刺しゅうでここまで!? 豪華で可憐な作品に「とんでもないクオリティ」「素敵すぎてため息出ちゃう…」

自ら考案した「オフフープ(R)技法」で“立体刺しゅう”や“いとまき花”などの作品を作っている日本フェルタート協会の代表理事をされているPieniSieni(@kippermum)さん。

いとまき花は、針を使わずワイヤーと厚紙に刺しゅう糸を巻くだけで作る作品です。ブローチやヘアゴムなどにアレンジでき、お裁縫が苦手な人も工作感覚で作ることができます。

PieniSieniさんはX(Twitter)上にさまざまな作品を投稿しており、その作品の繊細な美しさは、「とんでもないクオリティ」「素敵すぎてため息出ちゃう…」などと多くの人に驚きと感動を与えています。
素敵な作品の作者であるPieniSieniさんにお話を伺いました。

ー一つの作品にかかる時間はどのくらいでしょうか?
小型の根付き植物、ブローチなどは3~4日。大型のキノコ、海の風景、食虫植物などは5~15日かかります。
モチーフの形状や難易度、背景の作り込みの量、使用する素材の色数などで時間に幅が出ます。また新規モチーフを取り入れるなど試作が必要となる場合はさらに時間が増える傾向にあります。

ーひとつの作品で使う糸は大体何色ほど使われているのでしょうか?
小型の根付き植物、ブローチは15~30色程度。大型のキノコ、海の風景、食虫植物などは30色~50色程度使って作っています。
グラデーションのかけ方やデザイン(模様が複雑だと色数は多くなります)により大きく変動します。主に25番刺繍糸を使用しておりますが、場合によってはモール糸、起毛糸、ネップ糸、ループヤーンなども使用して質感が単調にならないようにしています。

立体刺繍の妖艶なケシ(@kippermumさんより提供)

ー立体刺しゅう作品の難しいところやこだわりを教えてください。
制作効率を考えてブローチなどの小作品で同じ作品を制作することはありますが、基本的に同じ作品を複数個作ることはありません。
もちろん時間をあけて同じモチーフを再制作することもあるのですが、それは何かしらの課題(新しい組み立て方、素材、刺繍方法、デザインなど)が出た時です。 私にとって「同じ作品を複数作る=同じ問題を何度も解く」という感覚で、同じタイプの問題を解くなら数値や出題形式が違うものに取り組みたいという考えが強いからです。

そして難しい課題に直面すると俄然やる気が出ますし、何年もかけてそれを攻略することに喜びを感じます。
このように私は技術、素材、モチーフなど新しいことに挑戦するのが大好きです。 また作品で占める割合が多いので立体刺繍と謳っておりますが、伝統的な技術に敬意をはらいつつも刺繍だけにこだわらず「針と糸だけで作るのが正しい」などの既成概念にもとらわれないようにしています。
同様に素材についても作品の表現力が上がるのであれば金属線や石膏、オーガンジー、紙なども積極的に取り入れます。新しいことを発見したり技術を習得するのは貯金が増える感覚に似ています。作家として技術という財産をコツコツ積み上げるのが楽しいのです。
ただ逆にこれには私の最大の欠点でもあります。2~3日かけて試作したパーツがボツになることも珍しくなく、結果的に作業効率がとても悪くなります。ですが、これが私の自然な制作スタイルですし、それをあえて変えようとも思っていません。

立体刺繍のグラデーション(@kippermumさんより提供)

ーPieniSieniさんの作品は植物モチーフのものが多いですが、デザインはどのように決めているのですか?
主に図鑑や写真集を見て心が動いたモチーフを制作します。植物に限らず、そのほかのモチーフ(昆虫、海の生き物など)についても同じです。なので本が増えて困ります。
モチーフが決まったら細部の情報をネットで検索して調べながら背景モチーフなどを決めてゆきます。全体デザインはキッチリ決めることはあまり無く、ある程度パーツを制作してからバランスを見ながら配置・組み立てをしています。

いとまき花のウェディング用のヘッドドレス(@kippermumさんより提供)

ーお花だと根っこまで再現されている作品も多いなと感じました!根っこまで再現されているのは何か特別な意味があるのでしょうか?
普段はあまり見る機会のない根を見せることにより植物標本的な要素が出ますし、水や栄養を取り込むイメージがあるので生命力も表現できます。何より植物によって根にも個性があるのが面白いと思っています。
ここでも問題になるのはまたもや作業効率で、根を魅力的に制作しようと思うと手間と時間がかかります。もちろん簡単・時短で制作する方法もあるのですが、それですと単調な印象になってしまうのです。
ただ私は自分が「美しい」と思える作品を制作したいので、ここでも作業効率よりも完成度を求めてしまいます。

根付きの花たち(@kippermumさんより提供)

ーPieniSieniさんはすべておひとりで作品を作られているのでしょうか?
すべて一人で制作しております。
普段は大雑把な性格なのですが、作品においては自分一人で納得できるまで細部を作り込みたいタイプです。同じ理由により市販のパーツをそのまま作品に取り込むことも苦手で、苔を糸から表現するなど極力シンプルな素材に手を加えてパーツを制作しています。

立体の花と蝶々(@kippermumさんより提供)

ー今後どのような作品を作っていく予定ですか?
今までは花や昆虫を中心とした作品が多かったのですが、最近は水中の生き物も積極的に制作しております。少しずつモチーフを増やして、いつか陸上と水中を一緒に表現するなど広い視点の情景作品に取り組みたいと考えています。

作品に対するこだわりが感じられました。そのこだわりが作品の繊細さを生み出すのですね。現在制作されているという水中の生き物の作品も楽しみですね。

9月5日に新刊「Flower Journey フェルトの花で世界旅行」が発売予定(@Boutique_shaさんより提供)

PieniSieniさんが出版される本には、フェルトの花の作り方が掲載されています。細かな工程が写真付きで説明されているので、新しい趣味として始めてみませんか?

ほ・とせなNEWS編集部

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