原因不明の病気に光…知られぬ難病「ローハッド症候群」厚労省の研究対象に 「指定難病へ一歩」家族ら期待

オンラインで交流する患者や家族ら=8月19日

 幼児に突然、急激な肥満や低換気などが起きる原因不明の病気「ROHHAD(ローハッド)症候群」が先月から新たに、厚生労働省の難病に関する研究班の研究対象として取り扱われることとなった。比較的新しい病気で、患者数が少ないローハッド症候群は、医療費助成などが行われる指定難病になっていない。今後専門家による研究が進めば、指定難病への追加につながる可能性があり、埼玉県さいたま市に住む患者の橋本光優(こうや)さん(12)の母、恩(めぐみ)さんは「指定難病にしてもらうための一歩だ」と期待を寄せている。

 ローハッド症候群は、病名の由来である「急性発症肥満」「低換気」「視床下部障害」「自律神経機能不全」などの症状が次々と現れ、神経節細胞腫が発生する場合も多い。特に自発呼吸が低下しやすい睡眠時に注意が必要で、酸素投与や人工呼吸器などでの早期の呼吸管理が必要。しかし、客観的な診断基準は確立されていない上、知名度の低さや複数の診療科にまたがる多様な症状などが原因で早期診断につながりにくい課題がある。

 ローハッド症候群が研究されるのは、厚労省難治性疾患政策研究事業で指定難病を含む60以上の病気を研究する「患者との双方向的強調に基づく先天異常症候群の自然歴の収集とリコンタクト可能なシステムの構築」班(研究代表者・小崎健次郎慶応大学教授)。

 研究班には、4月に日本小児科学会でローハッド症候群の新たな検査方法について発表した広島大学大学院の宇都宮朱里客員教授も加わった。宇都宮客員教授は埼玉新聞の取材に「指定難病へは診断基準や検査精度の確立が課題でハードルが高い」と指摘しつつ、「確立されれば、(慢性疾患の子どもの医療費負担が軽減される)小児慢性特定疾病も含めて指定難病への新たな指定につながる可能性はある」と説明した。

 研究対象入りを受け、橋本恩さんが立ち上げた「ローハッド症候群日本事務局」が運営する家族会は8月19日、オンラインで会合を開き、宇都宮客員教授に研究の現状や症状への対応について質問するなど、交流を行った。参加したのは全国の7家族で、患者の年齢や症状、進行度合いはそれぞれ異なる。家族らは「社会に病気のことがほとんど知られていない」「症状が(他人にとって)刺激的ではないので、学校などに説明しても理解を得にくく困っている」と周知を課題に挙げ、「家族会によって心が楽になり、救いになった。こういう場につながっていない人はまだ多いと思う」と意義を強調した。

 難治性疾患の研究事業では、患者や家族を「研究協力者」に登録し、当事者の声に耳を傾ける取り組みが拡大している。橋本さんは協力者登録の打診は受けていないとしながら、「研究班と家族会の間で情報共有などの連携が必要だと思う。わずかな情報でも必要としているので、研究班への働きかけを積極的にしていきたい」と協力に意欲を示した。

 ローハッド症候群日本事務局ホームページはこちら(http://www.rohhadjapan.com/)。

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