スプリントでペドロサと接戦を展開。負傷バニャイア、ほしかった3位の結果/第12戦サンマリノGP

 MotoGP第12戦サンマリノGPスプリントレースの3位争いは、印象的なライダーふたりによるバトルとなった。前週カタルーニャGPのアクシデントにより右ひざに負傷を抱えるフランセスコ・バニャイア(ドゥカティ・レノボ・チーム)と、ワイルドカード参戦のKTMテストライダー、ダニ・ペドロサ(レッドブルKTMファクトリー・レーシング)である。

 バニャイアはカタルーニャGP決勝レース2コーナー立ち上がりでハイサイド転倒を喫し、他ライダーとの接触によって右ひざに大きな血腫を負っており、初日の走行後には激しい痛みを抱えていることを明かしていた。

「正直なところ、血腫の痛みがあって、足全体も足首から先も動かせない。午前中はきつかったよ。足をどこに置けばいいのかわからなかった」と語るほどだった。

 バニャイアは3番グリッドから13周で行われたスプリントレースに挑んだ。トップのホルヘ・マルティン(プリーマ・プラマック・レーシング)、2番手のマルコ・ベゼッチ(ムーニーVR46レーシング・チーム)の先行を許したものの、3番手をキープ。レース中盤にはペドロサに接近され、さらに5番手を走るブラッド・ビンダー(レッドブルKTMファクトリー・レーシング)までを含めた3番手争いとなった。

 だが、最終ラップのバニャイアは隙を見せなかった。ペドロサの猛追に耐え、3位でゴール。カタルーニャGPでの大きなアクシデントと負傷からわずか6日後、スプリントレースをトップ3で終えたのだった。周回数が短いスプリントレースとはいえ、痛みと後方からのプレッシャーに耐えて好結果をもぎとる姿は、昨年からしばしば見せていたメンタリティの成熟を思わせるものだった。

 レース後、バニャイアの囲み取材はドゥカティのホスピタリティで行われた。ホスピタリティにやってきたバニャイアに、その場にいたスタッフ、関係者、ゲストたちが大きな拍手を送る。バニャイアはそのなかをゆっくり歩いて、ジャーナリストが取り囲むデスクの前に座った。

「今はひどく(状態が)悪いよ。すごく疲れている。休みが必要だ」と、バニャイアは切り出した。13周のレースによる消耗は、予想以上だったようだ。

「今日、リヤに選んだソフトタイヤは、僕にとっていい解決策ではなかった。バイクはナーバスで、揺れも多かった。ペースを刻むのが大変だったよ。でもとにかく、この結果には満足しているんだ。6日前に僕たちがいたところを考えればね。この結果はすごくうれしいし、誇りに思っているんだ」

「明日(の決勝レース)に向けては、痛み止めを増やすことだ。走ることだけを考え、足のことを考えないためにね。というのも、今日、最初の2、3周は、ひざを傾けることに苦労した。体が温まっていなかったのかもしれない。少し時間が必要だった」

 最終ラップに激しい攻防となったペドロサとの3位争いについては、「彼はすごく攻めていて、その音が聞こえていたよ」と言う。だが、バニャイアはどうしても3位という結果がほしかった。

「僕の最終ラップの1コーナーのブレーキングは、もっともハードなものだった。バルセロナでのアクシデントがあって、そこからリスタートして表彰台を獲得するのはすごく大事だったんだ」

 3位でゴールしたバニャイアとペドロサとの差はわずか0.19秒だった。ワイルドカードとして今大会に参戦しているKTMテストライダーのペドロサは、バニャイアとの3位争いについて、こう振り返っている。

「マルティンやベゼッチのレース序盤のペースにはびっくりしたよ。数周後、ペースを上げてみて、ペコ(フランセスコ・バニャイア)との差をなんとか詰めることができたんだけど、そのペースをもってしても、『ドア』を見つけられなかった──つまり、彼を抜くところが見当たらなかったんだ。3位を獲得するためのね」

 そう語るペドロサは4位でゴールしたとはいえ、スペインGPで披露したセンセーショナルな走りを再び見せた。2018年シーズンを限りに引退したとは思えないほど、堂々たるレース運びと速さだった。本人は現役時代との差を感じているようで、バニャイアとの攻防では「たぶん、今の僕は集団で誰かを抜くことが、弱点のひとつなんだ」と認めていた。テストライダーは普段ひとりで走っていて、誰かと順位を争っているわけではないから、それも無理からぬことだろう。

 今大会のペドロサのマシンにはいくつかの新しいパーツが投入されていると見られ、そのなかのひとつがカーボン製とされるシャシーだが、これについては金曜日の走行後、質問を受けてこう回答するにとどめた。

「僕たちは違うシャシーを使っている。まだテストしていて、情報を集めているところだから、詳しくは言えない。でも、フィーリングは(これまでのものとは)違っていたよ」

 また、スプリントレースでも多くの情報を収集できたとも語っていた。センセーショナルな結果を残すペドロサだが、彼の主な仕事はマシンの改善に貢献することなのだ──4位を獲得するライダーがその仕事を担っていることに、いつも驚かされるのだが。スプリントレースでの4位は、KTM勢のなかでトップの結果である。

「いいスタートを切れたし、ペコの後ろでたくさん走って、彼のスタイルを学べたこともよかった。そして、彼のバイクの使い方、バイクの動かし方を学ぶこともできた。今日、彼の体調が万全ではなかったとしてもね。いずれにせよ、バイクはすごくよく機能している。たくさんの情報をゲットできた」

 決勝レースは27周で争われる。負傷を抱えるバニャイア、ワイルドカードながら変わらぬ速さで戦うペドロサは、どんなレースを見せるだろうか。

FP2の走行に出ていくペドロサ。まだニューシャシーについて多くを語ってはいない

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