【今週のサンモニ】「汚染水放出」デマを繰り返す日本最大級の風評加害番組|藤原かずえ 『Hanada』プラス連載「今週もおかしな報道ばかりをしている『サンデーモーニング』を藤原かずえさんがデータとロジックで滅多斬り」、略して【今週のサンモニ】。先週に引き続き、原発処理水放出についてどうしようもないイチャモンをつけまくりでした。

今週も見事な支離滅裂

今週も性懲りもなく処理水問題で無理やり日本政府を批判した『サンデーモーニング』です。

事実を視聴者に提供することよりも日本政府の悪魔化が最優先であるため、過去の番組の主張とはまったく整合性がとれず、まるでパラレル・ワールドに迷い込んでしまったかのような見事な支離滅裂ぶりです。

番組は、処理水放出に対する単なるイチャモンとも言える中国共産党の非科学的主張に一切触れることもなく、中国共産党による日本の水産物禁輸措置がいかに日本社会を打撃しているかを街に出てあら捜ししました。

アナウンサー:日本の処理水放出をめぐり強硬な構えを崩さない中国。その影響は日本のあちこちで見られるようになっています。金曜日の東京浅草、これまでと少し様子が違っていました。アジア系の観光客に声をかけましたが、中国本土からの客にはあまり出逢えませんでした。東京都内にある旅行会社。中国人を対象に日本への旅行を企画していますが、先月から団体旅行が解禁され、集客を期待していた矢先に客足が止まったと言います。

記者(VTR):損害はどれくらいですか?

東日本国際旅行社・謝善鵬代表取締役(VTR):7月と8月の売り上げが4000万円くらいなんですけど、これから新規の問い合わせがないとゼロになるんじゃないかなと思います。

コロナ後のオーバー・ツーリズムが社会問題化している中、特定の国の旅行者をターゲットとする旅行会社の売り上げが、先方の旅行者の意向でどう減少しようとも、そのリスクを負担する責任は旅行会社にあり、日本政府には何の責任もありません。

仮に中国の旅行者が処理水の風評を根拠に日本旅行を回避したとするならば、旅行会社が恨むべきは風評を払拭しようと努力している日本政府ではなく風評を拡散している風評加害者です。

風評加害者と被害者をきちんと見極めろ

アナウンサー:福島第一原発の処理水の海洋放出が始まって1週間あまり、中国の反発は激しいものとなっています。

中国CCTV(8月29日放送):日本政府と東京電力は事故の隠ぺいなどの手段で、全世界に「核汚染水の放出」が安全無害という嘘を拡散しようとしている。

アナウンサー:こうした報道の影響もあってか、SNSでは放出に反対の意思を示すとして次々と川に飛び込む動画が。さらに中国国内から日本各地へ嫌がらせ電話が殺到したのです。

このケースにおいて、

①嫌がらせ電話の人物が信じている「汚染水放出」という嘘は風評、
②風評を拡散した人物・組織は風評加害者、
③風評を信じて迷惑行為を行う人物・組織は偽計業務妨害・脅迫罪・傷害罪・ストーカー規制法違反のいずれかの犯罪容疑者、
④嫌がらせ電話の受信者が被る迷惑は風評被害、
⑤嫌がらせ電話の受信者である日本国民は風評被害者です。

当然のことながら、風評加害者と犯罪容疑者は風評被害者に謝罪し、風評被害を補償する責任があります。

アナウンサー:こうした中…

野村哲郎農水大臣(VTR):「汚染水」のその後の評価等について情報交換をしたということです。

アナウンサー:野村農水大臣が中国側と同様に「汚染水」と表現したのです。しかもこの発言、中国による水産物の全面的な輸入禁止について話し合った直後のものでした。

単なる「言い間違え」を大々的に報道

まず、TBSの報道からわかるように、野村大臣の発言は、歩きながらの記者団の質問に対して「汚染水」と「言い間違えた(大臣談)」のであり、記者団が大臣に対して言い間違えか否かを事前に確認すれば、誤解が拡散されることもなく、日本社会の混乱も中国共産党による政治利用も回避することができました。

しかしながら、極めて卑劣にも、マスメディアは、「言い間違えた」とする大臣の見解を得ずに、発言を大々的に報道して拡散したのです。

この日本のマスメディアの行為は、風評被害の回避よりもショッキングな報道ネタ作りを優先したものと言えます。彼らは、大臣の意図のない明らかなヒューマンエラーを悪用して、言葉狩りを行ったのです。まさに日本のマスメディアはマスゴミそのものです。

こんな不誠実な引っかけ報道がまかり通るのであれば、例えば『サンデーモーニング』でアナウンサーが原稿を読み間違えた場合(日常茶飯事のことです)には、意図の有無にかかわらず、いちいち大問題化する必要があると言えます。

ただこの欺瞞は、この日の『サンデーモーニング』の報道に比べれば、まだマシでした。なんと、『サンデーモーニング』は、これまでに「汚染水放出」というデマを番組で意図的に繰り返し主張してきたにも拘らず、大臣の無意図で文脈も不明の「汚染水」という単なる言い間違えを問題視したのです。

詳しくはHanadaプラス「今週のサンモニ」の先週の記事(下記)を参照してください。

【今週のサンモニ】「汚染水放出」と風評加害を拡散する『サンデーモーニング』|藤原かずえ | Hanadaプラス

<2021年5月2日>
青木理氏:原発事故をこの国は起こし、10年たっても皆さんご存じの通り、汚染水を放出するという話をしている。「アンダーコントロール」とか「復興五輪」とか嘘だ。

<2022年2月13日>
青木理氏:貯まり続けている処理するという汚染水も海洋放出しようじゃないかという動きがあった。

<2023年7月9日>
目加田説子氏:汚染水の放出も、最低30年くらいはこれから続く。

『サンデーモーニング』こそが、公共の電波を使って「汚染水放出」デマを繰り返していた日本最大級の風評加害者なのです。番組の欺瞞は続きます。

「サンモニ」は中国の禁輸措置を想定していた?

アナウンサー:中国の輸入禁止の影響を強く受けているのは北海道のホタテです。中国への出荷を待っていますが、行き場を失うというのです。中国による水産物の全面輸入禁止が直撃しているのは北海道紋別市にある水産加工会社。この日、出荷したホタテが戻ってきました。
去年1年間の国内のホタテの輸出額は911億円、うち半分以上が中国向けでした。この会社だけで100トンのホタテが行き場を失いました。ホタテの養殖が盛んな北海道内浦湾…

ホタテ漁業者:中国への輸出があるからホタテの単価が上がってきたんだよね。国内販売ばっかりならガタガタと値段が下がっていくから本当にやっていけなくなる。

アナウンサー:大臣から汚染水発言が飛び出す中、政府に期待することは…

ホタテ漁業者:もちょっとしっかりしてくださいよって感じだよね。大臣なら

アナウンサー:政府は水産業者の支援に乗り出しましたが、問題解決の見通しは立っていません。

ホタテ漁業者は大臣を非難していますが、大臣の「汚染水」発言は中国共産党の禁輸に全く影響を与えていません。なぜなら中国共産党による禁輸措置の後の発言であるからです。

それに対して、『サンデーモーニング』青木理氏や目加田説子氏の「汚染水放出」発言は公共の電波を使った意図的なデマの拡散であり、中国共産党の禁輸に大きな影響を与えた可能性があります。『サンデーモーニング』が風評加害者であることは明確な事実です。

アナウンサー;中国はこれまでも外交問題に対して経済的な圧力をかけてくる手法を取ってきました。今回、中国は水産物の規制をこれまでの日本の10都県から全国に拡大しました。
日本の水産物の輸出先のトップは中国で金額は871億円、全体の22.5%を占めています。中国の規制強化について汚染水発言があった野村水産大臣は「どのくらい拡大していくのかは全く想定していませんでした」と発言。
野党は「当然想定し、対応を準備していると思っていた。あまりに楽観的だ」と批判しています

田中優子氏:中国の経済的圧力は今までにあったわけですから当然想定すべきだった。

三輪記子氏:プロセスが凄く変だ。そもそも処理水を放出することがあったら、その後どういう反応が近隣諸国からあるかということを想定して、こういう被害が出そうだからここにはこういう手当をしますということがまず先にあってしかるべきであるにもかかわらず、やってしまってから対策をしますというのは順番が逆だ。そういうコミュニケーションがないままどんどん進んで行くところに凄い危惧をおぼえる。

『サンデーモーニング』は、「大臣があまりに楽観的」「中国の経済的圧力を当然想定すべき」と中国の禁輸措置を想定できなかった政府を批判しています。

しかしながら、この批判を前提にして結論を導けば、『サンデーモーニング』は、中国の禁輸措置があることを確信的に想定して「汚染水放出」というデマを拡散していたことになります。彼らは、日本を貶める日本国民の明確な敵であると言わざるを得ません。

ちなみに政府は、実際には風評被害を事前に想定しており、風評被害対策費として800億円を計上することを明言しています。

本来、この風評被害対策費を支払う責任があるのは、『サンデーモーニング』などの風評加害者であり、風評被害者である国民がこんな大金を支払わされるのは理不尽の極致です。国民は、一部のマスメディア・国会議員・活動家・SNSインフルエンサーなど、風評加害者を特定し、損害賠償を求めるべく行動するのが妥当です。

海洋放出はあらゆる点で合理的なのに……

田中優子氏:海洋放出になった背景はよくわからないが、その前から専門家を入れた組織である原子力市民委員会などがモルタル固化案だとか、大型タンク案とか出している。なぜかというと2011年に約50年分のトリチウム水がもう海洋に流れてしまっている。これ以上は流すべきではないという判断から固定化してしまう案の方がよいと言っている。それが真剣には検討されなかった。結局コストの問題だ。人間ではなく数字だけ見て海洋放出を判断してしまった。IAEAに他の案を示していない。

海洋放出が選択された根拠は、以前より政府によって公開されています。

多核種除去設備等処理水の取扱いに関する小委員会報告書について(METI/経済産業省)

この資料には、コンクリート固化案として地下埋設も精緻に検討されています。

ちなみに、コンクリートはセメントと骨材で構成され(高強度)、モルタルはセメントと砂で構成(低強度)されます。いずれも地下埋設の処分方法であり、大きな差はありません。田中氏が「真剣には検討されなかった」というのはデマです。

説明は割愛しますが、資料から総合判断すれば、海洋放出が、コストだけでなく、工期・安全性・環境性(規模・廃棄物)等の観点から合理的であることがわかります。そもそも全量を1年で放出しても日本人の年間被曝量の千分の一にも満たない処理水の処理に対して、莫大な敷地とコストを要し、作業員の安全性確保に問題があり、福島の復興を阻害するモルタル固化案は合理的ではありません。

また、力学的に不安定な大型タンク案こそ何よりもリスクが高いと言えます。分野の専門家が長い期間をかけて科学的に十分な検討を行った上で決定した案に対して、素人が精緻な科学的根拠もなく反対し、公共の電波を使って稚拙な案をプロパガンダする行為は社会にとって本当に迷惑です。

データはきちんと開示されている

松尾貴史氏:処理水であって汚染水ではない科学的に大丈夫だというお墨付きを盾のように出されても、今までえらい人達は科学的とか学術的とか言うことに関して敬意を払ってこなくて、軽視して、ないがしろにしてきたところが凄くあるのに、こういうときだけ科学的というので木で鼻を括ったみたいな感じで放出を一方的に決められてもと思うのは私だけか。
こういう資質の大臣がその座にいることが、政権がどこまで軽視しているのかということの表れだ。それによって漁業関係者や現場の人達が翻弄されてしまうのは凄く空しい。

この一連の言説は、完全に事実に反する常軌を逸したものです。

科学に敬意を払わず、軽視して、ないがしろにして、感情にのみ訴えているのは、処理水放出に反対する一部のマスメディア・野党・活動家・SNSインフルエンサー等であり、彼らこそが「汚染水放出デマ」をまき散らし、漁業関係者や現場の人達を翻弄してきた元凶です。

言葉を言い間違えた大臣の資質を問題視するなら、公共の電波を使って「汚染水放出デマ」を確信的に拡散している『サンデーモーニング』は放送終了し、TBSの放送免許を取り消すのが妥当です。

松原耕二氏:中国があれほど危険を煽るのが科学的だとは全然思わない。ただ、普通の原発が海に流しているものと処理水は全く違う水だ。普通の原発が流す水はトリチウムだけが入っている。今の処理水は燃料デブリに直接あたっているので、トリチウムだけでなく、セシウムとかストロンチウムとかいろんな放射性物質が入っている。これは明らかに違う。
日本はそちらに意識がいかないようにトリチウム、トリチウムへもって行くように見える。やっぱり、他の放射性物質についても安全なら安全だと積極的に説明してデータを開示することがやっぱり信頼に繋がる。

デブリに触れた汚染水にはセシウムやトリチウム等の放射性物質が混入しますが、これらはALPSによって告示濃度未満まで除去され、人体に安全なALPS処理水となります。この段階において、人体への安全性を保障する環境基準をクリアするという観点で、福島第一原発の処理水は、普通の原発が流す処理水とまったく同一になります。

この処理水を海水で十分に薄めた混合水を海洋に放出し、莫大な水量の海洋がこの混合水をさらに薄めるのです。間違えてはならないのは、この一連の工程は最後の一滴を放出するまでIAEAによって厳密に監視され、そのモニタリング・データは東京電力の[専用webサイト]で逐次公開されています。

測定・確認用設備の状況 | 東京電力

松原氏のコメントは、政府や東電が積極的に行っている丁寧な説明や透明なデータ開示の存在を「ないもの」であるかのようにミスリードするものであり、国民に不必要な不安を与えるものです。

そもそも、福島で海洋放出されるALPS処理水の年間被曝量は0.0000018~0.0000207mSvであり、日本人が自然界から受けている年間被曝量2.1mSvの百万分の一~十万分の一です。常識的に考えれば、処理水の海洋放出は、健康被害が発生する可能性はほぼゼロに等しいと言えます。

日本国民はもうテレビを信頼するのをやめましょう。彼らは、処理水放出事案では「ないもの」を「あるもの」のようにでっち上げ、ジャニーズ性加害問題では「あったこと」を「なかったこと」のように隠蔽しました。彼らは国民を完全にバカにして騙しているのです。

藤原かずえ | Hanadaプラス

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