竜星涼・藤井隆・高橋惠子ら出演 『ガラパコスパコス~進化してんのかしてないのか~』開幕 『進化』『老い』

作・演出は、劇団はえぎわの主宰であり、脚本家、演出家、俳優として活躍するノゾエ征爾。本作は、世田谷区内の高齢者施設を十数箇所廻って生み出されたノゾエ征爾の代表作。「老い」と「進化」という一見正反対のふたつのベクトルを重ね、その先に描かれる滑稽で愛おしい人たちの物語。そんなノゾエ征爾の傑作を2023年版としてブラッシュアップし、再構築して上演。

主演の派遣会社でピエロとして働く青年・太郎役には、昨年出演した連続テレビ小説『ちむどんどん』や主演ドラマ『スタンドUPスタート』で注目を集め、8月には出演映画『Gメン』の公開も控えるなど俳優としての躍進が光る竜星涼。太郎の兄・晴郎役には、バラエティはもちろん、ドラマ、舞台『広島ジャンゴ2022』、映画『マイスモールランド』など幅広く多彩な活躍を見せる藤井隆。特別養護老人ホームから抜け出した老女・まっちゃんこと徳盛まちこ役は、女優として半世紀以上のキャリアを重ね、第10回読売演劇大賞や第3回朝日舞台芸術賞など数々の受賞歴をもつ高橋惠子。共演には青柳翔、瀬戸さおり、芋生悠、駒木根隆介、山本圭祐、山口航太、中井千聖、柴田鷹雄、家納ジュンコ、山田真歩、菅原永二、そしてノゾエ征爾自身も出演と、バラエティに富んだ個性豊かな実力派キャストが集まった。
初日前に簡単な会見と公開稽古が行われた。

音楽、ピエロ(竜星涼)が登場、一生懸命にパフォーマンスするも、子供達(子役がでてくるわけではない)にウケが悪い。そんな時に1人の老女(高橋惠子)に出会う。何気なく、花を渡す、老女の表情が明るくなる。これが運命の出会い、どこまでもついてくる老女。困ったピエロ、特養老人ホームに帰そうとするも、どこか寂しげな表情。いたたまれなくなり、結局部屋に連れ帰ることになってしまった。

食事を作ったりetc.だが、彼の仕事はうまく行ってない、パフォーマンスは全くウケないし、1人ならまだしも、同居人がいると何かとお金がかかる。金銭的に困った状態になるのは明白、また、高校の時に同級生だった女の子(瀬戸さおり) は当時の担任(菅原永二)と結婚していた、しかも結構近いところに住んでいる。

その担任に「目を見て話せ」と注意されたのを思い出したり。また、ピエロの彼だけでなく、それ以外の登場人物、老女を探す娘(家納ジュンコ/中井千聖)、老女が入居していた特養老人ホームの職員(山本圭祐/山口航太)、ピエロの兄夫婦(藤井隆/山田真歩)、仕事先の女性社員(芋生悠)と妙に絡む仕事先の先輩社員(青柳翔)皆、順風満帆ではない。

また、謎めいた人物、外国人(駒木根隆介)、隣に住んでいるのだが、言葉が通じない、だが、話しかけられる。兄について回る男(ノゾエ征爾)、どうも兄の後輩らしいが、怪しさ満点。
最初はセリフなしで物語が進行する。音楽と音、ノンバーバルに近い表現の部分があり、それでもリアリティを感じる。舞台上にはほぼ何もないが、チョークで絵や文字を描いていく。諍い、すれ違い、ここに登場する誰もが疲れている、そして心を消耗している。そんなこんなが描かれる。そこから果たして彼らは『進化』するのか、しないのか。『進化』は考えようによっては主観的だ。子供が成長して大人になるのは、見てわかるものの、こういった状況で、時間が経つにつれて彼らは変化していく、これを『進化』と呼ぶのか。また、認知症、物を覚えられない、今までできていたことができなくなるといった認知機能の低下による症状ばかりでなく、怒りっぽく攻撃的になる、意味もなく徘徊はいかいするなどの症状(認知症の行動・心理症状(BPSD)とよばれます)もみられる。この老女も老人ホームを飛び出して徘徊した結果、ピエロの青年のところに居候することに。そして退行現象も見られ、青年の名前を聞いても忘れる、後半は喚き出す。そしてそれ以外の人々もあらぬ方向に進んでいく。

寓話のような物語、さまざまなことを連想させる。認知症は老いてくれば、避けられない問題、もちろん誰しもがそうなるわけではない。その老いを考える。そして多様な経験を積めば、『進化』するが、それには多少の時間もかかる。時間がかかれば、老いに向かっていく。多様な捉え方ができる作品、後半からラストの怒涛の展開とパフォーマンス、ラヴェルの「ボレロ」人の心に訴えかけるメロディ、2時間休憩なし。観客に何かを考えさせる作品。ちなみに主人公の職業のピエロ、道化師全般をクラウンと呼ぶが、ピエロは、そのクラウンの中の種類の一つで悲しみを表現する。

会見に登壇したのは竜星涼、藤井隆、高橋惠子、ノゾエ征爾。

ノゾエ征爾

明日からいよいよ開幕しますが、早くお客さんの前でご一緒したいなという気持ちでいっぱいです。もちろん怖さもありますが、 ワクワクの武者震のほうが先立っています。 作品としては4回目になるのですが、台本や演出の内容はそれほど変わっていません。ただ、その間10年以上の間、社会は 進んでいますし、何よりも生活者、そして俳優さんが進み続けている。セリフは変わらないのに、みなさんがとてもいい息遣い でお一人お一人がいてくれていてるので、進んでいるというのを感じています。

竜星涼

まずは世田谷パブリックシアターという素晴らしい劇場の主演を務めさせていただけるというのと、明日初日を迎えられるのが、 とても嬉しく思っています。太郎として皆さんにどのように影響を与えていけるのか、そしてノゾエさんの演出を受けた自分がどう 進化していくのか新しい自分自身を見つけられるのかこの作品を通して、自分自身も進化していけたらと思うので、多くの人 に楽しんでもらえたらと思います。

藤井隆

8月から稽古が始まったのですが、出演者の皆さんも穏やかで優しい方が多く楽しかったので劇場に入って多くの人に見ていただけるのが楽しみです。旅公演もございますので多くの人に見ていただけたらと思います。(舞台上に絵や文字をチョークで 描きながら進行していくのですが)竜星さんも高橋さんもとても上手で素敵です。稽古場でも舞台が八百屋飾りになっていて 角度がついているので、1か月以上足の裏がパンパンになった状態です(笑)その中で惠子さんが軽やかにまちこさんとして空 間の中でくつろいでいて、こういう風にお芝居したいなと思います。

高橋惠子

徳盛まちこ、八十歳。老人ホームから抜け出した老女を演じます。この作品に参加できたことをとても幸せに思っています。こ こまで女優としいう仕事を続けてきて、また新しい扉が開くのを感じています。ちょっと怖い気持ちもありますが、早くお客様の前で演じたいと思っています。今まで怖いと思ったことはほとんどないのですが。今回の役(認知症を患っている)に限っては、初めてのことが多く、表情をなくしたり、反応をしないなどを要求されている役でもあります。たくさんの皆さんに見ていただきたいと思っています。

あらすじ
青年が老婆を拾った。
社会にうまく馴染めず、派遣のピエロの仕事でギリギリ生活をしている青年(竜星涼)。しかしそんなピエロ業も、決してうまくはいっていない。ある日、道端の老婆(高橋惠子)に手品で花束を渡すと、老婆はどこまでもついてきた。そして、青年の部屋にまで上がってきた。
すぐに老婆を帰そうとするも…、青年と老婆の不思議な共同生活が始まっていく。
青年を心配する兄夫婦(藤井隆/山田真歩)、仕事先の女性社員(芋生悠)。妙に絡んでくる仕事先の先輩社員
(青柳翔)。兄の背後に常に付いて回っている兄の後輩(ノゾエ征爾)。
老婆は実は、特別養護老人ホームから抜け出したのだった。老婆を探し回る 家族(家納ジュンコ/中井千聖)と、
ホームの職員(山本圭祐/山口航太)。青年の近隣に暮らすかつての同級生(瀬戸さおり) と 担任(菅原永二)。
そして言葉の通じない外国人の隣人(駒木根隆介)。
人々はそれぞれに関わり、拒絶し、苦悶し、疲弊し、心身に疲労が積み重なっていく。我々は、少しでも先に進んでいるのだろうか?
進んでいくとしたら、どんな姿に化けていくのか?ただ一つ言えることは、化け者であることには違いない。
そうして青年と老婆との頑なな共同生活は、当然のように、限界へと近づき…。

概要
COCOON PRODUCTION 2023 『ガラパコスパコス~進化してんのかしてないのか~』
日程・会場:
東京
2023年9月10日(日)〜24日(日) 世田谷パブリックシアター
京都
2023年9月30日(土)・10月1日(日) 京都劇場
岡山
2023年10月11日(水)・12日(木) 岡山芸術創造劇場 ハレノワ 中劇場
新潟
2023年10月21日(土)・22日(日) りゅーとぴあ 新潟市民芸術文化会館・劇場

作・演出:ノゾエ征爾
出演:
竜星涼 藤井隆 青柳翔 瀬戸さおり 芋生悠
駒木根隆介 山本圭祐 山口航太 中井千聖 柴田鷹雄
ノゾエ征爾 家納ジュンコ 山田真歩 菅原永二 高橋惠子
企画・製作:Bunkamura
公式サイト:https://www.bunkamura.co.jp/cocoon/lineup/23_galapacospacos.html

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