目が8個ある謎の生物“ヤツメウナギ”って!?空海が目を開眼させたという伝説…どんな姿なのか徹底調査

目が8個あるという謎の生物「ヤツメウナギ」。一体どんな姿をしているのか、その真相を徹底解明します。(2023年8月 よるマチ!で放送)

愛媛県松山市の浮穴(うけな)地区に、次のような伝説が残ってます。

「昔々、泉に目のないウナギが棲んでいました。いたずらな子どもがウナギに目がないことを面白がり、棒で叩いていじめていたのです。そこに通りかかった空海がウナギを不憫に思い、お祈りをしました。するとウナギの目が2つ開いたのです。しかし、子どもはまだ目は開いていないと嘘をつきました。そこで空海がもう一度お祈りをすると、ウナギの目は4つに。何度も繰り返していると、ウナギの目はとうとう8つになったのでした。」

目が8個もあるというヤツメウナギはどんな生き物なのでしょうか。

まずは、空海の伝説が残るという松山市にある杖ノ淵(じょうのふち)公園に向かいました。杖ノ淵公園には「杖ノ淵」と呼ばれる湧き水が出ています。なんでも、干ばつで苦しんでいた地域を空海が訪れ、杖を突き立てたところ、水が湧き出てきたという伝説も残っていたのです。

公園で聞き込み調査をしましたが、ヤツメウナギを知っている人は見つかりませんでした。

そこで、地域で古くから営業を続ける、和菓子店の渡部さんに話を聞きました。

渡部英寛さん 「見たことがあります。子どもの頃は何度も見ました」

ヤツメウナギを見たことがあるという渡部さんに特徴を聞いてみると…

渡部英寛さん 「怖いですよ。気持ち悪いというか。ウナギとは全く別の生き物です」

ヤツメウナギはウナギの様な体で、丸い口に沿ってギザギザの歯があるようです。

そこで、水生生物に詳しいという愛媛県水産研究センターの清水孝昭さんにお話を聞きました。清水さんは長年、水生生物の研究を続け、愛媛県のレッドデータブックの制作にも携わった人物です。

清水孝昭さん 「愛媛県内では1978年を最後に確実な生息情報が得られなくなって、絶滅したと判断しています」

なんと、ヤツメウナギは絶滅していました(愛媛県内)。

しかし、1978年の調査で採集された最後の個体が標本として保管されているというのです。徳島県立博物館でヤツメウナギのその標本を見せてもらうと、なんとも奇妙な姿…。そして、8個あるという目は確認することはできませんでした。

しかし、生きたヤツメウナギの映像を入手することができました。映像を確認すると、確かに目のようなものが8個あります。あらためて清水さんに話を伺いました。

清水孝昭さん 「実は本当の目は1つだけなんですね。あとの7個は目玉ではなく呼吸をするためのエラ穴なんですね。エラ穴が7個と目が1個。それが8個の目のように見えるのでヤツメウナギ」

残念ながら目は8個ではありませんでした。しかし、ヤツメウナギはある不思議な生体をしていたのです。

アンモシーテスと呼ばれる幼生期には目がほとんどないのです。目やエラ穴は皮膚の下に隠れていて、成長するにつれて体の表面に出てきます。

清水孝昭さん 「変態すると目ができることを地元の方も知っていたのかもしれないですね。(空海が開眼させた)伝承に繋がっていった要素は多分にありますね」

ではなぜ愛媛県でヤツメウナギは絶滅したのでしょうか。清水さんによると、ヤツメウナギは1960年代頃に数が減ってきていたと言います。農地の水路などに生息していましたが、当時は農薬の規制が現在ほど厳しくなかったり、農地の水路がだんだんとコンクリートで固められていったりした時代でした。人間活動と近いところで生きていたが、故に絶滅してしまったと言うのです。

“こういった生き物が身近にいたことを過去の記録から読み取ってもらえれば”と、清水さんは話します。

今回の調査で分かったことは、ヤツメウナギは1個の目と7個のエラ穴を持っているということ。空海がヤツメウナギの目を開眼させたという伝説は、ヤツメウナギの変態をあらわしたものかもしれないということ。

※ヤツメウナギ(スナヤツメ)はまだ生息している地域もあります。

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