もし我が子が【不登校】になったら?大反響の実録コミックエッセイ「学校に行かない君が教えてくれたこと」著者インタビュー

「学校に行かない君が教えてくれたこと 親子で不登校の鎧を脱ぐまで」(はちみつコミックエッセイ)

優しくて感受性豊かな長男「もっちん」、マイペースで愛嬌抜群の次男「ずんくん」、ロジカルで冷静な夫との毎日をブログやインスタグラムで発信して人気の今じんこさん。小学生の「もっちん」が不登校になり、悩んで迷って試行錯誤する日々を描いた実録コミックエッセイ「学校に行かない君が教えてくれたこと 親子で不登校の鎧を脱ぐまで 」が大きな反響を呼んでいます。

世間だけでなく自分自身の「不登校」への偏見に気づいたり、学校に行ってくれない我が子にイライラして強い言葉をぶつけてしまったり……親なら誰もが気づかないままフタをしておきたくなるような負の感情まで赤裸々に描いていて、子供が不登校でもそうでなくても、日々子育ての正解に迷う親はきっと胸に響くことがある内容になっています。

今回、コミックエッセイの著者である今じんこさんにインタビュー。書籍の反響や子どもとの向き合い方、育児中に煮詰まったときのリフレッシュ方法など、さまざまなお話を伺いました。

不登校の子どもと向き合う毎日を赤裸々に描いたコミックエッセイ

――最初に、子どもの不登校について描こうと思ったきっかけはありますか?

今じんこさん(以下敬称略):SNSでの絵日記発信はもっちんが3歳の時から続けています。不登校については、小学校に入学してからもっちんの行き渋りに悩んでいたので、フォロワーさんたちに相談するつもりで自然に描き始めました。

――SNSで掲載した際も反響はあったかと思いますが、今回の書籍化で改めて、どのような反響がありましたでしょうか。新たな気づきや印象深い読者からのコメントなどありましたら教えてください。

今じんこ:書籍は編集者の力を借りているのでSNSでの絵日記とはまったく別物になっているし、より深くより広く伝わっているのを感じています。

「この本をたくさんの方に読んでもらいたい!」と言ってくださる読者さんが、担任の先生、校長先生、スクールカウンセラー、フリースクール、児童精神科、教育センターなどに寄贈してくださる動きがたくさん起きていて、本だとこんな広まり方ができるんだと感動しました。

SNS発信のときは、保護者さんや学校関係者の方から不登校についての質問をいただくことが多かったのですが、本を読んでくださった方々の中には「自分がどうしたらいいのかをこの本で考えることができました」と、自分なりに考えてくださる方が多いことがとても印象的です。

私が答えを与えるのではなく、読者さんがそれぞれ考えるきっかけになるような一冊を目指して書いたので、すごくうれしい反応です。

――「不登校に偏見はないと思っていたけど、実際にそうなったらテンパりまくりの荒ぶりまくり」と冒頭にもありましたが、我が子が不登校になってみて気づいた自分の中の偏見や思い込みなどは、どのようなものがあったと思いますか?

今じんこ:偏見は「持っている側」は自覚を持ちにくく、偏見を「持たれている側」は相手のちょっとした言葉の端々から簡単に見抜きます。

自分の過去の行動や言動をいま振り返ると、偏見や思い込みの部分が分かりすぎて赤面と反省でしんどいです 。過去の自分の顔面をグーパンしたい衝動にかられます …。その偏見や思い込みを脱ぐまでの変化を一冊にぎゅうぎゅうに詰め込んでいるので、多すぎてここで簡潔には言えません。

我が子の不登校は、自分も今まで自覚なく多くの人を傷つけてきたのだろうなと省みるきっかけになりました。これは私だけでなく、学校に行かないお子さんを持つ保護者さんたちからもよく聞く話です。

――「学校に行きたくない」と言うもっちんくんを、最初はなだめすかしながら行かせたりと試行錯誤されていましたよね。「不登校の鎧を脱いだ」今、改めて、最初の段階でどう行動するのがよかったと思いますか?

今じんこ:あれこれ理由を探らないで、「わかった」と言って休ませればよかった。自分の都合ではなく子どもの心の声に耳を傾ければよかった。休んだら休み癖がつくんじゃなくて、休むことができるから長い人生を走れるのだと過去の自分に教えたいです。

私も自分の限界を見失い鬱病になったから痛感しますが、休むことが苦手で立ち止まれない人は多くて、大人も子どもも精神疾患が増えているのではないかと思います。

――日本の義務教育が不登校の子供を生み出している側面もあるのかなと思いますが、学校はもっとこうなったらいいのに、と思うところはありますか?

今じんこ:仕組みから変える必要がある部分は多いと思うので、大人一人一人の意識ですぐにできることを挙げるなら、親も教師も学校が担う役割を重く考えないこと。親は子どもの教育や居場所として学校に依存しないこと。

学校や先生の重圧や責任が減ることが、子どもたちの楽しい学校生活に反映されると思います。

――不登校になり、もっちんくん本来のよさが伸びる環境になって改めて気づいたもっちんくんの長所、よさはどんなところだと感じていますか。

今じんこ:自分を大切にできるところ。自分と違う人のことも否定しないところ。

学校に行っていた時期は抑圧されていたので、自分にも他人にも厳しかったんです。安心できる環境で自分を受け入れられるようになってからのもっちんはとっても穏やかです。

――お仕事をしながら手探りのホームスクールは大変な面もあったと思います。具体的にどういったことをして、どういう形でもっちんくんに寄り添っていたのでしょうか?

今じんこ:「学校に行かないならこういうふうに過ごさなければいけない」と当事者に思わせてしまうこともあるから、あまり細かく語りたくないのが正直な気持ちです。学校には学校の正解があるように、行かないなら行かない過ごし方の正解をつい探してしまうのは、当事者にはよくあることなので。

我が家の場合という大前提ですが、私は手取り足取り学習に付き合える親ではないし 、もっちんもそれを望んでいません。現在は不登校でもICT教材での家庭学習で出席になる制度を利用し、本人に任せて本人のペースで学習しています。
私は必要以上に口出し手出ししませんが、興味を持つモノ、人、場所に触れる機会はできる範囲で作っています。

「こんなにしてあげてるのに!」という気持ちが出たらもうアウトなので、母親としての義務感や忍耐でやるのではなく、子どもと楽しむことを大事にしています。「大変そう」と感じる方もいるかもしれませんが、それこそ思い込みかもしれません。学校とは別の楽しさがありますよ!

――巻末の、「不登校の子を持つ親御さん300人の本音」で「当事者以外に知ってほしいこと」という質問がありましたが、じんこさん自身は何か思うところはありますか?

今じんこ:「死ぬくらいなら学校に行かなくてもいいよ」という大人は多いけど、死が見えてくるギリギリまで「不登校を大人が認めない」ことの暴力を知ってほしい。

そこまで追い詰められて苦しんでいる子どもの多さや、深く傷つき苦しんでからだと回復に何年もかかることを知ってほしい。

子どもたちの自殺が年々増えている異常さを知ってほしい。

そもそも学校は死と天秤にかけるモノではないと知ってほしい。

たくさん思うことはありますが、一番に伝える必要を感じているのはそこです。

――じんこさんなりの育児中の息の抜き方やリフレッシュ法などあれば、伺いたいです。

今じんこ:疲れているときは、無言で不機嫌な態度を取るくらいなら「今少し調子が悪いから休ませて」と家族に宣言してだらだらします。漫画やゲームやドラマを機嫌よく楽しんでる母を見るのは子どもたちもうれしいみたいです。

子どもを尊重するなら自分が犠牲になるしかないと無自覚に思っていましたが、子どもを尊重することと自分を尊重することは両立できることを今は知りました。

――子どもの不登校や行き渋りに悩んだり、子育てに悩んで閉そく感を感じている親御さんたちにメッセージをお願いします。

今じんこ:私から偉そうに言えることは何もないですが、本を読んでくださった方から「肩の力が抜けた」と言っていただけることが多いので、ぜひお手に取ってもらえるとうれしいです。

本書では、親子で「これでいいんだ」とストンと腹落ちして心から笑って“学校に行かない”日々を過ごせるようになるまでの長い日々を、本当に丁寧に漫画化しています。

子どもの不登校や行き渋りで悩む方はもちろん、正解のない育児で子どもへの寄り添い方に迷う方も、きっと共感したり励まされたりするはず。「学校がしんどい」と悩む親子がいなくなる未来への願いを込めた一冊を、ぜひ読んでみてくださいね。

(ハピママ*/ Mami Azuma)

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