【コラム】ギャンブル化の進展は、業界をさらに縮小?(WEB版)/チャーリー・ロドリゲス・湯谷

1. 今「遊技機の射幸を上げる」ことは、ユーザーを減らすだけ
過去、業界は「規制と緩和の繰り返し」でここまで大きな市場へと成長してきました。そしてコロナ明けの令和の今、再び市場縮小の局面を「スマート遊技機=規制の緩和(内規緩和)」で打破しようと進んでいるところです。

ところが、パチンコユーザーの離反に見られるように「庶民の大衆娯楽」としてのパチンコ・スロットというイメージは社会から消え、今では「高価な時間潰し」「めったに遊ぶことのできないギャンブル」へと変容しています。簡単に述べれば、社会の状況と業界の取り組みに「ギャップ」が生まれていて、思うようにニーズと合致しないから、ユーザーは増えず市場が小さくなっている、ということです。

本来であれば「社会に合わせる方」がパチンコ業界であって、勝手に社会が業界に「合わせてくれる」ものではありません。既に「時間潰し」や「身近で安く遊べる」といった要素のないパチンコ・スロットに残されたものは「ギャンブルのツール」としてのポジションしかなく、エンタメ性を求めて遊技する人も皆無です。今後、社会の状況を無視し、さらに遊技機のギャンブル化を進めれば、もっとユーザーの参加率は減少し縮小していくことでしょう。そして、その危険性について以前より十分に認識があるにも関わらず、何もせず、何も決めず、未だに様子をうかがうだけのお店は、採用できる「戦略の幅」がますます狭くなるだけ、と推測します。

2. まず、ターゲットを絞り込むことから
結局、縮小する業界の中で資金力のないホールが生き残りをかける策は「ニッチ(隙間)市場を狙う」以外にありません。その為にも、ターゲットの絞り込みは必要不可欠で、どんなお客様をターゲットにして「将来、価値提供するのか?」を検討するべきです。

この「価値提供」が、例えギャンブルや新機種・遊技空間であっても、他店との差異化が困難でビジネスとしては、まだまだリスク回避できるような有効な作戦ではありません。前述通り、ターゲットを絞ってニッチ市場で一番になる必要がありますし、同時に経営資源を分散せずに集中投下できて効果も期待できるというものです。

大きく言えばコンセプトの変更ですし戦略の方向転換です。以前から述べていますが、お客様はパチンコ店が少なくなっても困りませんし、遊ぶ場所がなくなれば、止めるか、他のお店で遊べばいいだけです。残酷な言い回しですが、常にお店は「お客様から選んでもらう立場」であって、より「お客様のこと」を知り、店舗運営していかないと、ある日突然、お客様がいなくなる、そんなリスクもあるでしょう。

3. 何も動かなければ、後退するだけ
では今後数年、従来と変わらず「新台入替」を中心に設備投資を進め、ヒット機の登場を待つだけで自店の成長は実現できるものなのでしょうか?

今後は、ネット社会の進展で、ホールも即座にユーザーから評価されますし、口コミによる集客の影響もますます大きくなります。ホールのほとんどが競争しているステージは非常に残酷で、ギャンブル好きなヘビーユーザーの取り合いなので、利益優先の営業ではすぐに業績も落ちます。そして一度、稼働が下がると再び稼働を戻すのに時間とお金がかかるのも証明済みです。ここから先の作戦のベースは、まさに「地域マーケティング」が根拠でなければなりませんが、改めて「主要ターゲットにどんな価値提供をするか?」が大変重要になっていきます。

4. ただ「頑張る」のではなく、どの方向を向いて「頑張っていく」のか?
「前後裁断」という言葉があります。これは「過去をくよくよ引きずっても何も変わらず、未来を憂いても取り越し苦労になるだけ」という意味で、今、この時を生きよ、という戒めの言葉なのですが、まさに今の業界の状況と合致していて、「この瞬間、どれだけ頑張れるか?」ということがとても大事なように感じます。しかし「ただ頑張る」「努力する」では差別化はできず、必ずしも成長の足跡を辿れるとは言えません。

ここは昔を知り、未来を予測し、現状を把握・分析した上で、「どの方向性で頑張るか?」ということが大変重要と考えます。残念ながら、今の業界に明るい展望や光はほぼ見えませんが、未来を憂いてばかりでも何も起こらないので、ここはしっかりと現状分析し、近未来を予測した上で会社や個人が努力を続ける「方向」を決めて、邁進してもらいたいものです。

■プロフィール
チャーリー・ロドリゲス・湯谷
自称パチンコ・パチスロ伝道師。この立ち位置を20年近く続けているロートル業界ウォッチャー。特技はスプーン投げ。今ではスプーンも曲げられない程、筋力低下。「意見待つ!」と言い続けて、20年。他人の意見に未だ弱く、老化は続くか、パチンコやパチスロに賭ける情熱は衰えず!

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