北海道生乳生産に打撃 酷暑影響、長期化も 8月は前年比7%減

牛の体調を確認する河村さん(北海道厚岸町で)

ホクレンが発表した8月の生乳受託乳量(速報値)は前年同月比7・3%減の32万1603トンとなった。7月から8月まで続いた酷暑が原因とみられる。一大産地である北海道根釧地域でも大きく減少。酪農家は乳量の減少による所得減に直面するだけでなく、繁殖成績や健康状態の悪化など影響の長期化を懸念している。

根室管内の8月の生乳受託乳量は同6・7%減の6万7888トン、釧路管内は同5・7%減の4万2807トン。根釧地域の11JA全てが8月分の目標生乳生産量を下回った。

釧路管内厚岸町で搾乳牛100頭を管理する河村公貴さん(51)の牧場では、1頭当たり1日35キロだった乳量が8月は30キロまで減少した。「お盆を過ぎたあたりから牧草を食べる量が激減した」と振り返る。牛舎の温度計は37度まで上がったという。「これだけ暑いと9、10月まで生乳生産や繁殖などさまざまな影響が出る」と指摘。乳代が経営を左右するだけに、「できるだけ早く元の乳量に戻したい」と話す。

根室管内別海町で搾乳牛300頭を飼養する大規模牧場のアットファームでは、8月下旬の1日当たり生産乳量が10トンから3割減の7トンに落ち込んだ。同牧場の元代表でJA道東あさひの田中博行専務は「今年の夏は異常だった。8月中旬を過ぎたあたりからどんどん牧草の食いが悪くなり、乳量も下がった。暑さが原因で命を落とす牛も増えてつらい思いをした」とうつむく。同町の8月の平均気温は21・9度で、過去45年間で最も暑かった。

牛も熱中症

NOSAI北海道・ひがし統括センター根室南部支所の獣医師らによると、8月に熱中症とみられる乳牛の診療回数が過去になく多かったという。高温多湿が長期間続き、暑さに慣れていない牛にとっては生死に関わる状況だったと分析する。

暑さが原因の子牛の突然死も増加。子牛が過ごすハッチ内は蒸し風呂状態となり、熱中症になって命を落とすケースが多発した。

繁殖検診では、7、8月に流産の発生件数が多かったという。人工授精後、90日以内で流産するケースが増え、暑さにより体力が奪われたことが大きな原因と推測する。獣医師らは今後、生まれてくる子牛の栄養状態や母牛の周産期病の罹患(りかん)率の上昇も懸念する。 (安田美琴)

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