京アニ事件当時の発言「お前ら全部知っているんだろう」のお前らとは? 被告人質問で青葉被告が語った「公安の監視」

ストレッチャーに乗せられた青葉被告(2020年5月27日午前、京都市伏見区・伏見署)

 36人が死亡、32人が重軽傷を負った京都アニメーション第1スタジオ(京都市伏見区)の放火殺人事件で、殺人などの罪に問われた青葉真司被告(45)の裁判員裁判の第3回公判が7日、京都地裁(増田啓祐裁判長)で開かれている。午前に初めての被告人質問が始まり、青葉被告が、犯行直後に身柄を確保された際の発言内容について、趣旨を説明した。

 弁護側が、青葉被告が犯行直後に京都府警に身柄を確保された際、「お前ら全部知ってるんだろう」と叫んでいた点に関して、「お前ら」とは誰を指しているのか質問したところ、青葉被告は「警察の公安部です」と答えた。また、身柄を確保した警察官についても、警察の公安部と認識していた、と答えた。事件当時に警察から監視されていた認識があった、とみられる。

 そのように認識した理由については、「火災現場にはまず消防や救急が来るが、早く警察が来たので公安部だと思った」と答えた。

 初公判の5日、青葉被告は罪状認否の際に「私がしたことに間違いありません。事件当時は、こうするしかないと思っていました。こんなにたくさんの人が亡くなるとは思っていなかった。現在ではやり過ぎたと思っています」と述べていた。弁護側は、被告にとって事件は「人生をもてあそんだ『闇の人物』への反撃だった」と説明。事件当時は心神喪失か心神耗弱の状態だったとして、無罪か刑の減軽を主張している。

 検察側は同日の冒頭陳述で、青葉被告には「公安から監視されているとの妄想があった」と指摘していた。一方、妄想に支配された末の犯行ではなく、「筋違いの恨みによる復讐」と説明した。検察側は、青葉被告には事件当時、完全責任能力があったと主張している。

 関係者の説明では、青葉被告本人が法廷の場で質疑に答える「被告人質問」は、12月の結審までに計10日間程度予定されており、検察側、弁護側、裁判官、裁判員のほか遺族らが直接質問する機会もあるとみられる、という。

 起訴状によると、青葉被告は2019年7月18日午前10時半ごろ、京都市伏見区の京アニ第1スタジオに正面玄関から侵入し、ガソリンを社員に浴びせてライターで火を付けて建物を全焼させ、屋内にいた社員70人のうち36人を殺害、32人に重軽傷を負わせた、などとしている。

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