シーボルト来航200年、ウィーン万博150周年記念 舞台「シーボルト父子伝~蒼い目のサムライ~」上演中

舞台「シーボルト父子伝~蒼い目のサムライ~」が博品館劇場で上演中だ。今年はその来航から200年の記念年でもある。そしてウィーン万博150周年、この万博でシーボルト兄弟は日本をアピールするために活躍した。

歴史の授業でも習うが、フィリップ・フランツ・フォン・シーボルトは幕末に来日し、長崎出島の地より多くの弟子を育て日本に西洋医学を広めたが、業績はこれだけではない。日本に初めてピアノを持ち込んだのもシーボルト。山口県萩市今魚店町の熊谷(くまや)美術館に大切に保管されている。このピアノは日本最古のピアノ、ピアノの内部に「我が友クマヤへ」とシーボルトがオランダ語で書いたサインが残る。日本を離れる際、親交があった長州藩御用商人の熊谷家4代五右衛門義比(よしかず)に贈ったそう。
シーボルトの業績は医学に留まるところなく世界に広がるシーボルトコレクションと共に様々な研究分野で活かされた。また、その研究とコレクションをもとに書き記された大著『日本』はベストセラーになり、ジャポニズムブームを引き起こした。だが、その研究分野はもちろん、日本を愛する蒼い目のサムライの遺志は2人の息子、 兄アレキサンデル、弟ハインリッヒに引き継がれ、今年150周年を迎えるウィーン万博参加など、彼らが日本の為に奉職する中で新時代に漕ぎ出たばかりの日本を世界の一等国にすべく維新志士たちと共に数々の危機を乗り越えていったことはあまり知られていない。
初演より≪99.9~刑事専門弁護士≫シリーズなどヒット作を送り出す木村ひさし監督を総合演出、主演脚本も担う鳳恵弥を演出に、辰巳琢朗、山崎裕太、国生さゆり、劇中音楽も担当するパッパラー河合などの新キャストを迎えての公演となる。
前説、賑やかに登場し、わちゃわちゃと楽しく!なお、前説は撮影可能、撮影しやすいようにポーズも取ってくれるので(#シーボルト父子伝2023)。ハッシュタグをつけてツイッターで。
この物語の主要人物であるフィリップ・フランツ・フォン・シーボルトの息子で弟のハインリッヒ・シーボルト、研究分野において父との区別のため「小シーボルト」とも呼ばれる。兄は外交官で、井上馨外務卿の秘書となったアレクサンダー・フォン・シーボルト。

異母姉に日本人女性として初の産婦人科医となる楠本イネがいるが、もちろん、この物語でも登場する。彼らの功績は研究中だが、次々と様々なことが明らかになっている。今年はウィーン万博150周年、明治政府がはじめて正式に参加した万博だ。新しい日本を全世界にアピールする貴重な機会、さまざまなものが出品されたが、これらの選定は、実はハインリッヒ・シーボルトが深く関わっている。
語り部は、花(国生さゆり)とひ孫の忠志(佐藤茜)、兄弟が初めて日本にやってきたところから始まる。好奇心旺盛な弟(鳳恵弥)にしっかり者の兄(山崎裕太)、兄が見た夢、父(辰巳琢郎)が出てくる。「父さん!」と言った途端に目覚める、船は無事に日本に到着する。それからオープニング、賑やかに!パッパラー河合のギター生演奏がなんとも贅沢!
調べれば、調べるほど、彼らの功績は多岐にわたる。「この前、観た」と言っても油断しないように(笑)。好奇心の赴くままに行動し、恋をしたら一直線、このハインリッヒ・シーボルトを演じるのは初演から演じている鳳恵弥、当たり役。冒頭でアクションシーン、これがかっこいい。ちなみにハインリッヒはフェンシングが得意だったとか、まさに文武両道。そして感性の違い、結婚を申し込む場面、この頃の日本では恋愛結婚の方が珍しい。だが、ハインリッヒは平たく言えば「異人」さん。家や身分の違いよりも自分たちの気持ちを大事にする。ましてや当時の日本人が日本人以外の人と結婚することは想定外、よってハインリッヒはソッコーで父親から拒否される。

だが、そこで諦めるハインリッヒではない、超前向き、この恋愛はどうなったかは言わずもがな。2男1女を授かるも、長男はハインリヒがウィーン万国博覧会に帯同中に夭折。そういったエピソードを織り交ぜて物語は進行し、ハインリッヒの半生を描く。日本を愛し、家族を愛したハインリッヒ。テーマソング、鳳恵弥作詞・パッパラー河合作曲『ジパングにやって来たヤァ!ヤァ!ヤァ!』、この作品はミュージカルではないが、いわゆるライトモチーフのように用いられる。そして挿入歌『愛しき君よ』も鳳恵弥作詞・パッパラー河合作曲、シーボルトの愛に満ち溢れた歌、劇場ロビーにはハインリッヒ・シーボルトの功績などが読めるようになっている。また、兄のアレクサンダー・フォン・シーボルトを演じるのは山崎裕太、落ち着いた雰囲気が弟とは対照的、だが、志は同じ、日本のために尽力になりたい気持ちは弟に引けをとらない熱い気持ちをほとばしらせる。また、国生さゆりが花を演じる。めがねをかけておっとりとした空気感をまとい、孫と話すシーンは微笑ましい。

明治なので教科書に登場する歴史上の人物がたくさん登場、伊藤博文(佐藤豪)や渋沢栄一(足立浩大)はもちろん、パッパラー河合も佐野常民役で出演(日本赤十字創始者)、なぜかギター弾いてたり(笑)。
上演時間はおよそ2時間ほどだが、歴史上の人物が登場するからと言ってお勉強にはならず、小難しくもない。ただ、日本が好きすぎた1人の人物の生き様が描かれているだけ。シンプルだが、多くのことが詰まっている。

<2021年公演レポ記事>

シーボルト兄弟について
父の再来日に同行をしたアレキサンデルは、父の帰国後も日本に残りパリ万博の使節団に随行、その行程では渋沢栄一など後 の明治政府を支える傑物たちに語学や西洋事情を教えるなど交友を深め、その帰路で弟ハインリッヒを連れて再来日。その後に シーボルト兄弟は各国との条約改正やジュネーブ条約への調印を経た日本赤十字社の設立、大国ロシアとの緊張を高める中で ヨーロッパ諸国でのロビイスト活動を展開し、戦費調達、そこからに繋がる大戦への勝利を得るなど外交面で大いに活躍をし、さ らに研究分野においても父の跡を引き継いだハインリッヒは考古学者としては大森貝塚など様々な遺跡を発掘、著書『考古 説略』において日本で初めて考古学という名称を用いた。また、2人の異母姉である楠本イネも姉を慕う兄弟の協力をもって築 地にて日本人女性として初の産院を営み、宮内省御用掛となっている。医学、外交、民俗学、博物学など多くの分野に精通し 活躍をしたシーボルトであったが、その血は子供たちに脈々と引き継がれ、父の愛した日本の為に生き抜いた。

概要
ACTOR’S TRIBE ZIPANGプロデュース
シーボルト来航200年、ウィーン万博150周年記念公演
「シーボルト父子伝~蒼い目のサムライ~新たなる船出」
日程・会場:2023年8月31日 (木) ~2023年9月3日 (日) 博品館劇場
出演:
鳳恵弥
山崎裕太
佐藤茜/庄田侑右/木村圭吾/亀吉
佐藤杏奈(誇)/小島里奈(愛)/岡本安代(誇)/浜辺こはる(愛)
中井健勇(誇)/黒江優也(愛)
十勝令子(誇)/藤村はる美(愛)/井川さつき(誇)/映奈(愛)
片岡断行/足立浩大/佐藤豪/野田宏海/ランディ井上(誇)/出口誠也(愛)
相沢海心(誇)/長原あおい(愛)/内藤朝(誇)/小野幸音(愛)
加藤ななみ/美波南海子/的場丈/糸井光
パッパラー河合
国生さゆり
辰巳琢郎

総監修:木村ひさし
演出/脚本:鳳恵弥
音楽:パッパラー河合(爆風スランプ)
企画/原作:関口忠相(シーボルト子孫)
協力:日本シーボルト協会、築地居留地研究会、長崎居留地協会 他

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