<社説>秋本衆院議員逮捕 政治とカネの徹底解明を

 東京地検特捜部が秋本真利衆院議員=自民党を離党=を逮捕した。日本風力開発側から提供された総額6100万円の資金を巡る受託収賄容疑だ。「政治とカネ」は政治不信に直結する問題であり、疑惑を徹底究明すべきだ。 洋上風力は、再生可能エネルギー拡大の「切り札」として政府が位置付ける。石油燃料が高騰し続ける中、輸入に頼らざるを得ない日本にとって洋上風力への期待は大きい。政治家と業者の癒着が疑われれば、国民は再生エネルギー自体に懐疑的な感情を抱きかねない。

 東京地検特捜部は8月4日に収賄容疑で東京・永田町の議員会館事務所を家宅捜索した。この1カ月あまりの捜査で立件できる材料がそろったとみたのだろう。

 秋本容疑者は家宅捜索直後に外務政務官を辞任したが、政府の要職に就いていた政治家が収賄容疑の捜査対象となったこと自体、政府は深刻に受け止めるべきだ。

 秋本容疑者は2012年に初当選した当時から脱原発を主張していた。17年8月に安倍内閣の国土交通政務官に就任し、同年秋には自民党内の再生可能エネルギー普及拡大議員連盟の事務局長となった。国会質問で洋上風力について質疑し、入札で事業者を選定する際の基準の見直しなどを訴えていた。

 東京地検は、日本風力開発が事業参入に有利になるよう秋本容疑者に国会で質問するよう依頼し、秋本容疑者はその見返りに謝礼を受領したとみている。本格的な聴取はこれからだが、秋本容疑者が、資金提供を受けた特定の企業が入札で有利になるよう配慮して国会質問していたとすれば、公平性や透明性が求められる政治家として失格である。直ちに辞職すべきだ。

 秋本容疑者に資金提供した日本風力開発側は贈賄容疑を認めているとされる。当初は資金は秋本容疑者と社長側が共同運営する馬主組合などに充てたものと主張し、賄賂性を否定していたという。

 今年になり、2019年参院選広島選挙区の買収事件で東京地検特捜部の検事による供述誘導の疑いが浮上した。あくまで証拠に基づいて資金提供の背後にある構図の究明に徹してほしい。

 再生エネルギーの開発促進は、脱炭素社会とエネルギーの自給率向上に向け避けては通れない重要課題だ。とりわけ洋上風力発電は周囲を海で囲まれている日本で本格的な普及が期待されている。

 政府は18年に施行した再エネ海域利用法に基づき、対象海域の指定や事業者の選定を進めているが、透明性の確保は急務だ。

 外務政務官を辞任はしたものの、秋本容疑者の任命責任は岸田文雄首相について回る。衆院解散を見据えた小手先の内閣改造で支持率の浮揚を狙うより、重要課題であるエネルギー政策への疑念を払拭することが先決だ。

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