米軍訓練に全国の自治体から困惑の声 事前の情報少なく 拡大する日米の基地相互使用

 日米合同委員会で、日米共同訓練を行うため施設使用を合意した件数が過去10年で大幅に増加している。訓練場所は全国各地に広がるが、事前情報の少なさもあり、地元自治体では困惑が広がる。軍拡を続ける中国を見据え、日米は同盟関係の強化のため今後も訓練を増やすとみられ、自治体からは「地元の要望を反映してほしい」との声が上がる。
不安
 「米軍から宿泊予約の問い合わせがあった。どう対応すればいいのか」。2020年9月、宮崎市内のホテルから宮崎県に連絡が入った。「寝耳に水だった」(県関係者)ため、防衛省九州防衛局に確認。翌10月から同県新富町の航空自衛隊新田原基地で行われる日米共同訓練に合わせ、米軍が宿泊先を探していたことが判明した。県は訓練自体、知らされていなかった。

 当時は新型コロナウイルス禍の影響で、米兵が街に繰り出すことを不安視する住民が多く、県に問い合わせが相次いだ。

 だが県には米軍と直接交渉できる窓口はない。防衛省を通じて基地内に泊まるよう再三求めたが実現しなかった。22年の訓練でも一部の米兵が基地外に宿泊した。
 
むちゃな要求
 混乱は各地でも表面化している。大分県の陸自日出生台や宮城県の陸自王城寺原両演習場などでは、地元の意向に反した夜間砲撃や訓練日数超過などがあった。

 新田原と福岡県の空自築城基地では、米軍が緊急時に使用できるよう弾薬庫や駐機場などを整備。築城では滑走路も延長する。だがどのような状況が「緊急時」に該当するのかなど、地元への明確な説明はないままだ。

 政府関係者は日米合同委員会や事前交渉では「米側からかなりむちゃな要求をされることもある」と打ち明ける。共同訓練に際し、住民説明会の開催義務はなく、地元の同意を得るかどうかは「ケース・バイ・ケース」(防衛省)という。

 政府は中国を念頭に置いた南西地域の防衛力強化のため米軍との関係をより深めている。防衛省幹部は「今後も共同訓練は増える」と言い切る。

 ある自治体の関係者は「不安に感じる住民は少なくない。早期の情報提供や安全対策など地元の要望が反映されるよう、国は米側に訴え続けてほしい」と話している。
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実効性ある対策が必要
 流通経済大の植村秀樹教授(安全保障論)の話 日米施設の相互使用は増えていると思っていたが、数字で裏付けられて納得した。さらに増える「第2段階」があるのかどうか注視しなければいけない。

 昨年末に決定した安全保障関連3文書に日米連携の深化が明記され、日本は防衛費を増やして新装備を導入する。その運用で共同訓練はさらに増え、日米一体化は前進するだろう。全国の自治体がさまざまな形で米軍を受け入れることになるが、地元の意向を聞き入れてもらうのは難しいのが実情だ。

 騒音や予定時間、期間を超えた訓練など各地で問題も起きている。日本政府は実効性ある対策を講じるべきだ。
(共同通信)

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