「失言農相」謙虚答弁で逃げ切り 内閣改造への懸念払拭か 自民に安堵「最後は人柄が自らをたすけた」

 東京電力福島第1原発の処理水の海洋放出を巡る閉会中審査が8日、衆参両院で開かれ、「汚染水」「中国禁輸は想定外」の失言で批判を浴びた野村哲郎農相が答弁に立った。野村農相は「わびて済む問題ではない」と謙虚な姿勢に徹し、政策面での論戦を通した野党に対して前向き答弁で応じた。さらなる失言と今後の内閣改造への影響を懸念していた与党内には「最後は人柄が自らを助け、逃げ切れた」(自民党の閣僚経験者)と安堵(あんど)が広がった。

 同日午前の衆院審査で、自民の武部新氏への答弁の冒頭で謝罪した野村農相は「わびて済む問題ではない」とした上で、「先般の私の言い間違いにより福島のみなさん、全国の漁業者、お集まりの先生に大変不快な思いをさせた深く反省している」と謝罪。「中国禁輸は想定外」との発言の真意について立憲民主党の長妻昭氏からただされると「政府見解ではなく個人的な認識だった」と述べた。

 同党の近藤和也氏から「水産業対策は(岸田文雄首相が外遊前に打ち出した)パッケージで十分と思うか」と問われると、「当初800億としていた対策費がパッケージ段階で200億積んで1千億円となったのは『そこまで行くか?』という私の配慮のなさからだった」とし、「今後も課題が出てきた場合には、どこまでフォローできるかを都度検討していく」などと説明。近藤氏から「謙虚なお答えだ」と評価を受けた。

 日本維新の会の小野泰輔氏からは「省庁横断で対応を」と促され、同日朝の閣議の際に省庁食堂などで国内産海産物を提供するよう呼びかけたことに言及。「浜田(靖一)防衛相が全国の隊員食堂での使用を約束してくれた」と明かし、小野氏が「胃袋でも日本を防衛するとは素晴らしい」と応じると、笑顔を見せた。

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