「体形で悩む人たちの希望の星になりたい」。アイドルグループ「びっくえんじぇる」の大橋ミチ子さん(大田原市出身)は、活動の信念を語る。ただ、その思いに至るまでは、つらく苦しかった。
芸能界に憧れ、高校では演劇部に所属。卒業後は日光市内のすし店へ就職したが、芸能界入りを目指し半年ほどで上京した。
しかし、オーディションでは厳しい現実に直面した。大橋さんの当時の体重は、現在のおよそ半分の54キロ。それでも「もっと痩せていたらな」と言われた。「まずは見た目で、実力はその次…」。そう実感せざるを得なかった。
オーディションはなかなか受からず、通っていた養成所でも「あと5キロ痩せなさい」というアドバイス。大橋さんは、食べることを拒否するようになった。
水とヨーグルトだけの生活を続けながら、養成所に向かっていた時だった。コンビニから、揚げ物の匂いが漂ってきた。気付いたら手には肉まん。頬張りながら、涙が止まらなかった。「もう辞めよう。栃木に帰ろう」。養成所や両親に思いを伝えた。
そんな時、書店で「ぽっちゃり」女性向けファッション雑誌「la farfa(ラ・ファーファ)」が目に入った。太めのモデルが水着を着て、誌面を飾る。「なんで笑っていられるの」。疑問に思う一方で、うらやましくもあった。「自分の体形を受け入れられたら、人生が変わるかもしれない」。すぐにモデルに応募。見事合格した。
モデルになって半年たつ頃には、自分の体形を惨めと思うことがなくなった。「そのまんまの自分がすてきだと言ってくれる人が周りにいるだけで、こんなに変わるんだ」。環境の変化は大きかった。
2018年には自身でアイドルグループ「びっくえんじぇる」を立ち上げ、ユーチューブチャンネルを開設した。動画のジャンルは大きく二つ。一つは、ライブ映像など、ファンの人たちがもっと好きになってくれるようなコンテンツ。もう一つは、大食いや食べ歩きなど「太っている人に求められている動画」だ。1万キロカロリーを摂取するなどハードな企画もあるが、無理に食べることはせず、おいしく楽しく食べることに重きを置く。
「生きていたら落ち込む日もあるし、自分の嫌いな部分もあると思う。けどそんな時には、動画を見て前向きになってほしい」。大橋さんのまぶしい笑顔が、周囲を明るく照らす。
◆びっくえんじぇる大橋ミチ子さん◆
10月10日生まれ。大田原市出身。2013年から「la farfa」専属モデルを務める。18年にアイドルグループ「びっくえんじぇる」を立ち上げ、唯一無二の“おデブアイドル”を確立した。自身もメンバーとして活動中。チャンネル登録者数は19.1万人(9月1日現在)。