開発者も苦戦中、突如現れた芸人初の「AI千原せいじ」って?

今なにかと話題なチャットボット「ChatGPT」。AI(人工知能)にデータを読み込ませることで学習をさせ、文章の要約や会話、ちょっとした台本や小話を作成することも可能という最先端のツールだ。

「AI千原せいじ」試してみたら…

8月14日、そんなChatGPTを活用した新たなサービスが誕生した。その名も「AI千原せいじ」。お笑い芸人・千原せいじの言動を再現したトークサービスということで、リリースされると「千原せいじをAIにしよう! というナゾ発想」「本人ではありえないほどやさしいし、長文なの面白い」など、SNSを中心にさまざまなリアクションを引き起こしている。

ん? なんだかやさしいぞ、「AIせいじ」

ChatGPTを使い、過去の発言を中心にせいじの言動や表現を学習した「AI千原せいじ」。つまり、本物のせいじとラインで会話する気分に味わえるツールなのだ。ラインで「友だち追加」をすれば誰でもトークできるということで、筆者もさっそく試してみた。

せいじといえば、ロケ番組で初対面の人ともあっという間に打ち解ける、鬼のようなコミュニケーション能力が印象的。そこで、まずは「友だち作りのコツ」をAIに聞いてみると、なかなかの熱量でアドバイスが返ってきた。

「友だち作りのコツやなぁ。まずは自分を素直に出すことやな。自分の興味や考えを押し殺さずに、自然体で接することが大事やで。あとは笑顔やユーモアを忘れずに、相手との共通点を見つけるのもポイントやな。でもやっぱり一番大事なのは、相手を尊重して思いやりのある態度を持つことやな。それで自然と友だちができるんやで!」

とてもためになるアドバイスなものの、「でもやっぱり一番大事なのは、相手を尊重して思いやりのある態度を持つことやな」と、あまりにやさしい回答だ。豪快(がさつ?)なイメージがあるせいじさんとは、なんだか雰囲気が異なるような・・・。

まだまだ未知数な部分が多いAIチャットボット。生みの親である企業「AI-zen」の代表取締役・茶圓将裕さんに話を訊いてみた。

「千原せいじらしさを出すのに苦戦中で…」

──「AI千原せいじ」は、日本の芸能界でSNSを使った初のAIチャットとのこと。そもそも、せいじさんをAI化しようと考えたのはなぜなのでしょう?

著名人とファンとの関わり方は、年々変化しています。テレビが無い時代は雑誌、テレビができるとテレビ、スマホが普及するとSNSという風に。著名人がその時代に応じた最適な手段・媒体でファンと関わるとするなら、今後はAIを通じてファンと交流すると確信し、「著名人×AI事業」をスタートしました。

著名人のAIを作るにあたって、まずせいじさんにお願いした理由は、やはり面白くてチャットボットでもカラーを出せそうだと思ったからです。せいじさんにも、先進的な取り組みということで賛同いただき、開発がはじまりました。

──なるほど、たしかに個性が出そうですよね。核となるAI学習の部分は、どのようにおこなっているのでしょうか。

簡単に説明すると、せいじさんに関連する動画を文字起こしし、口調や発言を抽出しています。特徴的なところを抜き出すことができるので、AIに覚えさせます。関西弁の「濃さ」などは、ご本人に確認してもらいつつ調整し、2カ月ほどかけて完成しました。

──SNSでは「せいじはこんなやさしくない(笑)」などという反応もあるようです。せいじさんの回答はフィードバックを受けて改善されていくとのことですが、具体的にどう改善されていくのでしょう?

ラインを追加すると、問い合わせフォームが表示されるようになっています。そのフォームから、意見や指摘が届けば確認し、修正していくようにしています。

たしかに、テスト版のときはフォームから「せいじさんはこんなこと言わへん!」「そんな口調で話さない」と指摘されることもあり、その都度修正していました。あとは「出演情報が正しくない」といったご指摘もありましたね。せいじさんは多方面で活躍されているので、その情報をもれなくAIに学習させるのは難しいポイントのひとつでした。

『相席食堂』で奈良公園の鹿との戦いが話題となっていたせいじさん。編集部員が鹿について聞いてみると…

──そういえば、せいじさんが活躍していた番組に関するネタを送ってみたところ、反応が無かったという声もありました。今のところ、小ネタを入れるのは難しいのでしょうか?

それは難しいところで、番組での発言や行動などは、元になるデータが無いと再現が難しいんですよ。ウェブ上で公開されている情報や記事を利用することは問題ありませんが、せいじさんがよく出演している、たとえば『相席食堂』(ABCテレビ)など、動画が元ネタの場合は権利的にも難しくなってしまいます。

──ご本人を再現しようとすれば、そんな難しさもあるんですね。では今回の「AI千原せいじ」の制作を通し、茶圓さんが感じた「せいじさんらしさ」はありましたか?

それが、僕もまだわからないんです。「千原せいじさんらしさとは何か」を考え続けています・・・(笑)

──奥が深い世界なんですね・・・。いろいろと可能性がありそうなAIチャットですが、今後の展望を教えてください。

今回、いろいろなメディアやテレビに取り上げていただき、改めてこの分野への注目度の高さを感じました。引き続き「著名人×AI事業」を進めていきたいです。これからはせいじさんレベルの精度を上げることはもちろん、ほかの有名人のチャットを制作するなどを構想中です!

「AI千原せいじ」は、無料プランの場合1日3回までやり取りができる(月額500円のプランでは無制限)。AIの回答はユーザーの評価により精度をあげていくので、「我こそは千原せいじファンだ」と自信がある方は、ぜひ挑戦してみてほしい。

取材・文/つちだ四郎

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