<社説>設計変更敗訴確定 沖縄の不条理を直視せよ

 2000年施行の地方分権一括法による地方分権改革の意義は失われてしまったのか。辺野古新基地建設の設計変更申請に対する玉城デニー知事の不承認に対する国交相の「是正の指示」取り消しを求めた訴訟で、最高裁は県の主張を退け、県敗訴が確定した。沖縄の基地集中を考慮しない形式的判断に終わった。 今年3月の福岡高裁那覇支部の判決では、行政不服審査法に基づく「裁決」と、地方自治法に基づく「是正の指示」は法的に別とした上で、裁決は「国の関与」に当たらず訴え自体が不適法として却下判決を下した。

 是正の指示については、災害防止や環境保全などについて、県の不承認には裁量権の逸脱または乱用があるとして棄却した。県は上告し、裁決に関して最高裁は不受理とし、8月に県敗訴が確定していた。今回、是正の指示に関して判断が示された。

 公有水面埋立法に関する知事の処分は法定受託事務である。最高裁判決は、法定受託事務を巡って国が知事の処分を取り消す裁決をした場合、「知事は裁決の趣旨に従って処分をすべき義務を負うべきである」と述べ、地方自治法違反だとした。「仮に知事が処分と同一の理由に基づいて処分をしないことが許されるとすれば、処分の相手方が不安定な状態に置かれ、紛争の迅速な解決が困難となる事態が生ずる」とも述べた。

 これでは、国と対立した場合、自治体は国に従うしかないということになる。玉城知事が「地方公共団体の自主性や自立性、ひいては憲法が定める地方自治の本旨をないがしろにしかねない」と批判するのは当然である。

 地方分権一括法で「機関委任事務」が「法定受託事務」に改められ「包括的な国の指揮監督権」が廃止された。「国の関与は必要最小限のものとし、地方公共団体の自主性・自立性に配慮したものでなければならない」との基本原則が明文化された。判決は地方分権改革に逆行する。

 このような事態は全国で起こり得る。玉城知事は全国知事会で、法定受託事務で知事が行った処分を国が裁決で取り消すことができる制度の見直しを主張してきた。行政不服審査法や地方自治法の見直し案も示している。知事会の真剣な取り組みを求めたい。

 敗訴が確定しても知事が承認しない場合、政府は代執行訴訟を起こす方針という。1995年に大田昌秀知事が国に提訴された代理署名訴訟と同じ構図だ。大法廷で審理され、96年8月の判決は、15人全員一致で「代理署名拒否は公益侵害」とし知事が敗訴した。7人の裁判官が補足意見で司法権の限界に言及し、6人が沖縄の基地負担集中への対応を求めた。

 代理署名訴訟判決から27年たっても、基地集中は変わらず、さらに新基地建設が強引に進められている。司法はこの不条理を直視すべきだ。

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