「負債1,000万円未満」倒産 8月は37件、8月としては4年ぶりの増加  ジワリと過剰債務・物価高の影響広がる

~ 2023年8月「負債1,000万円未満」倒産の状況 ~

2023年8月の負債1,000万円未満の企業倒産は37件(前年同月比54.1%増)で、8月では2019年以来、4年ぶりに前年同月を上回った。2023年に入り、3月と4月を除く6カ月で前年同月を上回り、緩やかな増勢が続いている。
「新型コロナ」関連倒産は、11件(前年同月8件)発生した。

産業別は、最多がサービス業他の19件(前年同月比46.1%増)。次いで、小売業7件(同250.0%増)、建設業4件(前年同月4件)と続く。
原因別は、販売不振が21件(前年同月比23.5%増)で、半数以上(56.7%)を占めた。コロナ禍からの業績回復が進まない小・零細企業の息切れ倒産が増えている。
資本金別は、1千万円未満(個人企業他を含む)が34件(前年同月比47.8%増)で、約9割(91.8%)を占めた。
形態別は、37件のうち、36件が消滅型の「破産」だった。負債1,000万円未満の倒産は小・零細企業がほとんどで、もともと資金余裕が乏しく、経営再建を諦める企業の多さを示している。

実質無利子・無担保融資(ゼロゼロ融資)の元金返済がピークを迎え、元利払いが始まった企業も多い。業績回復の遅れに加え、円安などによる物価高や人材確保に伴う人件費上昇など、コストアップが企業の資金繰りの負担となり、返済原資を確保できない企業も少なくない。
経済活動が本格的に再開するなかで運転資金の需要は増えるが、過剰債務を抱えて新たな資金調達が出来ずに受注機会を損失する悪循環に陥る中小・零細企業もある。負債1,000万円未満の倒産は、前年(410件)を上回る可能性も出てきた。

※本調査は、2023年8月に全国で発生した企業倒産(法的、私的)のうち、企業倒産集計(負債1,000万円以上)に含まれない、負債1,000万円未満の倒産を集計、分析した。


8月の倒産37件、4年ぶりに前年同月を上回る

2023年8月の負債1,000万円未満の倒産は37件(前年同月比54.1%増)で、8月では4年ぶりに前年同月を上回った。2023年は、3月と4月を除く6カ月で前年同月を上回っている。
コロナ禍の資金繰り支援策で、一時的に企業倒産は抑制されたが、支援効果の縮小・終了にあわせて企業倒産は増加に転じている。
支援効果の副作用でもある過剰債務の解消が経営課題に浮上するなか、コロナ禍からの業績回復の遅れに加え、物価高や人手不足などが企業の資金繰りに負担となっている。負債1,000万円以上の企業倒産が増勢を強めるなか、企業体力がぜい弱な小・零細企業を中心に負債1,000万円未満の倒産も一進一退を繰り返しながら、緩やかな増加に転じている。

【産業別】10産業のうち、6産業で前年同月を上回る

産業別では、10産業のうち、増加が6産業、減少が1産業で、同件数が3産業だった。
最多は、サービス業他の19件(前年同月比46.1%増)で、8月としては2年ぶりに前年同月を上回った。構成比は51.3%(前年同月54.1%)だった。
このほか、製造業1件(前年同月ゼロ)と卸売業2件(前年同月比100.0%増)が3年ぶり、小売業7件(同250.0%増)が4年ぶり、金融・保険業と運輸業が各1件(前年同月ゼロ)で2年ぶりに、それぞれ前年同月を上回った。
一方、農・林・漁・鉱業は2年ぶりに発生がなかった(同2件)。
建設業が4件、不動産業がゼロ、情報通信業が2件で、それぞれ前年同月と同件数だった。

業種別では、経営コンサルタント業が3件(前年同月ゼロ)、一般電気工事業、酒小売業、無店舗小売業、労働者派遣業が各2件(同ゼロ)、建築工事業、鉄筋工事業、貨物軽自動車運送業、呉服・服地小売業、コンビニエンスストア、新聞小売業、損害保険代理業、旅館,ホテル、食堂,レストラン、中華料理店、焼肉店、バー,キャバレー,ナイトクラブ、配達飲食サービス業、一般機械修理業が各1件で、それぞれ前年同月を上回った。

【形態別】ほとんどが消滅型の破産

形態別件数の最多は、「破産」の36件(前年同月比56.5%増)。構成比は97.2%(前年同月95.8%)だった。
負債1,000万円未満の倒産はほとんどが小・零細企業のため、資金余力が乏しく、再建より消滅型の破産を選択するケースがほとんど。
このほか、「取引停止処分」が前年同月と同件数の1件。会社更生法は2009年から15年間、民事再生法は5年連続、特別清算は2年連続で、それぞれ発生がなかった。

【原因別】販売不振が半数以上

原因別件数の最多は、「販売不振」の21件(前年同月比23.5%増)で、8月では2年ぶりに前年同月を上回った。負債1,000万円未満の半数以上(56.7%)を占めたが、前年同月の70.8%より14.1ポイント低下した。
このほか、「他社倒産の余波」が7件で、3年ぶりに発生した。多くが中核企業の倒産に伴って、関連会社も同時に法的手続きをとったことに起因している。
また、「事業上の失敗」が4件(前年同月比100.0%増)で4年ぶり、代表者の病気や死亡を含む「その他」が4件で3年ぶりに、それぞれ前年同月を上回った。
自治体や金融機関は創業支援に積極的だが、経営基盤がぜい弱で、コロナ禍からの業績改善の遅れから事業継続を断念するケースが多い。

【資本金別】1千万円未満が9割超

資本金別件数は、「1千万円未満(個人企業他を含む)」が34件(前年同月比47.8%増)で、4年ぶりに前年同月を上回った。構成比は91.8%(前年同月95.8%)で、8月では5年連続で90%台だった。
内訳は、「1百万円以上5百万円未満」13件(前年同月比116.6%増)、「個人企業他」10件(同25.0%増)、「1百万円未満」8件(同60.0%増)、「5百万円以上1千万円未満」3件(同25.0%減)。
このほか、「1千万円以上5千万円未満」が3件(同200.0%増)。また、「5千万円以上1億円未満」と「1億円以上」は、2009年以降の15年間では発生していない。

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