波佐見焼「負の遺産」を肥料に 大村の産廃業者が開発 窯業者の費用抑制が鍵

廃石こう型を再利用した肥料「波佐見のめぐみ」=大村市原町、県央リサイクル開発

 焼き物の製造工程で生じる「廃石こう型」を再資源化した肥料を、産業廃棄物処理業の県央リサイクル開発(大村市)が開発した。3月に「波佐見のめぐみ」の商品名で登録。これを機に、波佐見焼産地の東彼波佐見町や業界団体は、廃石こう型を事業者から回収する態勢を整えようとしている。この資源を地域内で循環させる試みは四半世紀前に始まり一時停滞していたが、再び動き出した。
 石こう型は陶磁器の量産に欠かせない。液状の陶土を型に流し込む「鋳込み成形」や、型に載せた粘土状の陶土をこてで伸ばす「機械ロクロ成形」などに使う。製品の質を一定に保つため、100~200回ほどの使用で新品と取り換え、産業廃棄物として処分される。

石こう型の一例=波佐見町井石郷、波佐見陶磁器工業協同組合

 廃石こう型の再資源化は1999年、町の埋め立て処分場が満杯になり閉鎖されたのがきっかけ。町や窯業界が模索したが、コスト面がネックだった。6年前には、県内の最終処分業者が受け入れを取りやめ、町内の中間処理施設に滞留する事態に。2019年、専門家を招き改めて検討してきた。
 石こう処理プラントを持つ県央リサイクル開発は、この動きに賛同。型に含まれる石こうの純度が高いことから、肥料に適していると判断した。併せて、別のリサイクル事業に廃石こう型を添加物として利用。梅本昌秀社長は「リサイクルの機運をさらに高めるには、窯業者の処理費用を抑える工夫が必要」と話す。
 肥料「波佐見のめぐみ」は近く販売を始める。ジャガ芋の表皮にかさぶた状の模様が出て市場価値がなくなる「そうか病」の抑制が期待できる。ミカンや水稲などの品質向上にもつながるという。
 町は今後、イベントなどを通じ肥料を町内外にPRする。町商工観光課の今里奎介主査は「かつて『負の遺産』と言われた廃石こう型で、波佐見ならではのストーリーのある野菜ができたら」と思いを語る。既に波佐見陶磁器工業協同組合は昨年11月から、この肥料を使った米と茶わんのセット「八三三(はさみ)米」を販売している。
 型の再資源化には石こうの質を保つため、屋内保管が不可欠。だが、手狭で場所を確保できない事業者は少なくない。同組合は町の補助を受け、年内にも屋根付きの一時保管所を整備し、事業者が随時搬入できるようにする。
 町の推計では年間700トンの廃石こう型が出る。昨年度、再資源化したのは約100トン。残りは町外で埋め立て処分されているか、各事業者が保管しているとみられる。
 同組合の太田一彦理事長は「先人が掲げた理想が四半世紀を経て実現しつつある。再利用が当たり前という機運をつくりたい」とした上で、「波佐見焼を次世代につなぐためにも、産地全体で取り組み、常にSDGs(持続可能な開発目標)を意識しておきたい」と強調した。


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