好きだから努力できると思ったのに…「奥手の男性」との交際が短命に終わった女性の本音

好きになった男性と晴れて交際まで進み、幸せいっぱいの関係が始まったと思っていたある女性。

「好きなのだからどんなことでも努力できる」と思っていたけれど、いざ恋人関係の状態になったとき、お付き合いには自分だけではどうにもならない場面があると気が付きます。

深い傷を負う前に潔く別れを選んだ女性はどんな経験をしたのか、リアルをお伝えします。

相手との間に生じた、恋愛への意識の差

奥手な男性を好きになり…

32歳のAさんは、ジムで知り合った3つ年上の男性に片思いをしていました。

「奥手というか女性慣れしていない感じで、向こうから話しかけてくることはなくいつも私のほうから挨拶などをしていたのですが、嫌がらないし優しく言葉を返してくれるし、いい人だなと思っていました。

私のほうからLINEのIDの交換をお願いしたらOKしてくれて、ジムで会わない日も話すことができるようになってからは、お互いのことをいろいろ打ち明けあって楽しかったですね。

少しずつ友達感覚みたいになり、ジムで会ったら一緒に行動する時間が増えて、このまま付き合えたらいいなと思っていました」

こう出会いの頃を振り返るAさんですが、男性から告白され始まった交際はわずか1ヶ月で終わります。

「『好きだ』と言われたときは本当にうれしくて、彼がどれほど勇気を出してくれたかもわかるし、大切にしようと真剣に思っていました。

彼はそれまでまともに女性とお付き合いしたことがなくて、『恋愛に向いていない』とか『女性のことがよくわからない』とか言うのを聞いていて、私がこの人を幸せにするんだ、なんて子どもじみたことも考えていましたね……」

そう言って唇を歪めるAさんは、「それでも、彼との関係では精一杯がんばれたので、後悔はありません」とさっぱりした表情で顔を上げました。

Aさんが彼との別れを決めた大きな理由は、「ふたりの関係をこちら任せにされるプレッシャー」だったといいます。

恋愛経験がない男性との交際

どんなお付き合いだったのか聞いてみると、普段は彼からも連絡があり毎日LINEや電話で話をして週末はデートの約束をする、Aさんの部屋でのおうちデートもあって手料理を楽しみそのままベッドで愛し合うような順調さを感じました。

「彼の機嫌がいいというか、私との間に何もないときは幸せなのですよね。

ベッドでも経験が少ないから最初はたどたどしいしもどかしかったですが、そんな姿も純情に見えて決して嫌ではありませんでした。

でも、ちょっとしたことですれ違って仲がギクシャクすると、途端に彼の状態が変わるのが大変で」

最初の違和感は、LINEのメッセージでAさんが送った内容を彼がスルーしてまったく別の話題を返してきたときで、「恋愛について私の思いを書いていたのですが、彼にはあまり触れられたくないことかなと思い、そのときは指摘せずに会話を続けました」と受け入れたそうです。

次に首をかしげたのは、Aさんの部屋に泊まるときに自分が飲む分のお酒を持ち込む彼に対し「飲み過ぎるとあなたはすぐ寝てしまうし、後が大変だから量は控えてほしい」とLINEで送ったときで、「わかった」とすぐに返信があったものの続けて「そんなことまで気を使わないといけないのか」と不満げな雰囲気の言葉があったときでした。

「別にお酒を飲むのを責めるような言い方はしていなくて、先週飲みすぎた彼がテーブルで寝てしまい介抱が大変だったから、そういうのはやめてほしいなと思っただけでした」

Aさんの感覚では普通に「お願いをした」ことが、彼にとっては文句を言われたような扱いになる場面は、ほかにもあったといいます。

「さっきの、LINEで私が送った内容を無視するのも何度かあって、さすがに寂しいし気分が悪いから『答えたくないときはせめて一言そう返してほしい』とお願いしたのですが、『返事をするかどうかは受け手が決めると学んできた』って、びっくりするような返信がありました。

硬い書き方もすごく違和感があるけど、何ていうか自分の状態に何か言われることへの拒否感が強いなと思って、このときは私もどう返事をすればいいかわからず、そのままスルーしましたね」

これまで女性とまともにお付き合いをした経験がない、「女性のことがよくわからない」と言っていた彼を思い出すと、些細なことでも自分への攻撃のように感じてしまうのだろうなとAさんは考えたそうです。

不機嫌さを当たり前に出す彼への戸惑い

少しのすれ違いでも、Aさんが指摘すれば彼が「すぐに」不機嫌になり会話が進まなくなることが繰り返され、最初は順調に思えた交際はだんだんと雲行きが怪しくなります。

「それでも私は彼のことが好きで、どんなことでも努力しようと思っていました」

何度もこう口にするAさんは、彼の経験のなさをカバーする気持ちで「私の部屋に持ち込むお酒の本数を決める」「『お互いに楽しめる話題ならOK』と言った彼の気持ちを汲んでふたりで盛り上がる話題だけ限定してメッセージを送る」と、やり方を変えていきます。

「寂しいし苦しいけれど、こういう人もいるのだ、と自分に言い聞かせていました。

私が変われば彼も態度を変えてくれるかもしれないと思っていたのですが、実際は逆で、私が折れるほどに彼の身勝手さが増していく感じでしたね」

Aさんが何よりつらかったのが「すぐに不機嫌さを見せてくる彼の姿」で、衝突の原因が彼であってもかたくなに謝らないし、Aさんが折れない限りその場で別れを迎えてしまうような険悪な空気が流れることが、本当に悲しかったといいます。

「お互いにいい大人なのに、ダダをこねる子どもの機嫌をとるような虚しさがあって、結局は私が関係をリードしないと続かないのだ、と気が付きました。

どんなことでも不機嫌になれば私が折れてくる、そんなのを繰り返していれば、いい方向に変わろうなんて彼が思うはずないですよね……」

その時点でお付き合いが始まってから3週間が経っており、交際するまではこんなことはなかったのに、とAさんはどうすればいいかを考え続けたそうです。

「自分の姿が私にどう見えるかとか、どんなショックを与えるかとか、まったく想像していないのだなと思いました。

おそらく彼にとってはそれが『ありのままの自分』であって、悪いとか思っていないし『好きなら受け入れるのが当然』にしているのかも、と考えたら、お付き合いを続けるならずっと私だけが我慢することになる想像しかできませんでした」

それが「彼とうまくいくやり方」なのだ、と思ったときに、Aさんのなかに好きだけれど「諦める」選択肢が浮かびます。

「好き」だけでは続かないのがお付き合い

気がつけば、「好きなだけ飲めないから」とAさんの部屋に泊まることも断られ、LINEでは彼が返事をしやすそうな話題ばかり考えてふたりの気持ちや自分のことは何も書けない状態。

彼の振る舞いに違和感を覚えても「不機嫌になられたら面倒くさいから」と何も言わない自分が当たり前になっており、「いま振り返ると本当に窮屈でしたね」とAさんはため息をつきます。

それでも、いわゆる「彼のテンションが普通の状態」のときは好きと言ってくるし平日の仕事終わりのデートも楽しいし、そちらに集中することでAさんは自分のつらさを押し込めていたといいます。

「別れたほうがいい、ともうはっきり思っていたのですが、どんな理由で終わることを彼に言えばいいか、今度は怒り全開で嫌なことを言われるに違いないと思うと気が滅入ってしまい、逃げていました」

自分なりに努力をしている、「彼とうまくいくやり方」を掴み彼を幸せにしている、と自分に言い聞かせる一方で、「本当は少しも幸せではない自分」もくっきりと見えており、その葛藤は「彼のことが好き」という気持ちが消えないからこそ強く、苦しかったのではと思います。

別れの決定打になったのは、週末のデートで映画館に行こうと決まっていたのに彼が直前になって「映画を観るのは疲れるからやめたい」と言い出し、それに対してAさんが「楽しみにしていたのに残念」と返したら「そんなときもあるだろう。こっちの都合は無視するのか」といつものように不機嫌になった彼を見たときでした。

「ああもうダメだ、と思いました。

どれだけ彼のことが好きでも、何か言えば自分を否定されたように受け取って攻撃してくる彼を見たら、寂しさを伝えることも私は封じられているのだなと。

その場で『ごめん、もう無理』と彼に言い、彼の返事は待たずに帰りました」

Aさんの言葉に彼は一瞬ひるんだように見えたそうですが、その後どうなったか、彼からはいっさいの連絡はなく今も音信不通だそうです。

「正直に言えば、解放感でいっぱいでした。

LINEで文句を言ってくるかなと思ったけど、別れたくないって気持ちじゃないなら返事をする義務もないと私は考えていたし、あんな人と付き合うのは無理です。

好きだけど、それだけじゃどうにもならないのですよね」

Aさんは寂しそうに笑いますが、この年齢までまともに女性と付き合えたことのない彼の状態を目の当たりにして、その理由も何となくわかったといいます。

「結局、何かあっても乗り越えることができないのですよね。

彼とは話し合うことが無理で、何かあればすぐ不機嫌さを全開にして私の頭を押さえつけるような感覚で、これに向き合い続けるのはよほど強い女性じゃないと難しいのでは、と思いました」

「潔さ」が自分を救う

1ヶ月で終わりを迎えたふたりの交際ですが、それまで何人かの男性とお付き合いをしてきたAさんは、潔く身を引く勇気が深い傷を防ぐことも知っていました。

「いま思えば彼とは相性が悪かっただけ、とも感じるのですが、ほかの人とはある程度うまくいって長い期間付き合えていて、私だけがおかしいとは思えなくて。

誰ともうまくいかない彼と私は違う、だからダメだとわかったらさっさと身を引くのが自分のためなのだと今もしみじみ思っています」

交際を続ける限り窮屈な自分からもまた逃げることはできず、そんな自分でいることの「時間の無駄」を、Aさんは口にしていました。

そんな自分をよしとして我慢を続けるよりも次の出会いを目指すほうが健全であり、自尊心すら揺らぐような男性との関わりは早めに切るのが正解と筆者も感じます。

男性はその後ジムをやめてしまい、今は顔を合わせる機会もありません。

「私とのお付き合いがダメになってすぐジムをやめるのも、私と会うストレスに耐えられないのだろうなと思います。

自分に自信があるのなら、堂々と来ればいいじゃないですか。

今までもそうやって何も解決できないままやり過ごしてきたのでしょうね」

男性の状態がどうであれ、AさんにはAさんの現実があります。

潔く別れを選べたのがAさんの自信であり、「次」を諦めないのもまた、これまでの「愛される自分」を知っているからこそ持てる強さかもしれないと感じました。

関係は対等だからこそ

お互いに好意を持って交際まで発展し、恋人関係になるのは本当に奇跡であり幸せなことですが、お付き合いを続ける努力は片方だけの「義務」ではありません。

交際が短命で終わるケースの内容はさまざまありますが、多いのは「ありのままの自分で愛されるのが正解」と思い込んで理解を相手だけの役目にし、自分は相手の気持ちや在り方を受け入れない、というものです。

関係に誠意を持つのであれば、不機嫌さを出すのではなく冷静にお互いの考え方を知っていこうとする姿勢があるはずです。

そうではなく相手が折れて「自分が受け入れられること」を衝突のゴールにしている人ほど、交際は続かないのは本当によく見聞きします。

お付き合いは、「恋人に愛される自分」と同時に「恋人を愛する自分」もいるはずですが、いつの間にか愛される自分にばかり意識が向いてしまい、相手の気持ちを置き去りにすることに気が付かないと、上記のケースのようにあるときいきなり別れを切り出されて交際は終わります。

別れは突然に来るのではなく、相手には相応に悲しみや寂しさが積もっていたのが実際で、交際の維持を相手任せにしているからいずれ「見限られる自分」を目の当たりにすることになります。

関係は対等であり、「愛する自分」を伝えること、自分も相手の気持ちや在り方を理解する姿勢が不可欠であることを、忘れてはいけません。

好きな人なら、大変なことでも「好きでいるために」努力しようと思うのは当たり前です。

一方で、そんな自分をまた当然にされ、常に力を尽くすことを求められると、お付き合いは窮屈でつらいものになります。

お互いを理解する努力はふたりが持つもの、という姿勢が幸せな交際にはあるのだと、もう一度考えたいですね。

(mimot.(ミモット)/ 弘田 香)

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