【MLB】 バーランダーとシャーザー 世紀の投げ合いが明日実現

写真:初の投げ合いとなるバーランダーとシャーザー. ©Getty Images

ジャスティン・バーランダー対マックス・シャーザー、世紀の投げ合いがついに実現する。

お互い3度のサイ・ヤング賞受賞を誇り、2度チームメイトだったことがあるこの両雄が投げ合うのは初めてのことだ。

しかも、2人を取り巻くシチュエーションも初めての投げ合いにとって不足はない。

今シーズン、バーランダーのFA契約での加入によって、共に自らの全盛期の足がかりとなったタイガース時代以来、シャーザーとバーランダーは久々にメッツでチームメイトとなっていた。しかし、メッツは総年俸がメジャーダントツながら、プレーオフ争いからまさかの転落。共に個人タイトルのみならず、世界一の経験もある2人だったが、勝利を求めて再びトレード拒否権を破棄。チームメイトから一転、同地区ライバルの2球団に新天地を求め、再び敵として相まみえることになったのだ。

バーランダーとシャーザーは現役選手の中では他にクレイトン・カーショウしかいない3回のサイ・ヤング賞受賞者だが、2人が送ってきたキャリアは全く毛色が違う。

バーランダーは早熟だった。2004年のドラフト全体2位でタイガースに指名されてプロ入りすると、マイナーでわずか20先発しかしない内にメジャーデビュー。そして翌年には23歳にして17勝を挙げて新人王を獲得、24歳でオールスターに初選出されると、2011年には史上10人しかいないサイ・ヤング賞とMVPの同時受賞を達成した。

対するシャーザーは遅咲きだった。2006年ドラフト全体11位でダイヤモンドバックスに指名されてプロ入りすると、2008年にメジャーデビュー。そして2年後にカーティス・グランダーソンらが絡む三角トレードでタイガースに移籍となる。タイガースでの最初の3年間は持ち前の奪三振力こそ発揮していたものの、バーランダーの影に隠れてエースと呼ばれることはなかった。しかし、2013年に21勝を挙げてサイ・ヤング賞を獲得して大ブレイク。その年を皮切りに7年連続でオールスターに選ばれ、ナショナルズ移籍後には2016、17年には連続でサイ・ヤング賞を受賞するなど、球界のエースへと羽ばたいた。2019年にはリリーフ登板も厭わない熱投で、ナショナルズとそして自身にとっても初めての世界一に輝き、その後も優勝請負人としてドジャース、メッツと渡り歩いた。結果、シャーザーは当代一のクラッチピッチャーとしてその名を残している。

一方でバーランダーは2011年の初受賞から2度目の受賞まで、シャーザーと同じように順風満帆だったわけではない。2014年には自己ワーストに近い防御率4.54を記録するなど、そのキャリアは一時停滞した。しかし、2016年にサイ・ヤング賞投票2位に食い込むと、翌2017年途中のアストロズ移籍からその復活劇は加速。アストロズ得意の分析にも助けられて2017年に2度目のサイ・ヤング賞を獲得したのだ。しかし、アストロズのエースとして活躍を続ける最中の2020年、トミー・ジョン手術を受けることになってしまう。40歳近い年齢もあって復帰を危ぶむ声もあったが、復帰した2022年に防御率1.75という圧倒的なパフォーマンスで3度目のサイ・ヤング賞を受賞、2度目の復活を果たしている。

共に偉大、しかし毛色の違うキャリアを歩んできた2人は、投球の哲学も大きく異なるのだと言う。2人がメッツから移籍したときには不仲説も流れ、本人たちも緊張関係にあったことを認めているが、2人の偉大さが異質であることもそれに影響しているのだろう。

現在、レンジャーズはアストロズを2ゲーム差で追い、ア・リーグ西地区は熾烈な三つ巴の地区優勝争いの真っ只中にある。その中で実現するこの世紀の投げ合いは決して見逃せない。

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