携帯可能、被ばく内・外部同時に眼鏡型端末で可視化 「世界初」測定機器、青森県発の技術で開発

外部、内部両方の被ばく線量をスマートグラス(手前)に映し出す小型測定器。モニター内の表示は一例
スマートグラスをかける宮下知事(中)、床次所長(左)=8日、県庁

 弘前大学被ばく医療総合研究所と青森県内外の企業3社は8日、携帯型の放射線測定システムを新たに開発したと発表した。外部被ばくと内部被ばくの同時測定と可視化、放射性物質の特定、小型・軽量という3要素を備えた機器は「世界初」(同研究所)という。原子力産業や災害対応での需要を見込み、2023年度内の製品化を目指す。

 同研究所とパルネット弘前(弘前市)、フォルテ(青森市)、アドフューテック(東京都)が県の支援を受け、国の補助金を活用して3年かけて開発した。

 測定機器の大きさは17.5センチ×12.5センチ×6.5センチ。重さは1.3キロ。周囲の空気を吸引し、外部・内部の被ばく線量を同時に計測できる。眼鏡型の端末「スマートグラス」に放射線の情報を転送し、一定の値を超えた場合、赤字で示したりアラームを鳴らしたりして警告する。

 持ち運び可能な従来品は外部被ばくを調べる機能だけで、信頼性に欠ける機器も少なくないという。内部被ばく測定用は数千万円する高価な据え置き型が中心で、重さも100キロ前後ある。

 今回開発した機器は、持ち運べることで利用者の実態に近い内部被ばく線量が随時計測できるという。コストは従来品よりも安価に抑えられる見通し。

 スマートグラスは防護服の着用時も使用可能。原子力施設のモニタリング業務や、原子力災害時の救助・警備従事者など、個々の線量把握に役立つという。小型のためロボットやドローンにも搭載できる。

 8日は床次眞司・同研究所長らが県庁を訪問。宮下宗一郎知事はスマートグラスをかけて性能を確認し、「県の研究と技術で県の課題を解決できることは素晴らしい」と評価。床次所長は「一つのシステムで全ての状況を把握でき、ニーズは高い」と述べた。

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