混ざった塩と砂糖、機械学習で比率を予測 北大 研究者の目と勘を育てる

(Getty Images)※画像はイメージです

塩と砂糖を混ぜたものをカメラで撮影して、機械学習で成分の比率を予測するシステムを開発したとする論文を北海道大学の研究チームが発表した。平均誤差は約4%という高精度で、熟練した研究者の観察眼をはるかに上回るとしている。

高性能の分析装置が開発された現在でも、研究者の目視による情報が重要な発見につながることは少なくない。しかし、観察眼は成功と失敗を繰り返して身につくものであり、経験の浅い研究者では重要な発見を見落としてしまう恐れがある。

同大の猪熊泰英教授、瀧川一学特任教授、井手雄紀特任助教らの研究チームは、データを入力してコンピューターに学習させる機械学習の仕組みを用いて、この課題に挑戦。比率が異なる塩と砂糖の混合物の写真を300枚撮影して、それぞれの写真と成分比率をセットにすることで「教師データ」を作成した。塩と砂糖の混合物は、粒が重ならないように平坦化した状態で撮影された。

塩と砂糖の混合物(提供:北海道大学 猪熊泰英教授)

この教師データをもとに混合物の比率を予測する機械学習モデルを作り、塩と砂糖の混合物が写っているテスト用の画像100枚の比率を予測させると、実物との平均誤差は約4%にとどまった。

人間の観察眼の精度と比較するために、塩と砂糖が混ざった写真10枚を用意して、機械学習モデルと実験参加者に成分比率を予測させた。機械学習モデルの平均絶対誤差(MAE)は4.3%で検証時の数値とほぼ同じだった。実験参加者では「勘の良い人が7.5%という(5人中で最高の)精度を叩き出した」(猪熊教授)一方で、まったく当たらず誤差が25%だった人もいて、精度に大きなばらつきが見られた。こうした結果を受けて猪熊教授は「どんなに勘の良い人でも機械学習の精度には敵わなかった」と結論づけた。

塩と砂糖だけでなく、専門的な装置でも判別が難しい物質の比率についても誤差を10%未満に抑えられることが分かった。

同システムは教師データとして約300枚の写真を必要とするが、機械学習モデルを構築した後は100枚の画像を約2分で処理することができる。研究チームは今回の研究が応用できる場面として、多くのデータを迅速に絶え間なく分析する必要がある化学プラントなどを挙げた。また、この研究成果は研究者の「勘の習得」を補助することを目的としており、熟練した研究者の仕事を奪うものではないと述べた。

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