銀幕スターを描いた鉛筆画21点 大分市で大井フミエさん遺作展【大分県】

大井フミエさんが生前に描いた銀幕スターの鉛筆画21点を展示。「多くの人に楽しんでもらいたい」と(左から)豊田めぐみさん、堤さん夫婦
鉛筆画を残した大井フミエさん(2022年撮影、豊田めぐみさん提供)

 【大分】趣味で鉛筆画を描いた大分市の大井フミエさん(享年93)の遺作展が、同市中央町のコトブキヤ文具店本店で開かれている。「大分の片隅でつつましく暮らした女性の生きた証しを残したい」と交流のあったケアマネジャーや隣人が企画した。12日まで。無料。

 大川橋蔵、阪東妻三郎、市川雷蔵、有馬稲子ら昭和の銀幕スターを描いた21点を展示。手作りのレース編みや折り紙のくす玉、自宅前で育てていた花も飾り、温かな雰囲気で故人をしのんでいる。

 大井さんは同市出身。戦時中に父と兄、59歳の時に母を亡くし、身寄りがなかった。手先が器用で、若い頃から独学で鉛筆画を楽しんだ。2019年に病を患い、自宅で療養していた。

 同市萩原のケアマネジャー豊田めぐみさん(52)=一般社団法人ライフ・プランニング代表理事=は22年から担当。自宅を訪れた際に趣味を尋ねると、大切にしまっていたクロッキー帳を見せてくれたという。髪や着物のしわまで精密に表現した絵に驚き、個展開催を提案した。

 隣に住み、サポートしてきた堤洋一さん(74)と純子さん(71)夫婦も協力。「初めて絵を見せてもらった時は驚いた。控えめで芯が強く、りんとした人柄が作品からにじみ出ている」という。

 今年7月、病状が悪化し入院。豊田さんらは本人と主治医の許可を得て展示の準備を進めていたが、8月28日に帰らぬ人となった。

 会場は大井さんが画材を購入していた店。喜多川竜樹社長は3階の売り場の一角を無償で提供。市社会福祉協議会が展示用のパーテーションを貸し出した。

 豊田さん、堤さん夫婦は「多くの人に見てもらいたい。大井さんは会場の隅に隠れて、恥ずかしいと言いながら喜んでいるんじゃないかな」とほほ笑んだ。

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