青森県誘致企業、タッチパネルセンサー製造「アノヴァ」破産 負債12億円、従業員66人全員解雇

破産手続き開始決定を受けたアノヴァ。入り口に告示書が張られていた=8日午後4時40分ごろ、六ケ所村尾駮

 タッチパネルセンサーの製造・販売などを手がける青森県六ケ所村の「アノヴァ」(江利川晴夫社長)が、青森地裁から7日付で破産手続き開始決定を受けたことが8日、分かった。負債総額は約12億2800万円。半導体不足による自動車の減産などで経営が悪化した。従業員66人は7日付で全員解雇された。

 同社は県の誘致企業。県の「クリスタルバレイ構想」の中核企業・エーアイエス(AIS)の破産を受け、県の「オーダーメード型貸し工場」を引き継ぎ、2011年に創業。主にカーナビのタッチパネルセンサーの製造や販売を手がけ、16年6月期に過去最高の売上高21億6千万円を計上した。

 ただ、その後は受注減少による減収基調に転じた。自動車市場の世界的な半導体不足、コロナ禍による部品供給の混乱で大幅な減産を強いられた上、電気料金の値上げも影響した。23年3月期は2期連続の赤字となった。

 今月1日、親会社の翔栄(群馬県伊勢崎市)が主要事業を別会社に譲渡。同社の支援を受けられなくなったことから、事業継続を断念した。

 同社では8日、破産手続き開始の「告示書」が張られ、元従業員が出入りする姿が見られた。同社関係者は東奥日報の取材に「こちら(告示書)に全て書かれている通り」と述べた。

 戸田衛村長は同日、村議会むつ小川原エネルギー対策特別委員会で同社の破産に触れた。終了後の取材に対し「村とともに振興・発展を願い、努力してきた企業で残念に思う。雇用の面で村としてできることをやっていきたい」と語った。

 六ケ所村商工会の種市治雄会長は取材に「地元経済への影響はあるだろう。解雇された人たちをどう支えていくのか考えなければならない」と話した。

 民間調査会社の東京商工リサーチ八戸支店によると本年度、負債10億円以上の県内の大型倒産は6月の佐藤長(弘前市、負債総額約63億円)に続いて2件目。

© 株式会社東奥日報社