【台風13号】土砂 住民襲う ドーン、崩れた山 茨城・日立の宮田川沿い 「何もできなかった」

道路に流れ込んだ泥を片付ける住民たち=9日午前10時36分ごろ、日立市白銀町

台風13号による大雨で茨城県日立市内は8日夜、土砂崩れや住宅浸水などの被害が相次いだ。市災害対策本部によると、市内を流れる九つの河川が氾濫し、16カ所で土砂崩れを確認。越水した宮田川沿いの県道日立山方線では、走行中の車両7台が崩れた土砂に挟まれて立ち往生する事態も起きた。9日は自衛隊などが復旧作業に当たった。

日立市と同県常陸太田市を東西に結ぶ同線は、日立市白銀町から宮田町にかけて土砂崩れが連続して発生。水が引いた9日朝は土砂が道路を埋め尽くした。

県道沿いにある工場の駐車場は高さ、幅ともに約10メートルにわたって土砂崩れが発生。雨が弱まるのを車内で待っていた男性(61)が巻き込まれ、倒木が車を直撃した。

男性は「当時は前が見えない大雨。すごい衝撃で横から一瞬でドーンと吹き飛ばされた。間一髪だった」と振り返った。一晩明けて現場を訪れ、「荷物を回収したいが、怖くて近づけない」と不安そうに語った。

8日午後7時過ぎには2カ所の土砂崩れの間に挟まれる形で、バス1台と車6台が身動きできなくなり、10人が救助を待った。日立市消防本部の救助隊は、日立側から向かう道路が通行できないため、常陸太田側から現場に急行。約3時間後の同10時過ぎに全員を無事救出した。

同じ県道沿いの運送会社でも同日夜、駐車場脇で土砂崩れが発生。大型10トン車5台が道路上に押し流された。仕事を終え事務所に戻る運転手が多い時間帯だっため、男性社員は「けが人がいなかったのが不幸中の幸い」と語った。

宮田川沿いの同市白銀町2丁目では数棟が床上浸水。8日午後6時前、川が緩やかにカーブする場所で泥水が土手を越え、住宅の並ぶ通りに流れ込んだ。

屋内にいた滝悦子さん(75)は「『ごー』という気持ち悪い音がした。40年以上住んでいるが、こうなったのは初めて。何もできなかった」と振り返った。

市災害対策本部によると、自衛隊は県道上の土砂の撤去について10日昼までの完了を目指し作業を進めている。

土砂崩れが起きた県道日立山方線で検索活動する日立市消防職員ら9日=午前10時20分ごろ、同市宮田町
東連津川が氾濫、泥流にのみ込まれた収穫直後の稲を見つめるコメの生産者=9日午後0時40分、日立市小木津町
住宅地に浸入した大沼川からあふれた濁流=8日午後6時41分ごろ、日立市東大沼町

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