2023年上半期の検挙件数「7441件」  外国人の「犯罪増」で見落としてはいけない“問題意識”

国内随一の繁華街・歌舞伎町では外国人の警備員も増えているという(撮影:弁護士JP編集部)

出入国在留管理庁によれば、2022年末の在留外国人数は307万5213人(前年末比11.4%増)と過去最高を更新し、初めて300万人台となった。

そんな中、7月にトルコ国籍の男ら約100人が埼玉・川口の病院で乱闘騒ぎを起こした事件など、「外国人による犯罪」を見聞きする機会が増えたように感じている人も少なくないのではないだろうか。

外国人の検挙件数は増加

警察庁が公表した2023年上半期(1〜6月分)の犯罪統計によれば、来日外国人(※1)による刑法犯・特別法犯罪の検挙件数は7441件で、前年同時期に比べて389件の増加となった。

※1 我が国にいる外国人のうち、いわゆる定着居住者(永住権を有する者等)、在日米軍関係者及び在留資格不明の者以外の者をいう。

都道府県別に見ると、東京を筆頭に人口の多い都道府県で検挙件数も多い傾向だ。

都道府県別の刑法犯・特別法犯の検挙件数(警察庁の統計をもとに弁護士JP編集部が作成)

重要犯罪でもっとも多いのは「侵入盗」

重要犯罪・重要窃盗犯(※2)に限定して統計を見ると、検挙人員は279人で、前年同時期に比べて22人の増加となった。重要犯罪・重要窃盗犯の罪種でもっとも多いのは侵入盗で90人、次いで強制わいせつ57人、強盗48人だった。

※2 治安情勢の観察をする際に、その指標となる犯罪。「重要犯罪」は殺人、強盗、放火、強制性交等、略取誘拐・人身売買、強制わいせつ、「重要窃盗犯」は侵入盗、自動車盗、ひったくり、すり

重要犯罪・重要窃盗犯の罪種別検挙人員数(警察庁の統計をもとに弁護士JP編集部が作成)

重要犯罪・重要窃盗犯の検挙人員を国籍別に見ると、ベトナムがもっとも多く86人、次いで中国(台湾、香港等を含む)38人、ブラジル21人だった。

国籍別の重要犯罪・重要窃盗犯の検挙人員数(警察庁の統計をもとに弁護士JP編集部が作成)

犯罪統計では除外されている「永住者」なども含まれているため一概には言えないものの、検挙人員が多い国は、そもそも在留者の人数も多い傾向にあることは触れておきたい。

犯罪に走る“外国人”とは

来日後、犯罪に走ってしまう外国人とはどのような人たちなのだろうか。警察庁の犯罪統計からは読み取ることができないが、法務省が公表している「令和4年版 犯罪白書」を参照すると、在留資格別の検挙人員では「定住者」「技能実習」「留学」などが多くなっている(※3)。

正規滞在の来日外国人による刑法犯検挙人員等(在留資格別、罪種別。「令和4年版 犯罪白書」をもとに弁護士JP編集部が作成)

※3 「凶悪犯」は、殺人、強盗、放火及び強制性交等、「粗暴犯」は、暴行、傷害、脅迫、恐喝及び凶器準備集合、「窃盗犯」は、窃盗、「知能犯」は、詐欺、横領(遺失物等横領を除く。)、偽造、汚職、背任及び公職にある者等のあっせん行為による利得等の処罰に関する法律(平成12年法律第130号)に規定する罪、「風俗犯」は、賭博及びわいせつ、「その他の刑法犯」は、公務執行妨害、住居侵入、逮捕監禁、器物損壊及び遺失物等横領等前記に掲げるもの以外をいう。

これについて、英語や中国語による外国人案件対応も多い佐々木智仁弁護士は以下のように指摘する。

「前出の犯罪白書の在留者数に占める検挙人員を見ても、大前提として、日本にいる外国人の大半は問題なく生活をしています。

その中で犯罪に走ってしまう動機は人それぞれですが、『外国人だから』という理由ではひとくくりにはできません。技能実習生が行き場を失って、犯罪にかかわってしまうということもあれば、目先の利益や稼ぎのために安易に犯罪に手を出してしまうという人もいます。その点では日本人が犯罪に手を出してしまうのと共通する部分もあると思います。

一方で、外国人が日本になじめず、孤立してしまっていることが犯罪に手を染めてしまう背景となったり、知識不足ゆえに、犯罪と分からずに犯罪にかかわって検挙されるということもあります。いわゆる『闇バイト』にもそれが犯罪と分からず、安易に足を踏み入れてしまうこともあるでしょう。

また、たとえば同じ万引きでも日本人による事件なら埋もれがちな一方、『外国人が起こした』となれば、強く人々の印象に残りやすいかと思います。

特に、最近では技能実習生に関連する事件が注目されていますが、前出の犯罪白書によると、在留者数に占める検挙人員の割合がもっとも低いのはむしろ『技能実習』の在留資格です。

『外国人の犯罪』という観点から問題をとらえることはもちろん重要ですが、無意識に外国人へ偏見を助長するようなことになっていないかは十分に注意が必要です。実際、見た目が『外国人』であるからといって、不必要に職務質問を受けるというような事案もいまだに存在します。

『外国人だから』という安易な図式からより一歩踏み入れて、犯罪の背後にある要因をより深く検討する必要があるのだと思います」(佐々木弁護士)

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