珍しいサクラの一本造り 地域に愛される「サクラ観音」修理一部終わり公開 - 奈良県大淀町の妙楽寺

一部修理を終えて公開されたサクラ観音=8月26日、大淀町馬佐の妙楽寺

 奈良県大淀町馬佐(ばさ)の妙楽寺薬師堂にまつられてきた平安時代の十一面観音立像(高さ192.5センチ、町指定文化財)と地蔵菩薩立像(同160センチ、同)の一部修理が終わり、地蔵盆祭りの8月26日にお披露目された。珍しいサクラ材の仏像を拝観しようと県外からも大勢の参拝者が訪れた。

 薬師堂には本尊の薬師如来坐像(高さ151センチ、ヒノキ寄せ木造り)を中心に十一面観音立像と地蔵菩薩立像が安置されている。高取町壺阪から古道を南に下った吉野地方の玄関口、田口庄(興福寺荘園)にあった古代寺院の仏像群の一部と考えられている。

 吉野町山口の西蓮寺の木造阿弥陀如来坐像(高さ2.6メートル)も同じ寺から移された記録が残る。

 2016年、本尊薬師如来の右手の脱落が見つかったのをきっかけに、町教育委員会が薬師堂の仏像を調査、十一面観音と地蔵菩薩はサクラの一木造りと分かった。2体は1本のサクラの木から彫り出されたとみられている。本尊は19年、脇2体は21年に町の文化財に指定された。

◆修理費用も地元が負担、公開イベントはカンパ制

 地域住民は十一面観音を「サクラ観音」と呼んで愛着を深め、後世に守り伝えようと今年4月、文化財修復士に依頼して修理。費用も地元で負担し、天冠の変化(へんげ)面の並びや右手の不具合を直した。頭部がひび割れて白化していた地蔵菩薩も「お色直し」を施した。

 地蔵盆祭りに合わせた公開イベントでは、サクラ観音のイラスト付きカップライトを境内に並べ、夕涼みコンサートも開かれた。今後の保存修理を見据えてイベントは初めてカンパ制にした。

 薬師堂を管理する馬佐地区(65戸)の今西章区長(71)は「150人の小さなむらだがご縁のある文化財をできる限り守っていきたい」と話した。

 薬師堂拝観の申し込みは今西さん、電話0746(32)8077。

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