【モロッコ地震】静かな夜一変、悲鳴こだま 北國新聞社記者ルポ

地震で建物が倒壊したマラケシュの旧市街地=9日午前10時(古府拓也撮影)

  ●初の海外取材で被災 世界遺産の街並み、粉々に

 【マラケシュ=古府(ふるこ)拓也】泣きじゃくる女性やはだしの男性。パトカー、救急車のサイレンが響き渡る。初の海外取材で遭遇した大地震で静かな夜は一変した。

 マラケシュには、白山手取川ジオパーク(白山市)に対し、国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界ジオ認定証が交付される国際会議を取材するため、「白山手取川訪問団」とともに訪れていた。

 マラケシュ中心部にあるホテル4階の部屋の壁がミシミシと音を立て、冷蔵庫や電子レンジが倒れんばかりに左右に動いた。日本のような耐震設計はされていないだろうから、倒壊するのではと気が気でなかった。

 部屋のドアを開けると、壁にはひび割れがいくつも入り、しっくいがぽろぽろと落ちていた。階段を駆け降りると、同じホテルに泊まっていた白山市の田村敏和市長を玄関前で見つけた。「驚いて目が覚めた。着の身着のまま部屋を飛び出した」と言う市長の顔はこわばっていた。しばらくして訪問団7人全員の無事が分かり、ほっとした。

 マグニチュード(M)は6.8。モロッコでM5以上の揺れは異例だという。池元勝市議会副議長は「モロッコは地震が少ないと、昼間、話していたばかりだったのに」と青ざめた。今年5月、珠洲市を襲った地震はM6.5だったから、規模的にはそれほど変わらないが、ここまで被害が大きくなったのは建物の構造上の違いだろうか。

 路上はホテルや飲食店から出てきた人であふれ、スマホの画面を見つめている。国際会議の真っ最中でアジア、欧米などの外国人も多くいた。

 一夜明けて、屋外のベンチや芝生広場で眠れぬ夜を過ごした人の表情には疲れの色がにじんでいた。世界遺産に登録されている旧市街に足を運んでみた。建物の外壁とみられるコンクリートの塊があちこちに転がっている。高さ5メートルほどの壁が崩落した現場では男性が立ち尽くしていた。

 旧市街地の宿泊施設にいたMine秋吉台ジオパーク推進協議会事務局(山口県美祢市)の小原北士さん(34)は、「揺れた直後、外から悲鳴がこだまのように聞こえた。外に出ると住宅の壁が粉々に崩れていた」と話した。

 白山手取川ジオに世界ジオ認定証が交付される国際会議は日本時間の10日、予定通り開かれる。

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