神戸でほぼ絶滅のローカルチーム分け「うらおもて」、遠く福岡で健在?!

神戸ではほぼ絶滅したとみられる「うらおもて」。手のひらの向きでチームを分ける=神戸市中央区東川崎町1

 神戸ローカルのチーム分け方法「うらおもて」がほぼ絶滅してしまった-。そんな記事を書いたのは2019年のことだ。グーとパーではなく、広げた手のひらの向きで二手に分かれるやり方で、兵庫県では神戸を中心に伝承されてきたが、近年は激減。すっかり死に水を取ったつもりでいたところに、福岡県のテレビ局から記者(44)に、うらおもてを取り上げる番組への出演依頼が寄せられた。福岡では今も健在?! 出演ついでにそちらの事情を詳しく教えてもらおうじゃないの。(黒川裕生)

 まずはうらおもてのやり方(神戸バージョン)を復習しましょう。

 ①遊びの参加者全員で輪になって片手を突き出す。

 ②「うーらら、おーもーて」と独特の節回しで言いながら、手のひらと手の甲が交互に上に向くようヒラヒラ動かす。

 ③最後の「て」で動きを止め、手の向きが同じ人同士がチームになる。

 ④人数が均等になるまでこれを繰り返す。

 小6の時に県外(グーとパー文化圏)から神戸に越してきた私は、そのあまりにも奇怪な動きと節回しに腰を抜かした。記事にしたのは2007年と19年で、計3回。特に07年の最初の記事は反響が大きく、九州や東北出身の読者から「自分もうらおもてだった」との声が数多く寄せられた。

 しかし19年の取材で、少なくとも神戸では絶滅したらしい事実が明らかに。「さよなら、うらおもて。今までありがとう…」と記事を締めてから4年、予想外の展開である。

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 私がリモート出演したのはRKB毎日放送の「まじもん!」というバラエティ番組(7月26日放送分)。天才頭脳集団「QuizKnock(クイズノック)」に、福岡で活躍するお笑いタレントの黒瀬純さん(パンクブーブー)らが挑む企画で、福岡に関する問題しか出題されない「福岡えこひいきクイズ」のネタの一つとして、うらおもてが取り上げられたのだ。

 過去の記事をネットで見つけ、連絡をくれた後藤弘之ディレクター(35)にインタビューされる形で、出演部分の収録が行われたのは5月下旬。後日、放送内容を見て驚いたのは神戸との「かけ声」の違いだ。

 街頭インタビューでは、福岡県民がうらおもてをする際に「う~らかおもてで文句なし、あらどっこいしょ」「う~らかお~もてすてすてす」「う~らかおも天ぷらコッココケコッコ」など、なかなかクセの強い言い方をしていることが紹介されていた。

 嬉々として語る福岡の人たちの姿に、てっきり福岡では今もうらおもてが現役なのかと思ったが、後藤ディレクターいわく「残念ながら福岡でも知らない世代が増えています」。事情は神戸と大差ないらしい。

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 テレビ出演のことを最後にもう少し書いておこう。スタジオがひとしきり盛り上がった後、「うらおもてに魅せられ16年」と大仰なテロップを引っ提げて「有識者」として登場した記者。うらおもては各地の港町を中心に伝承されてきたらしいことや、貿易などの人の行き来を通じて海外から伝わり、形を変えて広まった可能性があることなど、かつて仕入れた豆知識を披露している部分が、1分ほどにまとめられていた。

 家族や友人には「16年も魅せられていたとは初耳だ」などと突っ込まれつつ…、福岡の現状を知り、私はさみしい。うらおもてをやっている子どもは、この国にはもういないのだろうか?

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