小比類巻かほる「愛よ消えないで」は【シティーハンター】初代オープニングテーマ!  Kohhy… それはR&Bの先駆者のひとりでもあった!

魅力的な人物たちが登場する「シティーハンター」

9月8日から映画公開される『劇場版シティーハンター 天使の涙(エンジェルダスト)』。今さらアニメ『シティーハンター』について説明する必要もないだろう。もともとは1985年から1991年まで、週刊少年ジャンプで連載された北条司による人気漫画で、1987年にはアニメ化された。テレビ版だけでもシリーズは3作+スペシャル版、そしてその人気は現在まで至るのだからすごい。

無類の女好き、美女大好きの主人公・冴羽獠。裏の顔は硬派な悪と闘う凄腕スイーパー。獠の親友の妹・槇村香は獠の仕事のパートナーを務めているが、主な仕事は獠が依頼主にちょっかいを出すのを阻止することかも(?)。エッチな名台詞で依頼主に迫る獠を “100tハンマー” で殴り、天誅を加える必殺技を持つ。そんな2人を中心に、脇を固める個性的なキャラクターたちが絡み合い、物語が展開していく。コメディ的要素とシリアスな物語のバランスが最大の魅力なのかもしれない。ただし、前述した通り冴羽獠のエッチな名台詞に大人たちは眉を細め、「見せてもらえなかった」という当時の子供も一定数いた(笑)。

そして、『シティーハンター』のもう一つの魅力は、主題歌とエンディング曲にある。

EPICソニーのアーティストが勢揃い

『シティーハンター』の曲と聞いて、まず一番に思い出すのはやはり1作目のエンディング曲を飾ったTM NETWORKの「Get Wild」だろう。ではオープニング曲はどうだろう。個人的にはシリーズ1作目ということもあってKohhyこと小比類巻かほるの「City Hunter〜愛よ消えないで〜」が印象深い。シティーハンターの主題歌とエンディングテーマを担当したのは過去に岡村靖幸、大沢誉志幸、PSY・S、FENCE OF DEFENSE、小室哲哉、鈴木聖美などなど―― そう、これはすべてEPICソニーのアーティストたちだ。当時、いかにEPICソニーの力が絶大で、『シティーハンター』制作サイドとの絆が深かったか分かる。

R&Bの先駆者、歌姫 小比類巻かほる

1985年、シングル「Never Say Good-Bye」でデビューした小比類巻かほる。1987年には土屋昌巳プロデュースのサードアルバム『I'm Here』がオリコンチャートで1位を記録、一躍脚光を浴びることに。

筆者が初めて彼女の歌声を聴いたのは、1986年リリースの2枚目シングル「両手いっぱいのジョニー」、そして翌年の「Hold On Me」。この2曲を聴いて度肝を抜かれた。抜群のリズム感と圧巻の歌声。その歌声はとても力強くて、心の奥にずっしりと響いた。ショートカットでジャケットを着ていたボーイッシュな姿も印象的で、「こんなに揺るがない歌声があるのだろうか、なんてカッコイイんだろう!」と感動したことをよく覚えている。当時のKohhyにはカッコイイという言葉がぴったりだった。

ただ、当時はほとんど歌謡曲くらいしか知らなかった私のような少女にとって、Kohhyの音楽はとても斬新で大人に映った。今なら分かる、それがR&Bという音楽だったことを。当時、日本R&Bで一番に思い浮かぶのは、86年デビューの久保田利伸、そしてソロとなった鈴木雅之あたりではないだろうか。けれどここでよく考えてほしい。小比類巻かほるはそんな彼らのデビュー前にきら星のごとく音楽の舞台に登場し、堂々とR&Bを歌い上げていたのだ。いわば日本のR&Bの先駆者的存在といえる。

ただ、それでもジャンルなんて無関係にKohhyの歌声は多感な少女の心を鷲づかみにし、圧倒した。本当は音楽にジャンルなんて必要ないのかもしれない。心に届きさえすれば、それはもうどんなものだって素晴らしい音楽に変わりはないのだ。

小比類巻かほるの歌声は凜々しさと、その裏に漂う憂い

そして「City Hunter〜愛よ消えないで〜」が『シティーハンター』の主題歌としてお茶の間に流れたとき、映像と曲のシンクロがあまりに絶妙でPVかと思うほどのクオリティに驚いたものだ。その確かな歌声とポップなサウンド、カラフルな映像が相まって、今見てもオシャレで素晴らしい作品に仕上がっていると思う。

小比類巻かほるの歌声は凜々しさと、その裏に漂う “憂い” にあると思っている。だからこそ壮大なスケールの「I'm Here」は彼女の世界感にハマったし、「Hold On Me」でもメロディアスなせつなさを伝えられた。そしてこの「City Hunter〜愛よ消えないで〜」もまた、ポップな曲調にKohhyのせつない歌声がエッセンスとなって光っている。

この後、シティーハンターの主題歌はさまざまなアーティストへと引き継がれていくが、個人的にはこの「City Hunter〜愛よ消えないで〜」を聴くと今でも胸が熱くなる。ぜひ、もう一度改めてKohhyの歌声に酔いしれてほしい。

カタリベ: 村上あやの

アナタにおすすめのコラムアニメ史上最強!シティーハンターのエンディングは TM「Get Wild」で決まり!

▶ 小比類巻かほるのコラム一覧はこちら!

80年代の音楽エンターテインメントにまつわるオリジナルコラムを毎日配信! 誰もが無料で参加できるウェブサイト ▶Re:minder はこちらです!

© Reminder LLC