初のWEC予選に挑んだ小泉洋史、一時フェラーリ勢首位の快走も無念の違反でタイム抹消に

 9月9日、WEC世界耐久選手権第6戦の予選が静岡県の富士スピードウェイで行われ、今大会が初のWEC参戦となる小泉洋史(AFコルセ)は21号車フェラーリ488 GTEエボに乗り込み、世界トップレベルのブロンズドライバーたちが一発の速さを競う、LMGTEアマクラスの予選に出走した。

 チェッカーフラッグを受けたラストラップで小泉は、フェラーリ勢でトップの1分38秒949を記録してクラス5番手に入る走りを披露。予選を終えた小泉は、「もちろん嬉しいです」と初の予選で自分の走りがタイムに繋がった結果を振り返って喜んだ。

「チーム(AFコルセ)内で見ても、フローさん(54号車をドライブするトーマス・フロー)やコンパンクさん(83号車をドライブするルイス・ペレス・コンパンク)よりも上のタイムであったということは嬉しかったです。また、フェラーリ勢のなかでもトップタイムだったということで、チームの皆さんも喜んでくれました」

 自身の予選で得た手応えを感じさせる様子で語る小泉。しかし、予選より前に設けられた計3回のフリープラクティスは、度重なる雨によりコンディションが定まらず。

 その影響から、小泉はフリープラクティスで本格的な予選シミュレーションを行うことができず、予選に関しては“ぶっつけ本番”となってしまった。

「今週は、クルマ自体も初めてということに加えて、予選シミュレーションもほとんど行えていませんでした。なので、まずは予選を走り始めた段階で、クルマと新品タイヤのバランスを感じ取りながら走り始めました」

「このクルマは、どこまで攻めるとどういった動きを見せるのか。さらに、ニュータイヤの前後の温まり方も未知だったので、それをひとつひとつ確かめながら走りました。今回の予選は、まるでパズルをはめていくような感覚で走りましたね」

最初はウエットタイヤを装着してコースへと入っていった

 限界領域でのクルマの動きを探りながら、まさしく“ぶっつけ本番”の予選に挑んだ小泉。最終ラップに入るまではクラス12番手に沈んでしまっていたが、ラストアタックでは掴んだ感覚をまとめ上げて5番手タイムをマークした。

 しかし未知の予選は厳しく、ポールポジションを獲得したベン・キーティングが乗り込む33号車シボレー・コルベットC8.R(コルベット・レーシング)は0.611秒先。小泉は、予選の感覚を徐々に掴み始めていただけに悔しさを吐露した。

「このフェラーリ488 GTEエボというクルマは、素晴らしいクルマです。ですが、僕はタイムを上げるまでに8~9周はかかってしまった。タイヤのおいしいところを使えていれば、0.5~1秒くらいはまだ上げられたはずだと思います」

 マシンを降りて予選アタックを内省していた小泉に、悲痛な知らせが届いた。セッション終了後、21号車のベストラップはトラックリミット違反と見なされてタイム抹消となり、最終的な予選順位は12番手となってしまった。

「LMGTEアマクラスの予選が終わった後に審議中と表示され、トラックリミット違反と判定されてタイム抹消になり、スタートグリッドも下がってしまいました」と、怪訝だと言わんばかりの表情を見せる。小泉自身、どこでトラックリミットを超えたかは定かでないという。

 ただ、小泉は走りを悔やむ様子は見せず、「全部抜いていきますよ」と予選で得た手応えを自信に変えた様子で、決勝レースの抱負を口にした。

「明日のストラテジーは、これから決めるのでスティントの順番はまだ分かりません。ですが、天気が晴れでも雨でも、自分の番になればクラストップでバトンを持って帰ってくることを目指して頑張ります」

21号車フェラーリ488 GTEエボ(AFコルセ) 2023年WEC第6戦富士6時間レース

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