100年前の関東大震災で200人以上が犠牲になった「山津波(土石流)」の記憶を小田原市根府川の内田昭光さん(81)が語り継いでいる。よりどころにするのは、紙一重で命をつないだ父の体験だ。25年前に他界したが、震災時の状況を把握しようと、被災した集落を訪ね回り、貴重な記録を残した。その思いを受け継いだ内田さんは、しかし今、思う。「このままでは地元の人にも忘れ去られてしまう」。危機感を胸に小学校の教壇に立ち、次代への継承に心を砕く。
「ここからここまでの距離は4キロ。そこをわずか5分で流れ下った」。父・一正さんが残した被災集落の状況図を指さしながら、内田さんが説明した。「土石流はあっちにぶつかり、こっちにぶつかりながら流れてきた。だから、あちこちに相当大きな被害が出た」