日本代表、ドイツ戦で上田綺世をスタメン起用すべき3つの理由

日本代表は9月9日にドイツと国際親善試合を、12日にトルコとキリンチャレンジカップを戦う。

今年初となる欧州遠征で特大の注目を浴びるのは、カタールワールドカップ(以下W杯)以来となるドイツとの再戦だ。W杯で逆転勝利を収めた強豪相手に、今回はどのような戦術で挑むのか。

そして、同じく注目したいのが、絶対的な得点源が存在しないフォワード(以下FW)争いだ。三笘薫、久保建英、鎌田大地らアタッカーたちが欧州各国でゴールに、アシストにと活躍する中、森保一監督は誰を最前線に据えるのか。

指揮官のコメント、絶対的エースとの相性を踏まえれば、答えはひとりしかいない。上田綺世だ。

日本人離れした規格外のストライカー

上田綺世は、質の高い動き出しと日本人離れしたパワーシュート、屈強なフィジカルおよび跳躍力を生かしたポストプレーを武器とする点取り屋だ。

鹿島アントラーズ時代に3シーズン連続でふた桁得点を記録すると、昨年7月からはベルギー1部のセルクル・ブルッヘに活躍の場を移す。

加入1年目でリーグ2位の22ゴールをマークするなどエースとして輝きを放ち、今年8月にオランダの名門・フェイエノールトへステップアップ。新天地で迎えた今季は、開幕からリーグ戦4試合に出場(すべて途中出場)し、第4節のユトレヒト戦で初ゴールを決めた。

2019年にデビューした日本代表では、15試合に出場して1ゴールを記録。昨年のカタールW杯では1試合の出場にとどまったが、W杯後の代表戦4試合のうち、3試合に出場(ペルー戦はケガのため欠場)。6月のエルサルバドル戦で待望のA代表初ゴールを決め、安堵の表情を見せた。

上田をスタメンで起用するべき理由①“ベースづくり”と“積み上げ”を意識するなら……

カタールW杯以来となるドイツとの再戦に向けて、森保一監督は“チャレンジ”を強調した。1日に行われたメンバー発表会見で、以下のようにコメントしている。

「今度対戦するドイツ代表も間違いなく強い相手と考えて、我々のレベルアップに向けて攻撃も守備も、個人もチームもチャレンジしていかないといけません。我々がボールを握るプレーは上げていきたいと思いますが、我々が完全支配して戦えることにはなりません。ワールドカップでもいい守備からいい攻撃と粘り強く戦った上で最後に試合をモノにできました。我々の強みやあの試合でよかったことを忘れずに、攻撃のパーセンテージとチャンスの回数を増やしていけるように、しっかりしたベースづくりと少しずつ積み上げていくことを考えてチャレンジしていきたいと思います」

カタールW杯のドイツ戦を振り返ると、押し込まれた前半に先制点を奪われたが、後半開始から3バックに変更したことで攻守の歯車がかみ合い、チームは息を吹き返す。

最終的に堂安律と浅野拓磨のゴールで逆転勝利を収めたが、前後半トータルでの内容は紙一重。薄氷の勝利だったと言えよう。

歴史的勝利で得たモノを踏まえ、指揮官が滲ませたのは、“ベースづくり”と“積み上げ”の意識だ。2026年の北中米W杯を見据えた時に「攻撃のパーセンテージとチャンスの回数を増やしていく」ことは必須であり、悲願のベスト8進出に向けてトライしていくべきポイントだ。

「いい守備からいい攻撃」というコンセプトはそのままに、強豪相手にもいかにボール支配率を高めて試合を進められるか。

この観点から考えると、最前線に入るFWはポストプレーをこなせるタイプが望ましいだろう。敵陣で押し込んだ際に、相手守備陣と駆け引きしながら、攻撃に深みを作る働きが重要となるからだ。

今回のメンバーでFW起用が予想されるのは、前回対戦でゴールを決めた浅野、そして古橋亨梧、上田綺世、前田大然の計4名。

浅野は快足と大一番での勝負強さ、古橋は正確なシュート&クロスに点で合わせる技術、前田は快足を生かした巧みなプレスとそれぞれ異なる武器を持つが、ポストプレーを得意とするのは上田のみとなる。

森保監督のコメントを踏まえれば、ドイツ戦では浅野または前田を起用してのハイプレス戦術ではなく、上田をスタメン起用してパスワークでの崩しにトライするのではないか。浅野と前田の有効性はカタールW杯で証明されており、新たなチャレンジが求められる。

“ベースづくり”と“積み上げ”を今回の欧州遠征でテーマにするなら、最前線は上田のスタメン起用以外考えられない。守備のタスクもまっとうできる万能型の上田は、戦術に幅をもたらすことができる存在であり、指揮官が理想とするFW像にもっとも近いと見る。

上田をスタメンで起用するべき理由②“絶対的エース”三笘を生かすために

上田綺世にとって追い風となるのが、現代表の絶対的エースである三笘薫と相性が良い点だ。

いまや日本が世界に誇るエースへと成長した三笘は、今シーズンもブライトンでハイパフォーマンスを披露。4節を終えて1ゴール・3アシストを記録しており、とりわけウォルヴァーハンプトン戦で決めた4人抜きゴールのインパクトは絶大だった。

カタールW杯ではジョーカーとして起用された三笘だが、W杯後は完全なる主力に定着。選手の入れ替えを躊躇しないタイプである森保一監督が、三笘を絶対的な軸として考えているのは、以下のデータからも読み取れる。(データはアディショナルタイムを除く)

・3/24 vs ウルグアイ ⇒ 89分間プレー(スタメン)
・3/28 vs コロンビア ⇒ 54分間プレー(スタメン)
・6/15 vs エルサルバドル ⇒ 45分間プレー(スタメン)
・6/20 vs ペルー ⇒ 90分間プレー(スタメン)

森保監督はエルサルバドル戦で左ウィングに三笘を置き、左インサイドハーフに旗手怜央、左サイドバックに森下龍矢、1トップに上田を起用。

この4名は金メダルを獲得したユニバーシアード2019でともにプレーしており、大学時代に構築したコンビネーションをA代表でも活用したい意図が見えた。

そのユニバーシアード2019の決勝・ブラジル戦では、三笘のスルーパスに抜け出した上田が、左足のコントロールショットでこの日2点目をゲット。上田はハットトリックの大活躍で、通算7度目となる優勝に大きく貢献している。

試合後に「僕は常に三笘選手のドリブルしている姿を思い浮かべながら、どう走るか、どう背後をとるかを考えているのですが、その選択肢のひとつが互いに合ったタイミングでのゴールでした」と2点目を振り返った上田は、三笘との“連係の妙”を明かした。

2021年6月には、U-24日本代表でもコンビネーションが冴えた。

東京オリンピックのメンバー発表前のテストマッチだったジャマイカ戦で、三笘からの絶妙なスルーパスを受けた上田が、ループシュートを決めてチーム3点目をゲット。ホットラインが再び開通した瞬間だった。(動画1分58秒から)

上田はシュートレンジが広く、Jリーグ時代には弾丸シュートを幾度となく決めていたが、基本的には自身の動き出しに合わせてパスをもらい、確実にフィニッシュする形を得意とする。つまり、出し手との呼吸を合わせることがゴール量産のカギを握るのだ。

クラブよりも合計の練習時間が短くなる代表活動においては、コンビネーションを深める時間も当然短くなってしまう。この時に、年代別代表や各クラブで培ってきた連係をそのまま生かすことができれば、その選手にとっても、代表チームにとっても非常に有益となる。

破壊力抜群のドリブル突破に加えて、出し手としても優秀な三笘を最大限生かすためにも、ドイツ戦で上田をスタメン起用すべきではないだろうか。

上田をスタメンで起用するべき理由③ドイツ相手にどこまで通用するか

ここまで、ドイツ戦で上田綺世をスタメン起用すべき理由を森保一監督の発言、三笘薫との相性が良さから考察してきた。

3つ目の理由に挙げたいのは、「上田がドイツ相手にどこまで通用するか見極める」という点だ。

所属クラブでゴールを量産してきた上田だが、A代表では実績を残しているとは言い難く(15試合に出場して1ゴール)、絶対的な得点源ではない。ドイツ戦でスタメン起用して長時間のプレータイムを与えることで、強豪相手にどこまで通用するかという点を確かめたい。

ここで重要なのは、「長時間のプレータイム」である。上田は短い出場時間で決定的な仕事をするジョーカータイプ(現在の代表では浅野拓磨が該当する)というよりも、90分を通してプレーし、流れの中で生まれたチャンスをモノにする点取り屋(こちらは古橋亨梧も同様)だ。

チャンスがあればあるだけ本領を発揮しやすくなるので、プレータイムは長い方が望ましい。

もっとも、代表は各クラブのレギュラーが集まる場所なので、監督としては色々な選手を試したいと思うはずだ。特にアタッカーはプレー強度の面からも積極的な交代が常ではあるが、上田に関しては最低でも60~70分のプレータイムを与えたい。いずれにしても、短時間の起用は良さを消してしまうため避けるべきだ。

もちろん、仮にドイツ相手に本領を発揮できなかったとしても、そう簡単に代表から遠ざかることはないだろう。非凡な得点感覚はこれまでも示しており、能力の高さは折り紙付きである。

しかし、上田と同じ万能型/大型のFWには、カタールW杯メンバーの町野修斗(ホルシュタイン・キール)、同世代の小川航基(NECナイメーヘン)がいる。両名とも新天地でゴールを叩き出しており、上田に取って代わるかもしれない。

また、Jリーグではヴィッセル神戸の大迫勇也が好調を維持し、第26節終了時点で得点ランク1位の19ゴールをマーク。優勝争いを展開するチームを力強くけん引している。33歳という年齢を考えれば、代表復帰の可能性は高いとは言えないが、そのパフォーマンスは説得力がある。

上田にとって最悪のシナリオは、フェイエノールトで出場機会を得られず、その結果代表から徐々にフェードアウトしていくことだ。

この事態を避けるには、4試合目でリーグ戦初ゴールを決めたエールディビジはもちろん、チャンピオンズリーグ(CL)で結果を出すことが重要となる。欧州最高峰の舞台であるCLで結果を残せれば、クラブでの立ち位置は劇的に変わるだろう。

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W杯ベスト8の実現には、“日本人離れした規格外のストライカー”である上田が欠かせない。まずはドイツ戦で存在感を示し、リーグ戦およびCLでの活躍につなげていきたい。

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