山田哲人の“ホームランボール騒動”から4カ月…批判殺到した男性の代理人が明かした「その後」

(写真:時事通信)

9月3日の阪神戦で山本大貴投手(27)が近本光司外野手(28)の右脇腹に死球を投じ、物議を醸したヤクルト。

近本は4日に打撲と診断され、東京駅で報道陣の取材に応じた岡田彰布監督(65)も安堵したようだ。だが岡田監督の怒りは収まらず、「シュートピッチャーやったら当ててええんか?」とヤクルト・高津臣吾監督(54)の釈明に憤っていたという。

今季は試合中のトラブルが取り沙汰されているヤクルトだが、5月に世間の関心を集めた山田哲人内野手(31)の“ホームランボール騒動”を覚えているだろうか。

事件が起きたのは、5月2日に東京ドームで行われた巨人戦の6回表で、山田がレフトスタンドにホームランを放った直後のこと。ボールの落下地点付近にいた少年の元に、ヤクルトのユニフォームを着た男性が2席横から入り込み、少年からボールを取り上げたかのように見える光景が中継に収められていたのだ。

一連の様子を収めた動画は瞬く間にSNSで拡散し、“少年からボールを奪った”と男性に批判が殺到。さらに批判の域を超えるような誹謗中傷も散見され、男性の個人情報を特定する動きにまで発展したのだった。

このような事態を受けて、5月8日に東京弁護士会に所属する中川素充弁護士がTwitter(現X)で男性の代理人に就任したと報告。中川氏が発表した声明では、男性への疑惑について次のように否定していた。

《「もっちー」氏(編集部注:当時の男性のTwitterアカウント名)がホームランボールを手でキャッチしようとしたところ、同氏の手にあたりボールがバウンドし、手すりに当たり、さらにバウンドしたところを最終的に「もっちー」氏がキャッチしたのです。このことは、添付した動画をご覧頂ければお分かりいただけると思います。したがって、決して「もっちー」氏が少年のキャッチしたボールを奪い取ったという事実はありません》

さらに中川氏は、《今回のことで看過できないのは、「もっちー」氏の実名・顔写真を挙げたり、さらには居住地、親族の写真をも晒したりしたSNS,ブログなどがあり、これらが広く拡散されていることです》と指摘。誹謗中傷などの投稿に対して、法的措置の検討も表明していた。

■男性の代理人が語る現状「発信者情報開示の手続を裁判所に対して行なっている」

騒動からまもなく4カ月経つが、男性はどうしているだろうか? 本誌は中川氏に現在の状況を聞いた(以下、カッコ内は中川氏)。

まず中川氏によれば、「男性が少年のキャッチしたボールを奪い取ったという事実はない」という主張に「変わっておりません」とのこと。

いっぽう拡散された動画では、男性が自分の座席を離れてボールを追っていたようにも映っていた。そのためネット上では、「そもそも離席はルール違反では?」といった議論も交わされていた。

なお日本野球機構(NPB)では「試合観戦契約約款」で、「ボール等の追いかけ、その他理由の如何を問わず、他の観客に損害を及ぼしうる行為」を禁止行為の1つとして定めている。この件について中川氏に見解を求めると、次のような回答があった。

「確かに、身を乗り出してボールを捕ったことについては問題がある可能性は否定しません。この点については、本人も反省はしています。

ただ、私個人の見解ですが、ボールを追って通路を走り回ったりする行為と異なり、自席から1、2歩動いたり、ちょっと身を乗り出す行為までを追いかけ行為と言いうるかは議論の余地があると思います。

また、この問題は、少年からボールを奪ったとされる問題とは別次元の問題です。実際に、当方が少年からボールを奪ったことを否定してから、この問題の指摘が多く見られるようになりました」

また男性を誹謗中傷したネットユーザーへの法的措置は、実際に講じられているだろうか? 中川氏は厳正に対処している現在の状況を、こう教えてくれた。

「現在は、問題あるもののうち、数十件について、匿名の発信者を特定するために、発信者情報開示の手続を裁判所に対して行なっています。この手続はトータルで半年から1年近くかかりますが、発信者を特定し次第、民事訴訟等を行なう予定です」

そして一番気がかりなのは、批判が加熱した男性の状態だろう。その点については、「当初に比べれば、だいぶ落ち着いてはいます。身を乗り出したことに対する批判なら甘受せざるを得ませんが、少年からボールを奪ったなど事実に反することを書いて、顔や名前を勝手に晒したりする行為については、憤りを感じているとのことです」と語っていた。

騒動は鎮火しても、男性の個人情報を特定するといった行為は責任を問われることになりそうだ。

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