<社説>中学生大麻所持 社会全体で再発防止を

 本島中部の中学3年の男子生徒(14)が大麻取締法違反(所持)の疑いで逮捕された。生徒は大麻を吸引するためとみられる包み紙をポーチの中に忍ばせていたという。中学生の大麻取締法違反容疑での逮捕は前代未聞で、低年齢層への違法薬物の浸透が懸念される深刻な事態だ。 男子生徒は「自分で吸うために持っていた」と容疑を認める供述をしているという。逮捕されたのは6月28日で、既に2カ月以上経過している。すぐに発表しなかったのは入手先を調べていたためだとみられるが、どこまで実態が解明できたのか。生徒が大麻を容易に入手できる危険な状況ならば、直ちに対処しなければならない。

 県警によると、今年8月末までに大麻取締法で県警に摘発されたのは93人。そのうち、10代の摘発者数は18人で、20代の42人、30代の20人に続く。実に86%が若年層で、大麻が未成年を含む若い世代に広がっている実態がうかがえる。

 2018~22年の5年間に摘発された少年の学識別内訳では、有職・無職少年が多い傾向にあるものの、毎年高校生も摘発されている。

 背景には会員制交流サイト(SNS)の普及で、違法薬物情報に触れやすくなったとの指摘がある。県警もSNS上のやりとりに目を光らせており、仲間内でしか通用しない隠語で秘密裏に取引されていた事例もあった。

 今回摘発された中学生は1人だが、特異な事例ではなく「氷山の一角」との危機感を持って地域社会で再発防止に努めるべきだ。シンナー吸引や危険ドラッグなども含め、違法薬物のきっかけとされる深夜はいかいにも目を光らせ、未成年者を危険から遠ざける努力を徹底したい。

 今回の中学生逮捕を受け、県教育委員会の半嶺満教育長は「薬物乱用の低年齢化が進んでいる事態に強い危機感を抱いている。これまで保健体育の授業をはじめ、学校教育活動全体で薬物乱用防止教育に取り組んできた。改めて学校、家庭、地域、警察などの関係機関と危機感を共有し、薬物乱用防止教育を徹底する」とのコメントを発表した。これまでの対応はどれほど効果があったのか、関係機関の連携が十分だったのか、検証が必要だ。

 県教育委員会が20年に実施した「大麻等薬物に関するアンケート」では、大麻などの薬物使用を「個人の自由」と考える傾向が8.1%に上った。16年の調査結果(3.9%)と比べ4.2ポイント高くなっており、罪の意識が希薄になっていることを警戒すべきだ。

 未成年者の違法薬物乱用は家庭や学校だけでなく、「怖い」と感じさせることができなかった私たち大人の問題だ。若者の未来を違法薬物に奪われることがないよう社会全体で違法薬物根絶に向けた啓発運動を強化し、継続していくことが求められている。

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