がん遺伝子検査で世界基準取得 正確さ確保/「適切ながん治療提供」青森県立中央病院

CAP認定を受けた県病「ゲノム検査室」のスタッフ。北澤部長(前列左)は「より適切ながん治療を患者に提供したい」と意欲を示す=1日(県病提供)

 青森県立中央病院(青森市)は、臨床検査の正確さを保証する世界標準の施設基準(CAP認定)を、がん遺伝子検査の分野で取得した。取得によって、精度の高いデータに基づいて、より適切ながん治療を患者に提供できる。CAP認定取得病院は、国立がん研究センター東病院(千葉県柏市)、長崎大学病院(長崎市)に続いて国内3病院目。

 認定は、米国病理医協会(CAP)が求める臨床検査の基準に適合していることを証明するもの。検査室スタッフの教育や検査手順・試薬管理などを標準化し、検査の精度を確保する。世界で7600以上の検査室が取得している。

 認定を受けるためには、医療スタッフの専門性、設備、試薬の管理法など約2千項目の審査基準をクリアする必要があり、がんゲノム医療に力を入れる県病は「ゲノム検査室」が中心となって2年かけ準備。今年3月に取得した。

 県病は、専門外来「臨床遺伝科」を2017年度に開設し、遺伝子検査と遺伝カウンセリングを実施。血液のがんの診断を補助する検査、肺がんに特定の治療薬の効果が期待できるかどうかを判定する検査などを行っている。1回の検査で多数の遺伝子を同時に調べる「がんゲノムプロファイリング検査」はこれまで約190件実施し、保険適用のがん治療薬が見つかった割合は約1割となっている。抗がん剤の副作用の予測が立つ検査は約450件実施し、副作用が少ない治療実施に役立っている。

 北澤淳一・ゲノム医療部長・臨床遺伝科部長は「今回の認定は、正確な検査ができる医療機関としてお墨付きをもらったということ。正確な遺伝子検査を行った上で、適切に対応することは、がんゲノム医療の可能性を探るとともに、がん発症・進行リスクの低減につながる。より質の高い医療を提供し、国内のゲノム医療格差をなくしたい」と語った。

がんゲノム医療 患者のがん組織を解析し、がんの原因となる遺伝子の変異に基づいて診断や治療を行う医療。遺伝子変異が分かれば、その部分を薬で狙い撃ちにすることが可能で、高い効果を期待できる。同じ臓器のがんでも患者の変異した遺伝子が違えば、効果のある薬は異なる。標準治療に代わる可能性のある新しい治療法として研究が進められている。

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