フェラーリF1代表「サインツとルクレールのバトルを止めなかったのは正しい判断」

 フェラーリF1のチーム代表を務めるフレデリック・バスールは、イタリアGPの終盤でカルロス・サインツとシャルル・ルクレールが競い合うことを許すという決断を下したのは自分であると語った。それが「すべての人々のサポートに対する感謝を伝える最善の方法」だと感じたためだという。

 サインツはフェラーリの地元グランプリでポールポジションを獲得、レース序盤の14周をリードし、ホームウインの夢をティフォシに見せていたが、15周目にマックス・フェルスタッペン(レッドブル)に抜かれて2番手に落ちた。さらにチェッカーフラッグまでわずか6周のところでセルジオ・ペレス(レッドブル)にかわされ、3番手となった。

 レース終盤数周、タイヤで苦しんでいたサインツのすぐ後ろに、ルクレールが迫った。表彰台の一角をめぐってチームメイト同士で争うことに関してフェラーリのピットウォールからゴーサインが出ると、ふたりのドライバーは熾烈な戦いを繰り広げた。

 残り2周の時点で、サインツは2台のポジションを変更しないことを無線で提案した。「みんな、この結果を持ち帰ろう」とサインツは言ったが、チームは、必要以上のリスクを冒すべきではないがレースをすることは可能だという指示を、ふたりのドライバーに与えた。

2023年F1第15戦イタリアGP フェラーリF1チーム代表フレデリック・バスール

「もし順位を固定しても、同じように質問されるだろう。『なぜ状況を固定したのか?』とね」とバスールはその決断についてコメントした。

「(ある決断が正しかったのかどうかについては)最終的な結果が出てからコメントする方がはるかに簡単なのは確かだが、私はああすることが、すべての人々とティフォシの応援といったものに感謝する最善の方法でもあったと思うし、レース残り5周のところで何かを固定するのは気が進まなかった」

「彼らを信頼しているが、リスクは絶対に冒すなと指示した。リスクを冒さないという概念は常に相対的なものだと思う。しかしそれはひとつの意見だ。私はこの決断と、今日ドライバーたちが行った仕事を非常に誇りに思っている」

2023年F1第15戦イタリアGP カルロス・サインツとシャルル・ルクレール(フェラーリ)がバトル

 フェラーリのピットウォールがドライバーたちに自由にレースをさせるかどうかを検討するなかで、最終的な決断をしたのはバスールだった。

「これについては私が最終的な判断をしたかった」とバスール。

「私は彼らにリスクは冒すなと言った。レースをしていいが、リスクを冒してはならない、とね。繰り返しになるが、それについての考え方は相対的なものだ。それでも私としては、何かを固定するよりもこの状況の方がはるかに好ましかった」

「少々やりすぎだとか、そうではないとかいったことはいつでも言える。だが、結局のところ、我々はこういう形でレースを終えることができた。この結果にとても満足している」

2023年F1第15戦イタリアGP シャルル・ルクレールとカルロス・サインツ(フェラーリ)

 サインツとルクレールも、ホームの観衆の前で素晴らしい戦いを繰り広げ、3位と4位を確保したことに満足していた。

「リスクが高すぎると感じたことは一度もなかった」とサインツは語った。「もちろん相手がチームメイトだと、より緊張するし、通常より少し広いスペースを空ける。なぜならモンツァでティフォシを前に、2台のフェラーリが衝突することは絶対避けたいことだからだ」

「でも僕たちは激しいバトルをしたと思う。重要なポジションを争ったけれど、クリーンに戦うことができた」

 ルクレールはチームメイトの見解に同意したが、ふたりはそれぞれに限界ぎりぎりの状態で戦っていたと付け加えた。

「僕もカルロスも限界ぎりぎりの状態だった」とルクレールは語った。「それは普通のことだ。ティフォシの前で表彰台に立つことは、僕たちふたりにとって大きな意味のあることだから、全力を尽くした」

「でもティフォシにとって、表彰台を赤いマシンのどちらかがつかむことがいかに重要かということも分かっていた。それがどちらであってもね。だからそのことを頭に置いていた。でも僕たちも大いに楽しんだよ。クールだったね」

「カルロスはブレーキングでレギュレーションの限界に達していたし、僕はアタックする時にレギュレーションの限界に達していた。つまりふたりともそうだったわけだけど、、すべてはうまく終わったから問題ないよ」

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