していちばん乗れていないというか。スピードが上げられないんです。頑張ってもタイムが出ないし。頑張れないというのもあるんですが……。マルクもジョアンも僕も、新しいエアロを使って同じ問題を抱えていますが、3人とも全く違うバイクなんです。(バイクのバランスが)長かったり短かったり、高かったり低かったり。でも、全部(コメントが)同じなんです。ちょっと……かなり、厳しいですね」

 マルケスはこの現状における自身の感情について問われたとき、「ただガレージに座り、結果を見ない。コースに出ていき、ピットに入り、ラップ、マップをについて理解しようとする。ポジションはチェックしない。それだけが今の方法だ。大きなフラストレーションを持たないためにね」と答えている。

 マルケスがフリープラクティス1で空力デバイスを比較していたことといい、新エアロダイナミクスにとって最適なバイクバランスを模索すべく、3人のライダーがそれぞれに異なるバランスで走っていることといい、もはや今のホンダが争っているのはライバルではなく“現状”のホンダという感さえあるし、実際のところ、そうなのだろう。マルケスが「結果は見ない」と言っているのは、そういうことだ。

 マルケスは「明日も同じように取り組むけど、きっとあまり変わらないだろう」と言った。ホンダはとりわけ厳しいグランプリとなっているカタルーニャGPを、どのような形で終えることができるか。

マルケスはフリープラクティス1でこれまで使用していた空力デバイスも走らせたが、午後には新しいものだけで走行した
「結果は見ない」と言うマルケス。20番手以下に沈むマルケスを、誰が想像できただろう
中上はカタルーニャGP初日後、「想像以上に厳しい」と語った
3人のホンダライダーが新エアロを使い、それぞれ違うバランスで走ったが、問題点は共通していたという

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