防災フォーラム 適度なおびえ、身構えを 茨城県近現代史研 災害史と対策解説

「防災ツールはヒューマンウエアが大事」と話す伊藤哲司茨城大教授=水戸市緑町

茨城県近現代史研究会(市村真一会長)は9日、関東大震災100年に当たり、さまざまな観点から防災について考えるフォーラムを水戸市緑町の県歴史館で開いた。茨城大の伊藤哲司教授が「大災害のソフト面での防災対策とは」、井坂幸雄同研究会副会長が「茨城の大災害を振り返り、今後を考える」と題してそれぞれ講演。参加した市民ら約20人が、防災のポイントや県内の災害史について理解を深めた。

心理学が専門の伊藤教授は、2005年のスマトラ島沖地震で大津波に襲われたタイのプーケット島で、人々がどのように災害を受け止めているかを聞き取り調査した。生き残った被災者の精神的な側面を紹介した上で、伊藤教授は「ユーモアも交えた人間関係などの日常が保たれ、そのことが心のケアになっている」と強調した。

また、防災対策として、防災ゲーム「クロスロード」、災害時の行動計画「マイタイムライン」、避難のタイミングを決めておく「避難スイッチ」などのソフトツールの有用性を紹介。「ポイントとなるのは『ヒューマンウエア』。つまり人。私たち自身が適度な『おびえ』と『身構え』を普段から持つことが大事」と締めくくった。

関東、阪神・淡路、東日本大震災の三つの比較から説き起こした井坂副会長は、茨城県内の被害を記録してきた地元紙「いはらき」を参照しながら詳述。さらに、各地に残る自然災害伝承碑から読み取れる歴史について説明した。

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