寝る前に3行 自律神経を整える方法とは 

般若心経をなぞり書きする写経。「書く瞑想」ともいわれる

 漢字というのは不思議なものだ。造形美はさることながら、丁寧に書けば、一字一字に宿る力や感情までも受け取れる気がする。

 初めての写経体験の感想である。浜田市の書道教室が主宰する会に参加した。なぞり書きではなく、手本を見ながら書き写す。正座し、拝借した端渓硯(たんけいすずり)で静かに墨をすると、猫背気味の背筋をできるだけ伸ばし、一呼吸。30年ぶりに持った筆で、262文字の「般若心経」に取りかかった。

 写経は「書く瞑想(めいそう)」といわれ、意識を文字に集中することで邪念が払われるという。弘法大師が古人の筆論を持ち出して説いた「書は散なり」との言葉は、書する心はとらわれないように、という意味。書の何たるかも分からず、普段は「気が抜けた字」と評される乱筆ながら、集中して書いた文字からは、やる気と楽しさだけは伝わり、勝手に満たされた。

 写経のみならず、書くという行為は指先を使うため、脳の前頭前野を活性させる効果もある。学生時代などに「書いて覚えよ」と言われたが、観念ではなく書いた方が、記憶により残るという研究結果があるという。

 寝る前に3行ほどの日記をつけるのも自律神経を整えるのにいいそうだ。「よくなかったこと」「よかったこと」「明日の目標」の三つをゆっくりと丁寧に。秋の夜長、読み返すのも楽しいだろう。文面だけでなく、その時の自分の分身が文字としてそこにいるはずだ。

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