東西、僧俗隔てなく 金沢で浄土真宗合同法要

焼香する大勢の参詣者=金沢城公園三の丸広場

  ●「貴重な瞬間」「教えつないで」

 2日に金沢城公園三の丸広場で営まれた浄土真宗東西合同法要「いのちのつどい」の会場は、東西、僧俗の隔てなく、約1千のいすを設置した。子どももお年寄りも手を合わせ、通りすがりの外国人も舞台に見入って、穏やかな一体感が会場を包んだ。厳しい残暑で、僧侶の読経にセミの鳴き声がこだまする中、参詣者は世代を超えて信仰をつないでいく大切さに思いをいたした。

 「心の安寧(あんねい)がもたらされるのが浄土真宗の教えだと思う。親の姿を子が見て、ぜひ後世につないでほしい」

 「正信偈(しょうしんげ)」の唱和が響く会場で、焼香を済ませた真宗大谷派(東)門徒の主婦、越川生子さん(79)=白山市=はそう願った。インドの仏跡訪問がきっかけで、毎朝の念仏が習慣になっているという。

 金沢市の生花店主、室敏和さん(47)は、父や子ら3世代で参列した。仕事がら、寺院の取引先が多い。「東西真宗の合同法要なんて、想像したこともなかった。これだけ立派な法要は初めて。貴重な瞬間に立ち会えた」と喜んだ。

 七尾市の浄土真宗本願寺派(西)光徳寺の副住職、富樫悠典(ゆうすけ)さん(37)は、門徒とともに参列した。今回の法要は、同世代が浄土真宗に関心を持つきっかけになる、とみている。「両派は長い歴史の中で分かれた経緯はあるものの、同じ親(しん)鸞(らん)さんの教えのもと、共に考え、歩んでいかなければならない」と力を込めた。

 大谷派門徒の無職、江尻康さん(73)=七尾市=は、2日の北國新聞朝刊を見て会場に駆けつけた。「こんな行事に参加できるのは後にも先にもない。3日の稚児行列も楽しみだ」と、小さい子どもたちの晴れ姿を心待ちにした。

 本願寺派の池田行信(ぎょうしん)総長と大谷派の木越渉(わたる)宗務総長はあいさつでいずれも、5月の珠洲地震に触れた。地震で被害を受けた能登町の松岡寺(しょうこうじ)(本願寺派)の僧侶、波佐谷智詠子さん(59)は「両総長とも被災地を気に掛けてくださり、心に響いた」と目を潤ませた。

 白昼の金沢城公園で行われた法要に、観光客も足を止めて何事かと見入った。スペインから妻と訪れたペラ・フランチェスコさん(62)は「こんなクールなセレモニーは見たことがない。貴重な場面に立ち会えてラッキーだ」と笑顔を見せた。

  ●「王国の土壌」

 実行委員として法要準備に当たった大谷派金沢教区会議長の坂本学さん(64)は「東西のご門徒が多い石川だからこそ、実現できた。一般の方が続々と参加してくれたのは、真宗王国の土壌があってこそだろう」と感謝を込めた。

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