人は石油を使って化学工業をつくり出した!石油ってどうやってできているの?【図解 化学の話】

石油を原料にした多くの化学製品が製造されるように

化学の近代化は化石資源の利用にも大きな役割を果たしていきます。ことに石油(図1)は、人々の生活に多大な影響を与えるようになった物質でした。石油とは、炭化水素を主成分とするほか、硫黄や窒素、酸素など種々の物質を含有した液体のことです。古代のメソポタミアやエジプトで接着剤や防水などに利用されていた生の石油利用から、石油を原料にした化学工業として大躍進するのは20世紀に入ってからです。端緒は、アメリカのスタンダード・オイル社がプロピレンからイソプロパノールの合成に成功した1920年といいます。これ以後、石油を原料に多くの化学製品が製造されるようになります。精製前の石油を原油といいますが、この原油を精製すると、ガソリン、ナフサ、灯油、軽油、重油などが分離できます。ことにナフサは粗製ガソリンや直留ガソリンとも呼ばれる化学物質で、いろいろな化学製品の原料となるものです。ナフサからは「石油化学基礎製品」(エチレン・プロピレン・ブタジェン・ベンゼン・トルエン・キシレン)がつくられ、この基礎製品からはプラスチック、合成繊維、合成ゴム、合成洗剤、塗料などの原料となる「石油化学誘導品」が生産されるのです。

また、中東産油国での天然ガスや原油採取時の随伴ガスに含まれるエタンも種々の化学物質の原料となる化学物質で、ことにエチレンの原料となります。エチレンも石油化学基礎製品で、ポリエステルやナイロン、アクリルなどの化学繊維、エタノールやポリ塩化ビニルなどの有機化学製品の原料となる物質です。ほかにも石油は、発酵による化合物、医薬品などの原料として製造されています。石油化学工業は工業生産を志向し、石油精製や化学合成のための工業地帯として石油コンビナートを形成しました(図2)。そうして化学工場がつくり出す石油を原料とする化学製品は、現代の生活に大きく影響するようになったのです。

石油ができるまで

①海・湖などに棲息していた植物性プランクトンや藻類、それらを餌にしていた生物などの死骸が砂泥に埋没、②生物の死骸が海底に堆積し、有機物が重層してケロジェン(泥岩)に変化、③地震などで海底が隆起。ケロジェンは長い年月の中でバクテリアや地熱の作用により、水・ガス・油に変化、④これらの物質は地下の圧力で上昇し、岩石の下に貯留して分離・蓄積。

石油コンビナートが生産する化学製品と関連業界

石油化学コンビナート内

原油→石油精製工場

重油など
軽油
灯油
ナフサ
ガソリン

ナフサ工場←輸入ナフサ

基礎製品

エチレン
プロピレン
ブタジェン
ベンゼン
トルエン
キシレン

誘導品

その他
洗剤原料(アルキルベンゼン、高級アルコール、エチレンオキサイドなど)
塗料原料・溶剤(アルキド樹脂、ポリウレタン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、ブタノールなど)
合成ゴム(スチレン・ブタジエンゴム、ブタジエンゴム、クロロプレンゴムなど)
合成繊維原料(エチレングリコール、テレフタル酸、アクリロニトリル、カプロラクタムなど)
プラスチック(ポリエチレン、ポリプロピレン、塩化ビニル樹脂、ポリスチレンなど)

関連産業

その他・・・接着剤、染料、肥料、農薬、医薬など
洗剤原料・・・合成洗剤、界面活性剤工業
塗料原料、溶剤・・・塗料工業
合成ゴム・・・ゴム工業
合成繊維原料・・・繊維工業
プラスチック・・・プラスチック加工業

出典:『眠れなくなるほど面白い 図解プレミアム 化学の話』野村 義宏・澄田 夢久

【書誌情報】
『眠れなくなるほど面白い 図解プレミアム 化学の話』
野村 義宏 監修・著/澄田 夢久 著

宇宙や地球に存在するあらゆる物質について知る学問が「化学」。人はその歴史の始めから、化学と出合うことで多くのことを学び、生活や技術を進歩・進化させてきました。ゆえに、身近な日常生活はもとより最新技術にかかわる不思議なことや疑問はすべて化学で解明できるのです。化学的な発見・発明の歴史から、生活日用品、衣食住、医学の進化までやさしく解明する1冊!

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