相手の言い間違えを訂正せず聞き流す→後日「なぜ教えなかった」と激怒された!ピンチの対処法とは

相手が誤用している言葉を訂正せずに聞き流していたところ、後日、「別の場所で笑われて恥をかかされた」と〝逆ギレ〟された経験はあるだろうか。「大人研究」のパイオニアとして知られるコラムニストの石原壮一郎氏が、そのような局面での対処法を解説した。

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【今回のピンチ】

義母はいつも「スターバックス」のことを「オートバックス」と言い間違える。面倒なのでスルーしていたが、ある日「なんで教えてくれなかったのよ!」と激怒されて……。

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「あそこのコーヒー、とっても美味(おい)しいわよね。ほら、オートバックスの」

義母はそんな調子で、前々から「スターバックス」のことを「オートバックス」と言い間違えていました。プライドが高いタイプなので、嫁である自分に指摘されたら、確実に顔色を変えて怒り出します。

わざわざ関係を悪くすることもありません。これまでは「オートバックスのコーヒーが」と言い出しても、話を合わせていました。

ところが、ある日「〇〇さん、なんで教えてくれなかったの!恥かいちゃったじゃないの!」と激怒しています。話を聞くと、友だちに「やだわ、あなた。それを言うならスターバックスよ」と笑われたとか。ほぼ逆恨みですが、どう切り抜ければいいのか。

どんな返しをしても、一長一短あります。正直に「ごめんなさい。気づいてはいたんですが言いづらくて」と謝るのはどうか。義母は怒りを少しは収めてくれるかもしれませんが、「それもそうね。私が大人げなかったわ」と納得する可能性は低いでしょう。

あるいは「えーっ、笑うなんてヒドイですね!誰だって間違いはあるのに!」と、義母の友だちに対して、一緒に腹を立てる手もあります。義母がこっちへの怒りを忘れて、「そうなのよ。だいたいあの人は……」と友だちへの怒りをふくらませたら儲(もう)けもの。ただ、「私の友だちを悪く言わないで!」と火に油を注ぐ可能性も大いにあります。

ここはひとつ、義母と〝仲間〟になってしまいましょう。「えーっ、コーヒーが美味しいのはオートバックスじゃないんですか!私もそう思っていました!」と激しく驚きます。続けて「スターバックスだったんですね。お義母さん、教えてくださってありがとうございます!」と感謝を示しましょう。

同じ勘違いをしていたということで、うまくいけば「可愛(かわい)げのある嫁」の地位を守ることができます。しかし、わざとらしいという印象を抱かれたら、すべてが水の泡。「信用できない嫁」のレッテルを貼られるでしょう。

義母の性格や自分との関係性を考えながら、どの作戦が有効で、どのリスクがマシかを瞬時に判断して、ひとつを繰り出したいところ。人生は選択と集中の連続です。

いろいろ裏目に出て、義母との関係に深い亀裂が入ったとしても、それはもう致し方ありません。極端に面倒くさいタイプの義母と明確に距離を置くきっかけになって、たぶん総合的には結果オーライです。

(コラムニスト・石原 壮一郎)

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