人知れず光る夜の森!?実はミミズもカタツムリも光っていた…発光する生物に魅せられた研究者の日常

夜になると街を明るく照らす、電灯やネオンなどの人工物の灯り。それを全て消すと、そこには生き物が生み出す「自然の光」が見えてきます。

誰もが知るホタルだけではなく、光るミミズやカタツムリがいることを知っていますか?様々な生物が光を発し、ほのかな光に浮かび上がるのはまさしく自然の神秘です。発光する生物に魅せられ、研究を続ける男性に密着しました。

「分からないことがたくさん」教授が語る発光生物の魅力とは

中部大学応用生物学部教授の大場裕一さんは、この日ゼミの学生たちと夜の海にやってきました。

(中部大学応用生物学部教授・大場裕一さん)
「豚レバーですね。豚レバーを餌にします。この匂いで集まってきてビンで捕まえられる」

海辺の砂地にいる、ある“光る生き物”が夜、暗くなると食べ物を求め砂から出てくるところを狙います。待つこと一時間、ついにその生き物がビンに入りました。大きさ5mmほどしかないウミホタルです。人工の灯りを消すと、ほのかな青い光を放っています。

(中部大学応用生物学部教授・大場裕一さん)
「光るメカニズムなどを研究しているので、ウミボタルとは長い付き合い。まだまだわかっていないことがたくさんある。どういう役割で光っているのか、よくわかっていない。敵を驚かせているというのはおそらく正しいのだけれども、雄と雌のコミュニケーションに使われているのかどうか、よくわかっていない。研究してみたくなりますよね」

光る原理は分かっていても、何の目的で光るのかは未だによく分かっていない不思議。そんなところも大場さんを魅了してやまない自然の神秘です。

国内で唯一の発光生物専門の研究室、生徒と“光る落ち葉”を探す

発光生物専門の研究室を開いているのは、国内の大学でも大場さんだけ。一年生向けの授業でも熱が入ります。

(中部大学応用生物学部教授・大場裕一さん)
「1センチぐらいの小さなカタツムリですけど、口のところが光るんですね。発光する生物は、それぞれが独立に光る能力を進化させてきた」

発光生物の話になると止まりません。学生からも、その熱のこもった講義には定評があります。大学内にある何の変哲もない茂みも、大場さんにとっては大切な研究対象です。学生を連れて、茂みの奥へと進みます。学生と手分けをして、朽ちかけの落ち葉を箱に集めていきます。

(中部大学応用生物学部教授・大場裕一さん)
「発光する菌類がくっついた葉を探している。キノコになる前の菌糸の状態で光るものもいる」

大学に持ち帰り、暗室で撮影してみると落ち葉の表面が緑色に光っています。

(中部大学応用生物学部教授・大場裕一さん)
「気づかないけど、光る夜の森の姿があるんですね」

私たちが知らないところで、夜の森は、人知れず生き物たちの光で輝いています。

「発光生物に興味を示さなくてもいい」子どもの好きなようにさせて見守る

別の日、大場さんは愛知県幸田町にやってきました。毎年この時期、家族や研究員を連れて川が流れる里山に出かけています。お目当ては、ホタルです。

(中部大学応用生物学部教授・大場裕一さん)
「ホタルを研究しているので、一年に一回ぐらいは見せてあげたい」

しかし、大場さんの次男・昴君が興味を示したのは、ホタルではなくカエルでした。息子が発光生物に興味を示さなくても、全く残念がりません。むしろ、自分の少年時代と重なるといいます。

(中部大学応用生物学部教授・大場裕一さん)
「うちの父親も、岩石学者なんですよ。山に石とかを(一緒に)探しに行ったんですけど、僕は生き物の方に興味があって石には興味がなくて。だから子どもを連れてきたら、ホタルには興味持たないかもしれないけど、何かに興味もつかもしれない」

何であれ、周りの世界に向き合って興味を持つことが、全ての始まり。研究者としても親としても、そう考えて子どもを見守っています。

街中で“光るミミズ”を探す教授、無駄の中から新しい発見を探す日々

「何かに役立つ、利益につながるための研究」ではなく「何なのか、なぜなのか」を追及する大場さん。また別の日には、名古屋市の街中で何かを探していました。

(中部大学応用生物学部教授・大場裕一さん)
「冬場にいるミミズなんですけど、夏場に見つかることもまれにあるので。ホタルミミズ、光るミミズがいると思う」

植え込みで探していたのは、光るミミズ。名古屋でも冬場には確認されていますが、夏にもいるのかどうか確かめようというのです。微かな光でも目立たせるため、赤いライトで照らしながら公園の隅で土を掘り返します。1人で探すこと、2時間以上。

(中部大学応用生物学部教授・大場裕一さん)
「夏にあまりいないものを探しているわけですから、変わったものを見つけるのは根気がいりますよ」

結局、ホタルミミズは見つかりませんでしたが、大場さんは全く気にしていません。見つからなかったこと自体も収穫だといいます。

(中部大学応用生物学部教授・大場裕一さん)
「無駄の中から、新しい発見が出てくる。新しい発見をするときの実験って失敗ばかり。タイパとかコスパでは、新しいものは見つからない」

生き物が生み出すほのかな光に魅せられ、大場さんは今日も自然と向き合い、研究を続けます。

CBCテレビ「チャント!」8月29日放送より

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