「著しく適さない」と知事意見 風力発電、和歌山県印南・日高川で東急不動産が計画

風力発電機の設置予定箇所

 和歌山県は、「東急不動産」(東京都)が印南町と日高川町の山間部に検討している風力発電事業の「方法書」に対して、8月23日付で「規模の大きな風力発電事業には著しく適さない場所と考えられる」との「知事意見」を経済産業相に提出した。

 最大22基(最大9万4600キロワット)の風力発電施設を設置する計画。「知事意見」では、計画地や周辺には、国や県の指定天然記念物など貴重な動物が生息する可能性があること、近くの「川又観音社寺林」は県自然環境保全地域に指定していること、住民の日常生活や歴史の持続性に非常に重要な場所であることなどを指摘。さらに、尾根筋の幅が狭く、谷筋への傾斜が急であること、山地災害危険地区があることから「大型風力発電設備などの設置に向けての土地の改変、移動には、慎重に対応しても至難な地域」とした。

 その上で、重大な環境影響を回避したり十分に低減したりできないときは計画全体を見直し、それでも改善できなければ「事業の廃止を検討すること」を求めた。

 この計画については、地元住民団体が8月、内容がずさんだとし、県に対し、事業者に中止や改善を求めるよう要望していた。

■洋上風力発電は「慎重、丁寧な生物調査を」

 一方、関西電力(大阪市)などが美浜町から白浜町の沖に検討している洋上風力発電事業に関連しは、県は生物の調査事例が少なく不明な点が多いとして、慎重かつ丁寧に調査や予測、評価をし、環境保全措置を検討することが重要とする「知事意見」を事業者に提出した。

 事業は関電と、ドイツの大手電力会社の子会社「RWE リニューアブル・ジャパン」(東京都)が検討。発電設備を50~110基設置し、原子力発電所1基分に相当する最大100万キロワットの発電を目指す。

 事業者は6月に、環境への影響を評価する最初の手続きである「配慮書」を県などに提出した。県は専門家による「環境影響評価審査会」を3回開催。県はこの議論などを基に8月29日付で「知事意見」を業者に提出した。

 「知事意見」では、発電設備の存在や工事中、供用中の海生生物への影響は十分に解明されておらず、底生生物の生息状況もほとんど調査されていないと指摘し、専門家の助言を踏まえた調査や予測、評価の実施を要望した。

 景観に関しては、その影響を検討した際に用いた基準について「凹凸が一切ない水平線において適用すべき参照値ではない」とし、円月島や千畳敷、三段壁、天神崎、日ノ御埼灯台など主要な眺望点からも調べるよう促した。

 事業者は国や住民などの意見も踏まえ、次の段階の「方法書」作成に進むことになる。

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