<社説>FIBA・W杯の成功 バスケ熱が大会支えた

 FIBA(国際バスケットボール連盟)のワールドカップ(W杯)2023は沖縄での全日程を終えた。男子日本代表は目標に掲げたアジア最上位を達成し、来年のパリ五輪出場権を獲得。大躍進を遂げて自国開催に花を添えた。沖縄ラウンドは大成功だった。 日本とフィリピン、インドネシアの共催で、国内は沖縄市の沖縄アリーナが唯一の会場だった。大きなトラブルはなく全日程を消化できた。2006年に前身大会の世界選手権を開催して以来の国内開催で、組織委員会、日本協会、県や自治体による開催地支援協議会の関係者の労を多としたい。

 特筆すべきは日本代表の活躍だろう。東京五輪銀メダルの女子代表を率いたトム・ホーバス監督の下、メンバーが「世界一」と振り返る猛練習で高確率の3点シュートと運動量を鍛え抜いた。

 その成果は如実に表れた。第2戦でフィンランドに98―88で逆転勝ちし、6度目の出場で欧州勢から歴史的な初白星となった。2次リーグ進出は成らなかったが、順位決定リーグでベネズエラとカボベルデに連勝し、アジア最上位を確定させた。通算3勝2敗で19位。前回31位から大きく順位を上げた。自力での五輪出場は1976年モントリオール大会以来、48年ぶり。

 選手それぞれが自分を信じ、互いを信じて、リードされる展開から逆転に持ち込む勝負強さが感動を呼んだ。これを沖縄アリーナの大歓声が後押しした。選手からは試合後、沖縄開催への感謝が聞かれた。その言葉に感じ入った県民も多いのではないか。国内随一の競技熱の高さで知られるバスケどころの面目躍如である。

 大会への機運が高まり、沖縄のバスケットボールの歴史にも注目が集まった。20世紀の初めに首里城で女子学生がプレーしていた可能性のあることが専門家の調べで判明し、本紙が報じた。本紙は競技の導入から普及発展に携わった指導者や選手の系譜も連載でまとめた。関係者らの情熱が結実し、全国屈指の競技人口の多さを誇るなど、人気につながった。W杯は沖縄に根付くバスケ熱の高さとスポーツの層の厚さに気付かせてくれるきっかけにもなった。

 延べ4200人のボランティアが大会運営を支え、小中学生ら約1万人が観戦した。沖縄の子どもたちが世界最高峰のプレーに触れることができた。

 3カ国共催の分散開催が順調に進み、10日のフィリピンでの決勝に向けて順調に運営されていることも大きい。国内1会場でこれだけの成果を残したことは、他競技の国際大会の誘致に向けたモデルケースとなろう。

 日本協会は大会の経済効果が県全体で約63億円、沖縄市で約4億7千万円と試算した。実際の効果はどれほどだったのか分析し、今後に生かしてもらいたい。

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