ウェッブ宇宙望遠鏡で捉えた“りょうけん座”の渦巻銀河「M51」の中心付近

こちらは「りょうけん座」(猟犬座)の方向約2700万光年先の渦巻銀河「M51」(Messier 51, NGC 5194)の中心付近の様子です。M51は近くにある銀河「NGC 5195」(この画像には写っていません)と相互作用しており、「子持ち銀河」とも呼ばれています。

【▲ ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡の近赤外線カメラ(NIRCam)と中間赤外線観測装置(MIRI)で観測された渦巻銀河「M51」の中心付近(NIRCamで捉えた1.15μmと1.5μmを紫、1.87μmと2.0μmを青、3.0μmと3.35μmを緑、4.05μmと4.44μmを黄で、MIRIで捉えた5.6μmをオレンジ、7.7μmを赤で着色)(Credit: ESA/Webb, NASA & CSA, A. Adamo (Stockholm University) and the FEAST JWST team)】

欧州宇宙機関(ESA)によると、暗赤色の部分は銀河内部でフィラメント状(繊維状)に広がる温かい塵(ダスト)の分布を示しています。赤色は塵の表面で形成された複合分子から発せられた赤外線を、黄色やオレンジ色は比較的最近になって形成された星団の星々からの放射によってガスが電離した領域を示しています。明るい結び目や暗い空洞のように見える部分は、恒星の活動が星間物質に対して劇的な影響を及ぼすことで形成されたのだといいます。

この画像は「ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(James Webb Space Telescope:JWST)」の「近赤外線カメラ(NIRCam)」と「中間赤外線観測装置(MIRI)」で取得したデータをもとに作成されました。ウェッブ宇宙望遠鏡は人の目で捉えることができない赤外線の波長で主に観測を行うため、公開されている画像の色は取得時に使用されたフィルターに応じて着色されています(※1)。

※1…冒頭の画像ではNIRCamで捉えた1.15μmと1.5μmを紫、1.87μmと2.0μmを青、3.0μmと3.35μmを緑、4.05μmと4.44μmを黄で、MIRIで捉えた5.6μmをオレンジ、7.7μmを赤で着色しています。

【▲ ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡の近赤外線カメラ(NIRCam)で観測された渦巻銀河「M51」の中心付近。冒頭の画像とは波長に対する配色が異なる(1.15μmを紫、1.5μmと1.87μmを青、2.0μmをシアン、3.0μmを緑、3.35μmをオレンジ、4.05μmと4.44μmを赤で着色)(Credit: ESA/Webb, NASA & CSA, A. Adamo (Stockholm University) and the FEAST JWST team)】

ウェッブ宇宙望遠鏡によるM51の観測は、天の川銀河の外における恒星フィードバック(※2)と星形成の間にある相互作用の解明を目的とした「FEAST(Feedback in Emerging extrAgalactic Star clusTers)」と呼ばれる一連の観測の一環として実施されました。ウェッブ宇宙望遠鏡による観測を通して、星形成のサイクルや金属(※3)の濃縮が銀河のなかでどのように制御されているのかや、惑星や褐色矮星(恒星と惑星の中間的な性質を持つ天体)が形成されるタイムスケールなどについての理解が深まると期待されています。

※2…Stellar feedback。ESAによれば、星を形成する環境に対して恒星からエネルギーが注ぎ込まれることを示す言葉で、星の形成速度を決める重要なプロセスだと考えられています。

※3…ここでは水素やヘリウムよりも重い元素の総称。金属は恒星内部の核融合反応や超新星爆発などで生成され、恒星の世代交代が進むにつれて増えてきたと考えられています。

【▲ ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡の中間赤外線観測装置(MIRI)で観測された渦巻銀河「M51」の中心付近。冒頭の画像とは波長に対する配色が異なる(5.6μmをシアン、7.7μmをオレンジで着色)(Credit: ESA/Webb, NASA & CSA, A. Adamo (Stockholm University) and the FEAST JWST team)】

ウェッブ宇宙望遠鏡で捉えたM51の画像は“ウェッブ宇宙望遠鏡の今月の画像”として、ESAから2023年8月29日付で公開されています。

Source

  • Image Credit: ESA/Webb, NASA & CSA, A. Adamo (Stockholm University) and the FEAST JWST team
  • ESA/Webb \- A FEAST for the eyes

文/sorae編集部

© 株式会社sorae